幸せの1歩手前 22

*

朝から・・・

やっぱり目立つ二人での出社。

道明寺はゆっくりでいいはずなのにッ。

「お前と一緒に屋敷を出ると西田が喜ぶ」

言った顔はその場で満面にほころぶ。

西田さんより絶対道明寺の方がうれしそうな表情を作ってる。

その顔を見ると私もつられて怒った顔が出来なくなる。

ここで甘いとこ見せたらダメだと緩みそうになる口元を必死でこらえた。

車から一歩足を踏み下ろした瞬間にきりっとした表情に変わる。

この辺の切り替えは最近うまくなった。

颯爽と歩きだす後ろ姿の軽やかさは機嫌のよさの表れ。

「今日は穏やかだ」

安心した響きの声の主は振り返って私に軽く会釈を返した。

いかにもありがとうございますって添付された会釈。

知らない人にまで私は道明寺の柔軟剤と思われてるのだろうか?

もしかして・・・

道明寺の機嫌が悪かったら恨まれるのは私か!?

このまま逃げよう。

別な進路で事務所に行こう。

脳が勝手に指示を出して身体が自然と動くのを止めた。

「何してる?」

数メートル前で私がついてないことに気が付いた道明寺が振り返る。

その声に周りからも私に注がれる視線。

「なっ・・・何もしてないかなぁ。ハハハ・・・ハァ」

作り笑いからため息へと変わる声。

舌打ちした道明寺が見えた。

戻ってきた道明寺に掴まれる腕。

「えっ!あっ!」

拒むこともできずそのまま連れだって歩く体勢ができ上がる。

おとなしく並んで歩いた方が目立たなかった。

周りからこぼれる温かみのある笑み。

救いはあるが恥ずかしさに身体の熱は上昇気味だ。

そのままエレベーターに乗り込んだ。

二人を乗せたまま閉まるエレベーター。

「あの・・・他の人は?」

何となく場が持たない狭い空間に尻ごみする。

「気を利かせてるんだろう」

「途中で止まらねぇかなこのエレベーター」

「10階で止まってもらわないと困る」

呆れた様な顔がニンマリとなって私を見下ろした。

「5分、いや10分とかエレベーター止めても誰も何にも心配しないと思うけどな」

「5分、10分じゃ何もできないでしょう」

無理に力を入れた声はうわずって墓穴を掘った気がした。

「今日も待ってろよ」

「待たない、先に寝てるから」

壁に顔を押しつけて保守の体勢で身構えた。

止まったエレベーターが10階の数字を示す。

助かった・・・。

目の前に伸びた指先はエレベーターの『閉』のボタンを押さえてる。

私を降ろさない気か?

ここで10分も止まったら絶対ばれるよーーーーッ。

確かに誰も何も言わないだろうけど・・・。

やだーーーーー。

驚愕のまま固まった。

「機嫌良く送り出せ」

私を振り向かせるように動く腕。

目の前に迫る優しげな瞳。

呟いた口元が私の唇に触れた。

「・・・んッ」

それに応じる様に開く唇。

離れた唇を親指で拭く仕草を見せる道明寺を視線の先でとらえた。

それがやけに色っぽい。

「ばれたら嫌だろうからな」

もう片方の指先は『閉』から『開』へボタンの位置を変えた。

「ほら降りろ」

道明寺の声に促される様に飛び降りる勢いでエレベーターから廊下に居場所を移す。

「意地悪しないでよね」

「してねえだろう」

満足そうな頬笑みを浮かべた道明寺を乗せてエレベーターは上昇し始める。

点滅する数字を見つめながらドッと身体の緊張が抜けた様に壁にもたれかかった。

つッ・・・疲れる・・・。

「つくしちゃん、顔・・・赤いけど?」

「えっ?」

隣のエレベーターから降りてきた玲子さんが私の額に手のひらを当てる。

「少し熱あるんじゃない?」

心配そうに覗き込む瞳。

「えっ?あっ。大丈夫です」

本当に熱が出そうな気分になった。

21で抜けた部分は・・・どこに?

まあ・・・そのうちに・・・

でもまたそんな流れが出来てくるでしょうしねぇ~

この話はつくしの妊娠発覚まであと少し♪

期待はほどほどでお願いします。

・・・・・と言いつつ発想に動いてる私です。

拍手コメント返礼

すぎすぎ様

バイトお疲れ様です。

情緒不安定で司に甘えるつくし♪

みたいかも~