2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

下弦の月が浮かぶ夜21

* 相変わらずだ。 牧野が絡むことになるとどうしてこうも皆行動が早いのか。 「噂って俺?それとも牧野?」 目の前に立つ類は完全に俺に敵対心を見せて隠そうともしない。 類の敵対心が俺に対する嫉妬心だと牧野は気が付いているのだろうか? きっと・・・ …

幸せの1歩手前 6

* 「なんで・・・」 「なんで、ここにいるのよーーーッ」 驚愕気味に上がる声。 「いたら困ることでもあるのか」 皮肉交じりの視線は甲斐さんを睨んだままだ。 困るのは私よりも道明寺の方だと思う。 こんなところに来たら騒ぎになる。 ただでさえ道明寺本社…

HAPPY LIFE 27

* 「こら!まて!」 いつもは静かなはずの邸宅で響く元気な声。 わりと乱暴気味に聞こえてくる。 それは奥に足を進めるたびに大きくなる。 声でけーよ。 なにやってんだ? 目の前で繰り広げられる珍事。 思わず「ククッ」と笑いが漏れた。 生まれたまんまの…

幸せの1歩手前 5

* 暗めに落とされたオレンジの光に包まれた数坪の小さなお店。 カウンター席に数人がけのテーブル。 十数人はいれば満員になりそうだ。 静かに流れるジャズの音楽に心地よく耳を傾けた。 雰囲気としては静かに落ち着ける感じのお店。 迷いもなく玲子さんは中…

white day side story 6

* 3月14日 言わずと知れたwhite day。 道明寺に強引に連れてこられた道明寺邸。 付いてくる私も素直だよな。 道明寺の落ち着きのなさと高めのテンション。 何を期待してるか分かり過ぎだ。 white dayの意味分かってる? 確かめたくなった。 「牧野」 部屋に…

下弦の月が浮かぶ夜20

* 花沢類に連れられてやってきた美作さんの会社。 漆黒調のデスクの真中に美作さんの性格そのままに几帳面に整理された書類は角がピタッと合わさったまま置かれてる。 そこで今仕事をしていたのだと主張しているみたいにポンと1本のペンが平行に書類の上に置…

HAPPY LIFE 26

* 「つー」 「つー」 私を指さす小さな手。 つ? つ?ってなんだ? 「ママ、パパ、まんま」確実に言葉は増えている。 「ター」はタマ先輩。 「つー」って・・・ もしかして「つくし」と言いたいのか? 自分で自分を指さして「つ?」と発して駿の顔を見つめる…

秘書西田の坊ちゃん観察日記 22(幸せの1歩手前 )

この物語は 幸せの1歩手前2 のside storyとなります。

幸せの1歩手前 4

* 「先に行っといて下さい」 甲斐さんの声に送られて事務所を後にする。 仕事の書類作成が終わらないと残業を余儀なくされた甲斐さん。 「甲斐君には悪いけど、女同士の方が安心よね」 玲子さんは意味深な笑顔を浮かべる。 「代表が不機嫌になる要素が一つ消…

下弦の月が浮かぶ夜19

* 雲一つない吸い込まれそうな青い空。 上を見上げながら吐きだした息が白く見える。 そのまま落ち込みそうな心も一緒に天上まで持って行ってくれたらいいのにと本気で願った。 「まーきの」 間延びした様な感じで私の名前を呼ぶのは一人しかいない。 その響…

幸せの1歩手前 3

* 「メールが来たよ」 携帯から聞こえるキティちゃんの声。 この設定は西田さん。 柄じゃねぇーーーといいつつ道明寺にはうけている。 道明寺がキティちゃんを知ってる方が意外だったけど。 ちなみに道明寺からの着信は相変わらずスターウォーズのテーマだ。…

下弦の月が浮かぶ夜18

* 不機嫌がそのまま服を着て歩いてる。 そんな司を見たのは久しぶりだ。 「おい」と軽く片手を上げた俺をじろっと一瞥。 そのまま通り過ぎた。 あの状況の司を呼び止めるほどの心臓は運よく持ち合わせてはいないことに感謝。 どうせ牧野がらみのことだろうと…

幸せの1歩手前 2

* 「ご一緒ではなかったのですね」 そう言いながらスケジュールのファイルを表情も変えずに俺の前に差し出す剛腕秘書。 「一緒は嫌なんだと」 「それは困ったことだ」 ため息交じりの言葉の中に苦笑が浮かぶ西田。 西田が困ることあるのか? 俺とつくしが一…

下弦の月が浮かぶ夜17

* 「ねぇ、見た?」 「見た」 「やっぱかっこいいわ」 「どっちがいい?」 「どっちも~」 ざわつきは階を昇るごとに大きくなる。 そのざわつきを遮断するように静まり返る最上階。 ドアを開けた先から流れ出る冷ややかな空気。 「何考えてる」 空気も凍りそ…

幸せの1歩手前 1

* 心地よい風がそよぐ4月。 まっさらの新鮮な気持ちで地上に降り立つ。 コツコツと響くパンプスの音。 軽快なリズムは気分を軽くする。 頭上はるか上にそびえ立つ東京都内の道明寺グループ自社ビルの前。 「ヨシ」と一つ自分に気合を送った。 行きかう人々…

