2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

watcher 12

* 「ただいま」 待ちかねたようにつくしに飛びつく身長120cmを真ん中に左右に並ぶ90cm弱のチビたち。 俺には「お帰りなさい」の言葉だけ。 「いい子にしてた」 「ウン」と頷いて駿の顔はつくしの腹部にべったりと張り付いてる。 ここで「こら」なんて駿に対…

LOVE AND PEACE 3

* 西門邸の日本庭園の一角に建つ茶室。 畳に埋め込まれた炉に乗せてる釜からは白い蒸気がゆるゆると上がる。 茶器の中で茶筅が動いて茶をたてる。 茶はその規則的な手の動きの中できめ細かな泡を生み翡翠色に輝く。 師匠によって点てられたお茶はスーと品の…

watcher 11

* 一気に波に足をさらわれてしまった。 そんな感覚。 そのまま砂場に尻もちついて思いっきり塩水を飲まされた感じだ。 予想だにしなかった道明寺司の登場。 怒る気にもならない。 速水会長の孫娘に、結婚してた!子供も3人!とばれて部屋の片隅につくしは引…

watcher 10

* コツコツと響く靴音は心拍音の高まりに比例するように大きくなる。 目の前で1度止まった靴音は規則正しい間隔を保って、私の前を通り過ぎて氷室会長の前で止まった。 「お世話をかけます」 氷室会長が最初に口を開く。 「無事に片付きましたから」 表情を…

watcher 9

* 親族の集まり、それは和やかに始まった様に見えた。 親族以外に顧問弁護士と見知らぬ弁護士1名。 氷室会長が自ら依頼した年齢より若く見える弁護士。 『道明寺つくし』はここでは歓迎されてないことが分かる見くびった目つきを俺の知らない顔が浮かべる。 …

LOVE AND PEACE 2

* 「あーーーーーッ」 声を上げた時には遅かった。 「ガン!バタッ!」 二つに折れた状態で携帯は床に転がって息が止まった。 「静かになったな」 目の前の顔は何にもなかったようにじっと一点を見つめている。 「静かにって・・・誰からの電話だったの?」 …

下弦の月が浮かぶ夜42

* 食事に出たまま会社に戻ることが出来ずにいる。 強引なのは昔から変わらない。 俺としては珍しいマダムじゃない人種。 歳の差は一回りとはいかないまでも結構離れている。 「年の事は言わないでね」 なんてベッドの中で言われていた2年前。 あの時の俺は二…

LOVE AND PEACE 1

最近つかつくの単純なお騒がせの日々を書いてない。 それはやっぱり大学時代になる様な気がします。 またお騒がせな二人の話を書きたくて思いつきました。 LOVE AND PEACE けしてお笑いコンビからつけた題名ではありません。 指を5本開いてパーの状態から小…

watcher 8

* 某日某所連れていかれた日本庭園のある静かな佇まい。 都内でこれだけの土地を所有してれば相続争いも起るはずだ。 死んでしまった長男に実は娘が一人。 突然現れた二十そこそこの娘は一番の相続者。 あとは依頼人の弟に姉。 本来ならこの二人の家族に行く…

下弦の月が浮かぶ夜41

* ヤバイとこみられたか? 大げさすぎる驚いた表情が目の前で怒ったように変わって背中を向けてドアを閉めた。 あっ・・・。 上げそうになる声を喉の奥で押し留めた。 今からなにを言い訳しても聞いてくれそうもなさそうだ。 それにいい訳しなきゃいけないこ…

Fools Rush In 7

* 「双子なんだって?」 「玲子さん、情報が早いですね」 「所長から聞いたのよ」 事務所の中の窓際のテーブルでおでこをつき合わせて始まった会話。 コーヒーを持った甲斐さんまでしっかりと玲子さんの横の席を確保してる。 「一気に二人っていいわよね」 …

下弦の月が浮かぶ夜40

* 「葵、久しぶり、元気だった?」 廊下で数日ぶりに会った元部署の同僚。 以前と変わらず・・・。 いや・・・。 以前より親しいと言うか気さくな反応・・・。 どうした? 社長との関係をどう誤魔化すか考えがつかなくて逃げていた状況。 「元気だった・・・…

watcher 7

* 「怪しい人は、いた?」 いたって・・・ 普通はお前の方がその情報を把握してないとおかしいだろう。 ガクッと力が抜けるような感覚。 「しぼってないのか?」 「だって全員が怪しいんだもん」 「ほら、ドラマなんかだと一番らしくない人が犯人だったりす…

双子の名前

投票数1000を超えました。 たくさんの投票ありがとうございます。 これって投票の多い投票所でのランキングでも7位になってました。 双子の性別は圧倒的に男女が多いです。 男女の双子ちゃんでお話は進めようと思っています。 名前は迷いますね。 『新・緑・…

下弦の月が浮かぶ夜39

* 「今日の会議は11時から・・・」 柔かい声が耳元を通り過ぎる。 聞き慣れた声。 小さく漏れて聞こえた短い単語だけでも最近はこいつの声だとすぐわかる。 目の前で聞いてます?とでも言う様に眉をひそめた。 「ずいぶん慣れたみたいだな」 「ここでは興味…

