第3話 木漏れ日の下で(完)

木漏れ日の下で 36

* 抜けるような青空。 照り注ぐ太陽の下で無邪気に明るく響く笑い声。 見てるのが俺だけじゃない状況。 未だに続く。 ロサンゼルス発・お勧めショッピング ツアー。 姉貴たちが日ごろ行かない様なアウトレットめぐり。 「これ、安い!」 「60%OFFだって」 …

木漏れ日の下で 35

* 「殺す気?」 「誰を?」 「いきなりでかい図体でかぶさってこられたらまともに歩けるわけないでしょう!」 ロスに来て何度目かの日本語での攻防。 日本語の理解できないジムだけがきょとんと見つめる。 他のやつらからは遠慮なく上がる笑い声。 「大人げ…

木漏れ日の下で 34

* 目で追う後ろ姿。 モデル並みのスタイルに挟まれ、頭一つ小さくなる真ん中。 人目を引くのは両脇の美人だけの影響じゃない。 クルックルと表情を変える横顔。 黒髪の下の明るい笑顔はこの青空の下に映える。 「つくし可愛くなったな」 ジョンがうれしそう…

木漏れ日の下で 33

* 新しく誰かの来訪を告げるベル。 「来たっ」 最初に声を発したのはジム。 つーことは来たのはジョンか。 何もここに勢ぞろいしなくてもいいんじゃないか? 外で増えてもややこしさは一緒かとため息が出る。 つくしのそばに集まる男3人。 もう一人集えば日…

木漏れ日の下で 32

* 日本にいたときは公平。 日本を飛び出してアメリカまで来て、ここではジムにジョン。 増えてるじゃねぇか! お前に色目を使う奴。 自分がモテてるのを未だに気が付かない鈍感さ。 これだから気が休まらねぇンだよ。 まあ・・・ 俺がホレ込んだ女だからしょ…

木漏れ日の下で 31

* 二人の早口の会話について行けずに茫然と道明寺の表情を観察中。 今のところ手を出しそうな気配はないと安心する。 私の横で椿お姉さまだけが楽しそうにほほ笑む。 「二人で何言い合ってるんですか?」 「司はしっかりつくしちゃんは自分の妻だと説明した…

木漏れ日の下で 30

* -From 1 - 「Good morning」 明るくさわやかな笑顔。 今にもつくしに抱きつきそうなジムの勢いに片手を伸ばしてつくしを背中に隠す。 「初々しくていいわね」 つくしより姉貴の方が楽しそうなのは気のせいか。 「司、怖い顔しないの」 軽く肘で突かれた。 …

木漏れ日の下で 29

* -From 1 - まぶしい光が閉じた瞼の上からも感じる。 わずかにさえずる鳥の声。 もう朝か・・・。 頭は起きているのに・・・ 身体が・・・ 細胞が・・・まだ夢の中から抜け出せずにいる。 けだるい感覚の中にこのままず~と身を置いときたい願望。 明るさを…

☆木漏れ日の下で 28+α

* 目の前で楽しそうに笑う顔。 その奥に優しく潤みを帯びる瞳。 「服を逃がせろ」 命令された瞬間からこいつのわがままを許容している自分がいる。 私のこと妹のまんまにして訂正しなかったことの怒っていはずなのに・・・ それさえも忘れてしまいそう。 屈…

木漏れ日の下で 28

* 「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」 エコーの聞いた声は思ったよりも大きく私の耳に届く。 恥ずかしくなった顔を隠す様に湯船の中へ鼻先まで顔を浸けて、自分以外いるはずのない個室でキョロキョロと視線を動かした。 ミルク色のお湯がホッカリと身体…

木漏れ日の下で 27

* 背中合わせの距離。 それは思った以上に遠い。 視覚が・・・ 聴覚が・・・ 触覚が・・・ 嗅覚、味覚までもが混ざり合って、すべての五感が背中に集中している様だ。 わずかな動きにもビクッっと心が揺らぐ。 ゆらっと身体をつくしが起こした。 気にならな…

木漏れ日の下で 26

* ロスについてからまだゆっくり話してもいない。 俺を抱きしめてたのは姉貴だし。 ロスではたっぷり72時間の時間があるはずだったんじゃないのか? 西田! 愚痴りたい相手は私のせいじゃないとでも言いたげな澄ました顔で俺の後ろに控えてる。 姉貴に連れま…

木漏れ日の下で 25

* -From 1 - 再会から数時間後。 数時間で集まる招待客。 短時間で準備したパーティーじゃない雰囲気。 いろんな人種が紛れてる。 さすがはアメリカ。 お姉さんに着せ替え人形の気分で飾られた。 「もう司のせいで限られる」 恥ずかしくなるお姉さんの愚痴。…

木漏れ日の下で 24

* -From 1 - 夕方過ぎにロスの屋敷に到着。 ここに来るのも1年ぶり。 ゆっくり時間の出来たときにつくしと二人で過ごそうと思っていた場所。 西海岸の明るい日差しとさわやかな風はきっとあいつも気にいるはずだと思っていた。 噴き抜けのエントランス。 部…

木漏れ日の下で 23

* -From 1 - 午前5時。 目の前に置かれた仕事の山は7合目付近。 サインを記入し終わった書類を右にポンと置いて目の前の新しい書類を開く。 3日分の仕事の量を1日、いや、半日でこなせってどこまで煽られてるんだか。 そそのかす ! たきつける ! けしかけ…

