最上階の恋人 22
この後の展開・・・
すでに想像されてる常連さんもいらっしゃる。
ギクッ!
ドキッ!
ヤバッ!
それでもお楽しみただけるように頑張るぞ~
「どこに連れていく気っ!」
すでにまっすぐに前を見据えてる道明寺に私の声は届いてない。
精悍に何かを覚悟して前を見据えてる表情には程度遠く・・・
時折口角を上げてニンマリと零れ落ちる笑み。
これ以上にいい考えはないって感じの悦に入ってる表情。
なに考えてるのよっ!
私を連れまわす前にどこに連れていくのか説明が欲しい。
非常階段の扉の先に広がる階段。
とんとんと響く靴音は上に上るにしても軽やかに響く。
上りついたところに広がる屋上ヘリポート。
白く円が描かれたその中にはいつでも飛び立てる準備の整ったヘリ。
ここまでくれば説明を受けなくても察知できる。
「乗れ」
「どこに行くの?」
ここでようやく道明寺に私の声が届く。
「逃げるに決まってんだろ。
お前との時間を誰にも邪魔されねぇ場所」
最初からそのつもりだったと思える道明寺の満足そうな笑み。
「ヘリで飛び立てば、西田も観念して俺のスケジュールを調整するしかねぇからな」
フフッと笑い声を漏らす道明寺のしてやったりの表情。
西田さんならすでにそこまで読んでる気がするのは私だけかな?
西門さんや美作さんも花沢類も道明寺が考えそうなこと気が付いてないとは思えない。
目には目を!
ヘリにはヘリを!
追跡することなんて朝飯前じゃないんだろうか。
「心配するな。
あいつらもそこまで野暮じゃねぇから」
すべて納得はできないままにヘリに乗り込む選択しか私には残されてない。
道明寺と一緒に乗るヘリ。
すぐにプロペラの回る音が響く。
ふわっと浮かんだヘリの機体。
屋上が真下に見える。
あぁ・・・
飛んじゃった。
あきらめのため息とどこに連れていかれるのかの不安が入れ混じる感情。
座席に背中をもたれるそのままゆっくりと視線を下から前に戻し・・・
どきっ!
心臓が胸の押し上げるように動く。
ちかっ!
私の頭の後ろにまわしこまれて道明寺の腕。
斜め上10センチのところに黒く長い睫毛でふちどられた黒色の瞳が私を覗き込む。
私の顔がその瞳の中にしっかりと映りこんでいるのがわかる。
「どうみょう・・・じ・・・?」
遠慮がちに途切れる声。
「んっ?」
隣に座るだけでも肩が触れそうな近距離。
それ以上に身体を寄せてきてる道明寺。
スーツの上からでも均整の取れた肉付きだとわかる。
自分がどう姿勢を保つべきなのか考えられないままに緊張したままの腕を伸ばし膝の上に手のひらを置く。
「牧野・・・」
手のひらの上にそっと道明寺が手のひらを重ねるように置いた。
ぎゅっと手を握られるよりも熱く道明寺の熱がそこから私の全身に広がる。
ここまで道明寺と密着するのは初めてじゃない。
抱きしめられるのも・・・
キスだってしてないわけじゃないし・・・
それでもなんとなく・・・
いつもとは違うい緊張感が私を襲う。
ヘリに初めて乗ったからかも・・・
「顔が、真っ赤だぞ?」
「え?」
道明寺の声に思わず上げた顔。
私に語りかけた唇がすでに目の前で・・・
というより、道明寺の息が私の唇に触れるほどの近さ。
「べつに何でもない。
いきなり走らされたせいだから」
ぐいと道明寺の胸元を腕で押しながら顔を背ける。
ぐいと目を閉じたのはこれ以上道明寺を見て動揺しないため。
「あのな、これでやっとデートできるのに、避けんじゃねぇよ。
俺から逃げようなんて思うなよな。
逃がさねぇけど」
ヘリの上じゃこれ以上逃げ場はない。
言われなくてもそのくらいわかる。
「そろそろつくぞ」
そろそろ?
そういわれても周りに見えるのは青く広がる海。
きらきらと太陽の光が反射を見せる小さな波。
ここどこよ。
360度見渡しても緯度も経緯もわかんない。
「見えてきたぞ」
遠くを指さす道明寺の指の先を追った。
船・・・?
白く輝く船体。
近づいて気が付いたそのデカさ。
高級ホテルに匹敵。
船に街があるって聞く豪華客船。
世界一周船の中だけでも満喫できるって話は私でも聞いたことがある。
「新しくクルーズ船の事業に参戦することになったから、この船で過ごすのも仕事の一環だから気にしなくていいぞ」
「もしかして・・・
この船・・・
道明寺のなの?」
「ああ」
こともなげにつぶやく道明寺に超庶民の私は動揺はマックスに近い。
道明寺のお金持ち度には慣れてたつもりなのに慣れてなかったみたいだ。
「お前の好きなことになんでも付き合うぞ」
楽しそうに無邪気に笑みを見せる道明寺。
素直に楽しめるかどうかわかんないよ。
その答えが見つからないままに私たちを乗せたヘリはヘリポートにヘリが舞い降りた。