木漏れ日の下で 13
*-From 1 -
目を覚ませば一人寝には広すぎるベットで膝を抱えて丸まっていた。
ここどこ?
寝ぼけたまんま部屋の中を見渡す。
なんだかホテルの一室みたいに生活感がない部屋にポツンと一人。
NYの道明寺の屋敷のはずで・・・。
置いて行かれたのか?
「道明寺?」
呼びかける声になんの反応も返ってこなかった。
ベットの中にはわずかに残る道明寺の温もりと残り香だけが今朝まで一緒にいたと教えてくれている。
昨日までの記憶をたどる様に思い起こす。
確か・・・
夕刻にNYに着いて、迎えの車に乗り込んでこの屋敷に直行。
西田さんに連絡入れたら「坊ちゃんには内緒でお願いします。ばれたら仕事を放り投げかねません」と返された。
西田さんの分析は確かだとそんな気がして喉の奥から笑いがこみ上げる。
道明寺の帰って来るのをじっと待ってた。
心の中は全然じっとしてなんていられなくて、1分が1時間にも感じられる時間の長さ。
久しぶりの再会を想像して踊る心。
興奮気味だ。
時差の寝ぼけも吹っ飛んでしまってた。
道明寺が私を見たらどんな表情するのだろう?
「お帰り」って玄関まで迎えに行ってほほ笑む。
びっくりして、そのあと顔がほころんで私をしっかり抱きしめてくれるはずだ。
他には何もいらないくらいに抱きしめ合えそうだよね。
道明寺の足音が響くドアの前。
わざと部屋の明かりを消してドアの側の壁に背中を向けて張り付いて息を止めた。
明かりのスイッチを探す道明寺に背伸びをして腕を伸ばして目隠し。
「だれ~だ」
我ながら単純な子供じみた行動。
これしか浮かばないって、さっきまでの再開のシュミレーションはどうなった?
「なんでお前が居るんだ!」
目隠ししていた指をギュッと握られ離される。
私の目の前には振り返った愛しい顔が信じられないって感じに眼を見開いている。
「司法修習終わって屋敷に帰ったら、西田さんがNYに行ける手配してくれてたみたいでね」
「ご褒美だって」
少し眉をしかめた顔が満面の笑みへと変わって優しく細まる瞳。
「やっと会えたね」
「やっとなッ」
息ができないくらいに強く抱きしめられた。
そのあと・・・
一緒にシャワー浴びてベットに入って・・・
会えずに過ごした日々を語り合っていた。
勉強が、仕事がはかどったとかいい合って、結局は会えなくてさびしかったという思いに二人で行きついて、おでこくっつけて笑い合っていた。
って・・・
そこから、なんだ?
記憶がない!
もしかして・・・
安心しすぎて・・・
気が抜けて・・・
私は寝た?
ベットから半身を起して「ハァー」とため息ついて頭を抱え込んだ。
道明寺ごめん!
きっと時差のせいだ!
これで許してくれるかな。
ベットから起き出してテーブルに置かれた白い紙に目が止まる。
『良く寝てたから起こさずに行く。
昼は一緒に食べよう。
オフィスに来い』
良く寝てたからってフレーズに嫌味を感じる。
オフィスに来いって字も怒っている様に見えてしまう。
感動の再会を最悪の再会に変えてしまった。
このまんまこの部屋に引きこもりたい気分になった。
*-From 2 -
着替えを済ませ出かける準備をして部屋を出る。
・・・と、何も言わないのに道明寺のオフィスまですぐに行ける用意周到さ。
いつから道明寺はこんなに手際よく物事を進められる様になったのだろう。
強引に推し進めるのは昔から変わりないけど。
拒否できない様なスマートな居心地の良さ、心地よさを演出している。
出かけに渡されるバラの花束。
『楽しみに待っている』のカード付き。
この花束を抱えたまんま会社にいくのか?
うれしさよりもこそばゆさの方がさきに立つ。
どんな顔してこの花束を準備したのだろう。
私が先に寝ちゃったこと怒ってないみたいだと口元もほほ笑む。
お昼に少し早い時間にオフィス前に車は到着。
日本の本社ビルに引けを取らない高層ビル。
NYが第二の支点となってるのもうなずける威圧感を感じた。
玄関前には西田さん。
運転手から私の到着は連絡済みらしい。
第一秘書自らの出迎えでビル内の視線を集めてる。
微妙に緊張してしまった。
「お疲れではないですか?」
西田さんの言葉がリアルに響く。
今朝の道明寺の出勤時間を遅らせたのは西田さんらしいし・・・。
にんまりした余裕の表情の道明寺。
「仲よくしろって西田の配慮だ」って道明寺に抱きしめられてた。
うっ・・・・。
考え過ぎだよね?
西田さんが言ってるのは、修習後すぐに休む間もなくジェットでNYまで来たということに対する心遣いだと思いたい。
疲れることなんてやってません!
言ったら西田さんの表情が変わるかな?
言えるはずないけどね。
ビル最上階で1番奥まったところのドアを西田さんが開ける。
「いったい何やってる!こんな事やってたら足元すくわれかねない!」
聞こえてきたのは道明寺の怒鳴り声。
その前には数人の社員?
自分がどなられてるわけでもないのに思わず首をすぼめてた。
やっぱ迫力あります。
それに動じてない約1名がコホンと咳払い。
しーんと静まりかえった水面に小石を一つ入れた様にそこに視線が集まる。
「おっ、来たか」
うって変わった優しい響き。
「冷淡な傲慢な態度もすぐに変わります」
「つくし様の効果は絶大ですよ」
なんて西田さんの言葉に送られて部屋の中へと歩みを進めた。
「検討し直します」
今のうちとっでもいう様に罵声を浴びせられていた社員が部屋を出ていく。
ちらっと西田さんが腕時計を確認して「2時間は時間をとってあります」と告げて出て行った。
「忙しそがしそうだね」
「お前の顔を見たらいらつきが収まった」
「神経休まらねっ」
そう言いながら道明寺の腕が伸びてきて私を抱きしめる。
「人が来たら困る」
「心配すんな、ここは日本じゃねぇNYだ」
「ハグなんて挨拶だろう」
「まだ外国式には慣れてないよッ」
道明寺の胸元を引き離そうと両手に力を入れてもちっとビクともしない厚い胸板。
それ以上に熱く高鳴る鼓動。
「もう少し、待ってろ」
「残りの仕事を片付けるから」
笑った口元がゆっくり私の唇と重なった。
残りの仕事って、これじゃないよね?
思いながらも自然と道明寺のキスに反応してしまってた。
さぁこれからって時に・・・。
司~ごめんよ♪
でも書いてない風呂場でいちゃこらを想像してもらえれば(^_^;)
えっ?
「それじゃ蛇の生転がし」って言ってるのはだれですか?
この後はゆっくり食事でも♪
食べるのはつくしチャンじゃないよ~
「2時間じゃたらねーよ」とボヤキ気味の司が見える(^_^;)
拍手コメント返礼
しずか様
こちらこそ今年もよろしくお願いします。
温かい目でつかつくを見守ってくださいませ♪
蛇の・・・まんまじゃかわいそうですよね新春そう(^_^;)
今年の運気にもつながりそうです。
annie様
時折つくしだけに見せる司の弱音。
書けるようなストーリーをまた考えますね。
好きなんですよね。こんな司も♪