木漏れ日の下で 22

* -From 1 - NYからLAX。 到着したのは夕刻過ぎ。 気温の差は10度。 コートなんて必要ない。 って・・・どうするんだ? 私の格好は真冬のまんま。 着るものから困りそうだ。 それよりも気になるのは道明寺のこと。 きっと怒ってるよね。 「気にしないで…

木漏れ日の下で 21

* -From 1 - そろそろ夕暮れ時。 執務室の中もライトが照らし出す。 デスクの上にはまだ終わりそうもねぇ書類の山。 昨日残業しなかった分が置いてあるわけじゃねぇよな。 ドアの向こう側にいるであろう西田の姿を想像して睨みつけた。 つくしが待ってんだけ…

木漏れ日の下で 20

* -From 1 - 「つくしちゃん、まだ?」 突然開けられた試着室。 鍵をかけるの忘れたみたいだ。 試着した服を脱ごうと動作を起こした瞬間の出来事。 脱ぎかけた服は腰の所で止まってる。 条件反射みたいに胸を両手で隠して背中を向けて座り込むしか逃げ場を見…

木漏れ日の下で 19

* -From 1 - 道明寺をにこやかに見送った。 それはホンの建前。 「俺が帰って来るまでおとなしくしてろ」 私を指さして強調する怖い顔。 「仕事頑張ってね」 返事をせずに背中を押して身体を前に押す。 無理な態勢で首を回して分かってるだろうなみたいに再…

木漏れ日の下で 18

* -From 1 - 「本気じゃないよね?」 俺が映る瞳が潤んで見つめる。 すげ~いじめたくなる衝動。 「俺と一日一緒って久しぶりだぞ」 唇を耳たぶに押し当てて息を吹きかける様に声を出す。 耳まで赤くなるのはお湯で暖ったまっただけじゃないはずだ。 「仕事…

木漏れ日の下で 17

* -From 1 - 寝た様な・・・ 寝なかったような・・・ そんな気分で目が覚めた。 寝返るたびに肌に感じる道明寺の温もりを確かめてた気がする。 今もわずかに前髪にかかる寝息を感じながら安心してしまってる。 私を抱きしめたまんまの腕の重さが心地よく身体…

☆木漏れ日の下で 16 +α

『木漏れ日の下で 16』のside story 的お話です。 司クンにご褒美を♪的なお話でしょうか。 最近なぜか要望の多い気が・・・(^_^;) * ベットにうつぶせのままのつくしの髪の毛をなでる。 荒い呼吸音を示す様に上下する肩。 一度目の情事の後、場所がソファー…

木漏れ日の下で 16

* -From 1 - つくしの前にひざまずき肩を数度揺さぶった。 がくがくと上下に揺れる頭。 がくっと前に倒れた頭がゆっくりと正面を向く。 ゆっくりと開く瞼。 瞳の奥に映るのは俺の不安げな顔。 「起きたか?」 「んッ」 「あっ・・私・・寝ちゃってた?」 俺…

木漏れ日の下で 15

* -From 1 - 「なにしてるの?」 「なにって、玉ねぎ切れって言ったのはお前だろう?」 「皮を剥かないの?」 「皮って・・・玉ねぎなんて全部皮みたいのものじゃねぇのか?」 「玉ねぎの生態は知ってるんだ?」 「俺をアホみたいな言うな」 「茶色の皮は食…

木漏れ日の下で 14

* -From 1 - 洗練されたスマートさで椅子を引いた道明寺が私を座らせる。 向いあって座るテーブル。 グラスに注がれるウォーター。 軽いランチには不釣り合いなレストラン。 社員食堂とはえらい違いだよなと頭に浮かぶ。 「高校の頃、道明寺に会うためにNYに…

木漏れ日の下で 13

* -From 1 - 目を覚ませば一人寝には広すぎるベットで膝を抱えて丸まっていた。 ここどこ? 寝ぼけたまんま部屋の中を見渡す。 なんだかホテルの一室みたいに生活感がない部屋にポツンと一人。 NYの道明寺の屋敷のはずで・・・。 置いて行かれたのか? 「道…

木漏れ日の下で 12

* -From 1 - 仕事を終えて迎えの車に乗り込む。 車の窓から見える魔天楼の明かりがゆっくりと揺れて動く様に俺を見送っている。 車の中は心地よい温度を保っているが、吐く息が白く車の窓を曇らせた。 雪でも降りそうな冷たさ。 あいつに見送られて飛び立っ…

木漏れ日の下で 11

* -From 1 - 「もう、帰んなきゃいけねぇ」 お前に会うだけに帰ってきたと照れくさそうに笑う。 「あと少しの辛抱だし」 背中から抱きしめた腕は離れ難そうに私を抱きしめる。 「連絡くれないとダメだからね」 胸の前に組まれた手のひらを自分の指先で強く包…

木漏れ日の下で 10+α

* -From 1 - 「遊びすぎじゃねぇのか」 携帯の向こうから聞こえてくるあきらの声にふてくされ気味に怒りを込めて吐きかける。 「司、お前が面倒見れッて言ったんだよな」 悪びれる様子など全くない反応。 相変わらず遊んで俺の反応を楽しんでいる。 今回はあ…

木漏れ日の下で 10

* -From 1 - 何の迷いもなく力強く私を抱きしめる。 「・・・見られてるんだけど・・・」 「ヒャッ」 抱きしめる腕がズンと強くなる。 「ヤダ!!」 「暴れんな」 「ヤナものはヤダ!」 「ギャーーーーッ」 肩に乗せられるように抱きかかえられる。 「ホント…