下弦の月が浮かぶ夜16

* 人肌が気持ちいい。 もう少しこのままで・・・ 朝なんて来なくていいのに・・・ ンッ? ここどこだ? どう考えても私と素肌を寄せ合って抱きしめる相手は一人しかいない。 ヤバーーーーーッ。 あのまま寝てしまったんだ。 また無断外泊だ。 最近は両親の方…

木漏れ日の下で 36

* 抜けるような青空。 照り注ぐ太陽の下で無邪気に明るく響く笑い声。 見てるのが俺だけじゃない状況。 未だに続く。 ロサンゼルス発・お勧めショッピング ツアー。 姉貴たちが日ごろ行かない様なアウトレットめぐり。 「これ、安い!」 「60%OFFだって」 …

感謝!

立ち直りました。あリがとうございますの意味をこめての更新の後も次々といただく応援メッセージと安心しましたのコメント。 なんと私は幸せ者なんでしょう。 『メールしようと思いましたがどう励ましの言葉を書いていいのか分からずにメールできませんでし…

HAPPY LIFE 25

* 抜ける様な青空にふんわりと霞むような春の雲が一つ浮かぶ。 ゆるやかに流れる風に吹かれて舞い落ちるひとひらの淡いピンクの花びら。 それを受け止める様にそっと手のひらを伸ばした。 「それ食うのか?」 手の中をのぞき込む様に首を伸ばした横顔は今に…

愚痴です

たくさんのコメントありがとうございます。 たくさんのコメントが朝から届いてます。 被災者の方からも頂いて、私の方がこんなに励ましてもらってすまない気持ちでいっぱいです。 こんなに励ましてもらって感謝の言葉もありません。 こんな時にこんなことで…

お見舞い申し上げます

東北地方太平洋沖地震 皆さん大丈夫でしょうか? 時間を追うごとに被害が大きくなる報道に胸が痛むばかり。 ご心配のメールを国内外の方からも頂き感謝申し上げます。 今回の地震は海外ではどのように伝わってるのでしょう? 現段階では死者行方不明者は15…

white day side story 5

* こんなにうれしかったことはない。 毎月憂鬱でしかないお客さんだったのに。 なにやら腹部の違和感と下着の湿った感触でトイレにと走った。 確認して思わず飛び出す「ヨシ!」の掛け声にガッツポーズ。 やった後で慌てて周りに誰もいないことを確かめた。 …

下弦の月が浮かぶ夜15

* 「帰らないで・・・」 腕をからめて身体を寄せて頬に柔らかい唇が触れる。 じらして楽しむ手管。 最近忘れてた。 つーか・・・ ここ数日そんな手管を使う相手を相手にしてなかった。 牧野つくしに東條葵。 めずらしく俺のタイプでない女が側にいる。 引き…

秘書西田の坊ちゃん観察日記 21(white day side story)

このお話はSt. Day 分岐したお話「white day side story」のお話になります。

white day (司 20years) 5

* 抱きしめた腕の中で牧野は俺の胸元に頬を寄せる。 胸に直接に触れたバレンタイン。 柔らかい膨らみを感じた指先。 今でも鮮明に思い出す。 あの後・・・ 西田から携帯が鳴ったんだよな。 今日は携帯の電源は切った。 部屋に誰も来るな! 入れるな! と言い…

white day side story 4

* 窓辺にもたれて物思いにふける様にボーッと空を見上げる横顔。 愁いに沈む様に上向きからうつむく様に頭を下げてため息が一つ漏れる。 確かに悩むよな。 俺・・・ 気が付くの遅せー。 「妊娠してたら牧野を取り巻く環境一気に変わるだろうね」 「大学は休…

white day (司 20years) 4

* 「今日・・・空いてるよな?」 俺にしては弱気な発言。 3月14日ホワイトデー当日。 大学で講義を終えた牧野を待ち伏せ。 「・・うん・・・まあ・・・」 大きく見開いた瞳が見つめてすぐにうつむくように視線を逸らした。 「プレゼントは考えてるから・・・…

HAPPY LIFE 24

* 水面にきらきらと反射する日差し。 春の気配は少しずつ周りを淡い色に包み出している。 温かな陽気に誘われる様に駿をベビーカーに乗せて家を出た。 さすがに長身のダークスーツについてこられては目立つ。 近所の公園まで散歩だからと大丈夫だと断りを入…

下弦の月が浮かぶ夜14

* 「得したよね」 「昨日のランチ一生忘れられないわぁ」 「側で見られただけでも幸せだったのにーーーッ」 昨日のランチから会社に戻って一晩経っても続くテンションの高さ。 「アホらしい」と葵だけがその中から浮いている。 「君たち、会社の子だよね」 …

木漏れ日の下で 35

* 「殺す気?」 「誰を?」 「いきなりでかい図体でかぶさってこられたらまともに歩けるわけないでしょう!」 ロスに来て何度目かの日本語での攻防。 日本語の理解できないジムだけがきょとんと見つめる。 他のやつらからは遠慮なく上がる笑い声。 「大人げ…