white day (司 20years) 4
*「今日・・・空いてるよな?」
俺にしては弱気な発言。
3月14日ホワイトデー当日。
大学で講義を終えた牧野を待ち伏せ。
「・・うん・・・まあ・・・」
大きく見開いた瞳が見つめてすぐにうつむくように視線を逸らした。
「プレゼントは考えてるから・・・」
「無茶はしないから、心配するなよな」
付け加えて熱くなったのは俺の方。
体中に火が点火したよう。
このまま歩き出したら、手と足を一緒に出して歩いてしまいそうだ。
まだ・・・
そこまで緊張することはないはずなのに。
照れを隠す様に強引に牧野の右手を握って歩きだす。
よろける様な最初の歩き方が俺の横で歩幅を合わせるように早足にかわった。
牧野の手のひらも結構熱い。
「どこに行くの?」
乗り込んだ車の中でようやくまともに牧野の声を聞いた気がした。
「・・・俺の部屋」
いかにもって感じじゃねーか、その答え。
俺の願望、切望を全部塗りこめてる感じに響く。
その前に・・・
まだ重要なこと確かめてない。
恐くて聞けねぇーーーーーッ。
生理でオドオドするのは女だけかと思ってたけどな。
「・・・」
隣でゴクンと緊張する様に牧野の喉が鳴った。
「・・・あのね・・・」
「・・・生理・・・まだ始まってないんだ」
「でもね今日・・・始まるかもしれないし・・・」
「始まらないかもしれないし・・・微妙なとこで・・・」
言いにくそうにとぎれとぎれに聞こえる声。
だからどっちなんだ!
「してる最中に中止とかの場合あるのか?」
「してっ!最中って・・・」
俺を凝視して固まったまんま牧野が火を噴いた。
「そんなこと私にも分かんないわよ!」
とにかくやれるとこまでってダメか?
最後の詰めで拒否受けたら止められんのかな?
だから早めに会っとけば問題なかったんだ。
俺をさけてたの牧野だけどな。
これなら「生理」って嘘でも言われた方が妄想膨らまねえよな。
こいつの馬鹿正直も時には罪だ。
なるようにしかならねぇ!
運は天任せ。
神頼み。
当たって砕けろ!
行き当たりばったり!
他にないか?
んな事考えてる間に俺んちへと着いた。
いつもよりぎこちない。
はじめてって訳でもない二人っきりの時間。
「なあ、これ」
「まだ贈ってなかったからな」
空気を変えるように無造作にポケットから取り出した小さな箱。
牧野の目の前に差し出す。
「ホワイトデーのお返しだ」
「開けていい?」
ちっこい赤いハート型の台座に赤く輝くルビー。
その周りちりばめられたダイヤの粒。
俺が牧野に贈るにしては安すぎるプレゼント。
いつかの街のガラスケースの中で見つけた指輪。
高価な宝石が並ぶ中で「かわいい」って見惚れてたやつ。
買ってやるって言ったのに高いからいいってすげなく断られた。
「高いって、誰に言ってんだ!」
少し言い合いになった思い出。
覚えてたんだぞ、その指輪。
箱の中の指輪を見つめながら「いいの?」とつぶやく牧野。
「俺が指輪を贈るのはお前しかいない」
「まあ、正式に婚約したらもっと俺様らしい婚約指輪を贈るけどな」
箱の中の指輪を指で挟んで牧野の薬指にはめる。
「よく指のサイズ分かったね」
うれしそうにほほ笑み上気した牧野の表情。
久しぶりに見た気がした。
「大体の触った感触」
見つめながら自然に俺からも笑みが漏れる。
「男たちは太古の昔から、女性の体内では心臓から左手の薬指にかけて、一本の導管(血管)がまっすぐに走っていると信じていた」
「『命を持って永遠の愛を誓う』という意味から、薬指に大切な指輪を付けられるようになったんだって、知ってた?」
「知らねえよ」
総二郎にあきらならそのくらいのウンチクいって女を口説くかもしれないけどな。
「命を持って永遠の愛を誓うというのは正解だな」
俺としてはここまでパーフェクトじゃねえか?
うまくいきすぎてるってことが逆に不安を注ぐ。
どれだけ今までのことがトラウマになっているのか。
今度は大丈夫だ・・・
言い聞かせるように牧野を抱きしめた。
ここまでは珍しくOH!の状態ですが・・・
この後は・・・
司ががんばっているのにな~
さて、ドSクラブの皆さまの反応はいかに!