第9話 杞憂なんかじゃないはずだ (完)

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 10

* -From 1- 「・・・ったく、油断も隙もねッ」 「・・・ごめん・・・」 「俺がついて行かなかったらどうなっていたか考えてみろ」 「・・・ゴメン・・・」 「お前・・・俺に心配かけさせる天才だよな」 消え入りそうになっていた私を道明寺が抱きよせた。 「…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 9

* -From 1- 「すごいよね」 「大学に行っても未だにF4の人気は健在なんだ」 牧野が驚いた表情を俺に見せる。 「4人いると目立ちすぎだろう」 だから俺一人で満足しとけと心の中でつぶやいた。 「なあ?このまま二人きりになれる所にいかないか?」 牧野の…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 8

* -From 1- デートして・・・ デートして・・・ デートした。 極上の時間。 手をつないで・・・ 腕を組んで・・・ 肩を抱いて・・・ 並んで歩いた代わり映えのない街並み。 交差点の赤信号で何気なくキスしようとしたらぶんなぐられた。 相変わらずの反応。 …

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 7

* -From 1- 無事に家庭教師先の家を出る。 今度は一人っ子の兄弟なしを確認してホッとした。 家庭教師先の玄関まで迎えに来ると言いだした道明寺を保護者同伴みたいなことは止めてくれと泣く勢いで頼んで止めさせた。 ただでさえ目立つ風貌なのにそれが普通…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 6

* -From 1- 俺に背中を向けたままの牧野をそのまま抱きしめる。 「早く抱きてぇ」 回りくどい言い方は俺には似合わない。 単刀直入に今の思いを言葉にする。 「ちょっ・・・ちょっ、ストップ」 相変わらずの色気のねぇ返事が返ってきた。 「待たねぇ」 「で…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 5

* -From 1- 「なあ、もうまいった。牧野は俺に惚れぬいてる」 西門さん、美作さん相手に崩しっぱなしの表情で道明寺が独りで盛り上がっていた。 二人はうんざりした雰囲気で相槌を打つのも億劫になっている様だ。 道明寺の態度に全身の血流が勢いよく逆流し…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 4

* -From 1- 「えっ・・・それは・・・その・・・」 しどろもどろに耳まで赤く染めて口をもごもごさせる牧野に負の気分が増大されていく。 「俺はお前と別れるつもりはねえからな!」 「どけっ!」 さっきから俺の膝の上に乗ったまま動こうともしない牧野を怒…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 3

* -From 1- 拍子抜けするほどあっさり素直に道明寺が帰っていった。 満足するほど私を抱きしめて・・・ どのくらいの時間そうしていたのか解からなくなるくらいの長い時間抱きしめられていた。 いつもの乱暴な態度なんて微塵も感じなく・・・ ただただやさし…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 2

* -From 1- 午後7時ちょっと前、家庭教師先の玄関のベルを押す。 訪れた家はモダンな洋風の作りの2階建て。 一般家庭の匂いがホッと私を和ませる。 うちよりは断然いい暮らししていると言うのは説明するまでもないことなのだが・・・ 確かこの家の旦那さん、…

第9話 杞憂なんかじゃないはずだ 1

* -From 1- 「なにしてる?」 午後の大学の図書室。 講義が休校になって空白になった時間を私は勉学にいそしんでいた。 似合わない場所に現れた人物に私は思わず驚きをかくせない。 「西門さんこそどうしたの?珍しいじゃん図書室に現れるなんて」 「俺?俺…