秘書西田の坊ちゃん観察日記 24(Fools Rush In  )

この物語は Fools Rush In 5 のside storyとなります。

☆下弦の月が浮かぶ夜38 おまけの話

* 「・・・で、どうなったの?」 あいつらと別れた夕刻過ぎ、久しぶりに会った牧野は俺よりも別なことに夢中。 それがあきらのことだどいうことにムカつく。 「まだ、どうもなってないみたいだけどな」 「でも一緒に住んでるんだよね?」 「美作さんと葵さん…

Fools Rush In 6

今回のお話はFools Rush In 5でいただいた、ち**様のコメント 『F3が聞いたら大爆笑ですねぇ~』 バラしたい。 と言う事で私もばらしたくなっちゃいました。 そんな訳で久々のF4&つくし勢ぞろいのお話です。 あっ・・・駿君につくしのお腹の中には双…

watcher 6

* 「地検に来たのって初めてだわ。緊張するね」 俺に言わせれば道明寺本社ビルのドでかさの方が上だと思う。 お昼前俺の勤め先に姿を現したつくし。 その胸には、『公正と平等・公平さ』を示す天秤と、『正義と自由』を示す向日葵をあしらった弁護士バッチが…

Fools Rush In 5

* 「う~っ」 唸る? 呻る? 俺が帰ってきても気がつかなくてウナル背中。 今度は腕組んだ。 そしてハーアーと大きく息を吐く。 次はそっとお腹に手を当てて撫でた。 後ろからでもつくしの動きが予想できる俺。 じーっと、観察中。 嫌なことでもあったか? …

watcher 5

* 公平と別れて家路につく。 何となく・・・ ただ何となく・・・ 司に対して気が引ける想い。 司以外に頼み事をするのは何年振りだろう。 仕事の話って案外二人では話さないから大丈夫だろうけど、ばれたらやばい! それは分かる。 そう思った時点から普段と…

下弦の月が浮かぶ夜38

* 「・・・で、どうなっているの?」 「どうって?」 珍しく夜の時間に集まった4人。 誰から言いだしたのか分からないまま高校時代みたいにつるむのは久しぶりだ。 今日は牧野もいないっていうのも珍しい。 顔を合わせた途端こいつらの聞きたいことは俺と葵…

watcher 4

* 嵐の去った後の静けさ。 いや・・・ ただいま台風の目の中の静まりというところか。 一通り会話をした後で派手な彼女は俺とつくしを残して姿を消した。 「どこで知りあったんだ?」 今のつくしと彼女との接点を見いだせないでいる俺。 道明寺の本社ビルで…

Fools Rush In 4

* 「わぁ!走るな!飛ぶな!持つな!」 目の前に必死の形相が迫る。 そう言われても困るものは困る。 駿を追いかけて階段1段飛び越すのも、抱っこするのもしょうがない。 今1番手のかかる2歳児なんだからッ。 止めるなら私より駿の方だぞ。 まだ今のとこ…

下弦の月が浮かぶ夜37

* 「綺麗な人・・・」 俺の横で見惚れて感心する様に葵がつぶやいた。 「新しい秘書だから頼む」 「人事からは何の連絡もございませんでしたが?」 「俺が連れてきた」 「珍しいことをなさいますね。雪でも降るのかしら?」 モデルと言っても過言でない長身…

下弦の月が浮かぶ夜36

* 「おい聞いたか?」 「聞いた」 「社長が女子社員を押し倒していたってやつだろう?」 「違うだろう、俺が聞いたのは女子社員が社長を押し倒していたって話だったぞ」 朝から駆け巡った噂はあっという間に社内全部を支配した。 仕事どころじゃないと浮足立…

幸せの1歩手前 23

* まだ・・・二人でいるところを見られなかっただけましか・・・。 グダーッと手を伸ばしたままデスクの上に顔を押しつけた。 はぁー 吐いた息が生温かく頬に反射する。 一緒に来なければお呼びかかかる。 一緒に来れば気が抜けない。 どっちがましなんだろ…

watcher 3

* その機会は思ったより早めにやってきた。 テーブルに肘をついて雑誌をめくっているつくしを見つけたのは偶然の再会から3日目の午後。 都内ホテル1階の喫茶店。 「失礼」 少し気取った言い回しでつくしの正面の席に座る。 「あっ・・・誰かと思った」 「邪…

幸せの1歩手前 22

* 朝から・・・ やっぱり目立つ二人での出社。 道明寺はゆっくりでいいはずなのにッ。 「お前と一緒に屋敷を出ると西田が喜ぶ」 言った顔はその場で満面にほころぶ。 西田さんより絶対道明寺の方がうれしそうな表情を作ってる。 その顔を見ると私もつられて…

甲斐君のつぶやき 7 (抱きしめあえる夜だから)

* あれから・・・ 三日待たされた。 急用が出来たと終業間際に事務所を飛び出して行った松岡公平。 懐のさびしかった俺はホッとしたのもあったがそれよりも松岡の話の方が気になる。 それにきっとたぶん俺におごらせる様な事は玲子さんがするはずないと知っ…