最上階の恋人 33

ようやく、やっと、いよいよ連載再開します。

もう一つの平安絵巻風のパラレルもなかなか進んでませんが、2月中までには二つのお話を終わらせたい。

本来なら去年で終わってるはずだったですけどね(;^ω^)

お待たせして申し訳ありませんがもうしばらくお待ちいただければと思います。

司君の誕生日には子供たちが買ったプレゼントのお話の続きをUPします。

コツコツと規則的に響く革靴の足音。

コケッと中途半端な足音が響く。

それは牧野のもの。

今にもよろけそうな牧野を引っ張って歩く俺。

斜め後ろでグッと握りしめた手のひらが熱い。

牧野の熱が手のひらから腕を伝って俺を包み込む。

お世辞にも、調和した音とは言いにくいが音が残るはずのない床にスタンプされてるようだ。

このアンバランスな音がクスッとした感情を俺に植え付けてくる。

朝からあたふたした表情が俺を見つめてほんのりと頬を赤くする。

恥じらいに染まる牧野はこれ以上にないほどに愛しくて俺をドキリとさせる。

牧野の寝顔を見ながら抱きしめて眠りについて迎えた朝。

それはけだるさを感じながらもすっきりとした目覚めを俺に与えてくれた。

本当はもっとこのままベットの中でずっと牧野を抱きしめたまま過ごしたかった。

あっ・・・

抱きしめただけじゃ済まねぇか・・・

やましい感情を今の自分では抑え込めそうもない。

「あのさ・・・」

「んっ」

足は止めないまま後ろから聞こえてきたおどっとした牧野の声。

「仕事・・・あるんだよね?」

振り向いた俺は無言のまま牧野を見下ろす。

「私・・・いてもいいのかな?・・・

邪魔ならこのまま帰ってもいいかなって・・・」

牧野とつないいた腕をぐいと引き寄せたのは、こいつと離れたくない反動。

くるりと半身を翻すように牧野は俺の胸元に落ち込む。

ゆらりと揺れてバランスをとるように動く片腕を抑え込むように肩から背中に俺は腕をまわしこんだ。

「んっ」

俺の目の前でうっすらと開いたくちびるがつぶやく。

なまめかしくつややかな淡い色合いの牧野の唇。

普段は気の強い性格をそのまま表す言葉しか言わねぇし。

俺に媚びる様な言葉はそこからは全く聞かれない。

単発につぶやいた牧野の一言にベッドの中で牧野が漏らした甘い吐息と重なって俺を煽る。

「俺は、最上階の俺の部屋にお前を呼んだんだよな?」

「そうだったかな?」

とぼけえる表情を牧野が作る。

「なかなか来ないお前に俺はイラついてたんだけど」

重なったままの互いの胸元で牧野の心臓の鼓動が早くなってくるのを感じる。

「私は早く行きたかったんだけどね・・・」

「総二郎とお茶してたんだったよな?」

「あれは・・・不可抗力。

道明寺との約束の時間までまだ間があったし・・・」

「俺はお前が早く来ても全く問題なかったがな」

必死に言いわけをする牧野の息は荒く、俺の腕の中から離れようともがく。

「一晩、一緒に過ごしたくらいじゃ収まらないから」

密着度を増すように腰に巻き付けた腕で牧野を引き寄せ耳元に寄せた唇がささやく。

牧野の身体がビクンとなって一気に硬直を見せる。

「たいして時間はかからねぇから」

数歩牧野を押し出すように歩いて目の前の扉を開く。

開けた部屋の奥は俺の仕事場。

道明寺代表執務室。

最上階から見下ろす地上はガラス張りの窓から壮大に広がりを見せ、中央にタワーが姿を現す。

その中にようやく身体の筋肉を緩和し始めた牧野をぐいと押し込んだ。