進の姉貴夫妻観察日記 2(抱きしめあえる夜だら 番外編)

 *

「今日はいい天気だね司君」

見つめ合って数分。

最初に口を開いたのは父だった。

天気のことなんて道明寺さんにもこの場の雰囲気にも必要ないだろう!

オヤジ黙れ!そんな気持ちを視線で送る。

困惑気味の顔で道明寺さんが「はあ・・・」と答える。

「おねえちゃん遅いね」

これしか言えない僕もオヤジとたいして差がある訳ではない。

ねえちゃん早く戻って来てくれぇーーーー。

なにを話していいか分からぬ時だけが過ぎて行く。

さっきから5分も時計の針は進んでいない。

「あっ、お茶、コーヒー!」

おもむろに立ちあがって台所に逃げ込む。

「いや~ここはビールだろう」

オヤジが焦って僕の後ろについてくる。

「飲まなきゃやってられないよ」

オヤジがぼそっと本音を漏らした。

「道明寺さんなに飲みます?」

「何にも要らない・・・」

「いや喉は乾いてませんから」

言いなおしたのは僕にではなくオヤジへの遠慮?

なんとなく姉貴の親に対しての敬意が道明寺さんに見え隠れするのがうれしい。

そしてまた会話が途切れて男3人固まった。

しびれを切らしたように道明寺さんが携帯を取り出す。

そうだよ、最初から姉貴に携帯をかければよかったんだ。

それに誰も気がつかないなんて相当緊張してた証拠。

バカだよな。

「どこにいる」

ドスの利いた低い声。

思わず背筋をピッとオヤジと二人で伸ばす。

この威圧感は半端じゃない。

よく姉貴はこれに対抗できるよな。

一歩も引かない態度でにらみ合ってる時あるもんなぁ。

姉貴と道明寺さんの会話は続く。

聞き耳立てて張りついて緊迫色に空気が変わる。

「帰ってきた」

「だからッ、今お前の実家に居るんだ」

聞こえてくるのは道明寺さんの低い声。

携帯の向こうで姉貴は白眼向いてるんじゃないだろうか。

「切れた・・」

ブスっと言った道明寺さんがクスッと小さくその後笑った。

姉貴の声で少しは機嫌が直ったのか?

でもそんな感じ。

緊迫感が緩んで和んだやさしい目になっている。

「俺あいつが戻ってくるの待ってます」

椅子から立ち上がる道明寺さん。

お屋敷に帰って待つつもりなのかな?

姉貴はここに帰ってくると思われる。

どこに行くつもりだ?

たどり着いたのはリビングから丸見えの玄関。

壁にもたれかかりじっと玄関のドアを見つめてる。

次は5歩でリビングに行きつく廊下をウロウロ。

この状態・・・

姉貴が帰り着くまで続くのだろうか・・・

「そんなにすぐには帰れないと思うけど・・・」

かけようとした言葉を飲み込んだ。

姉貴を待つ兄貴。

待ちどうしそうにドアを通り越して外を見ている。

待ちわびて、姉貴の事ばかり考えてそれがやけに楽しそうに表情が変わる。

次はしびれ切らして怒の表情。

感情がすべて露わになって手にとるようだ。

姉貴のことだと感情を隠すことができなくなるのは昔から変わんない。

これがやりてで恐れられている道明寺の総帥なんて思えない。

その人をこんなにする姉貴はタダものじゃない。

すげ~よ。

バンと玄関のドアが開いて姉貴が転がる様に帰ってきた。

「遅かったな」

道明寺さんがぶっきらぼうに言ったその前に 満面の笑み浮かべたところ僕は見逃さなかった。

「これでも急いで帰って来たんだからッ」

「そんなに慌てなくてもよかったのに」

道明寺さんの行動と矛盾する言葉にゲラゲラ笑ってそれを隠すことなんて出来なくなっていた。

姉貴に言ったら道明寺さんどんな態度を僕に見せるのだろうか。

そしてまた僕は笑う。

進君観察日記第二弾いかがだったしょうか?

少しづつ核心部分お話は近づいていきます。

核心部分て・・・

どこ? キャハッ♪