最上階の恋人 21
戯れも気になりますが、ことらも気になるところ。
こちらも更新しないと書くことを忘れそうで~
今回は久々に現代版をUPいたします。
目の前にはイラっとした表情の道明寺。
その道明寺からわずかに視線を向けたエレベーターの扉側。
カベ側の私たちとは微妙な距離を置いた相葉さんの背中が巨大な盾を作ってる。
きっと扉が開いてもこのエレベーターに乗ろうと待っていた人は、あきらめて次回のエレベーターの到着まで、待つことになるのだろう。
「どうして、お前が不機嫌なんだ?
この状況で怒っていいのは俺だけじゃないのか?」
逃げ場をなくすように顔の両側に突かれた腕。
それは雪崩をせき止めるような丸太となって私の動きを止める。
そんなことしなくったて限られた大きさのエレベーターの中。
狭い空間の中にこれまた狭い空間の中に閉じ込められて感じる息苦しさ。
「ただへさえ、威圧的なんだから上から見下ろさないでくれる」
顔を上に向けて腹に必死で力を入れた声を出す。
「可愛くねぇぞ」
不機嫌にゆがめていた唇がフッと口角を上げておかしそうに笑みを浮かべた。
道明寺の言葉とは裏腹に可愛いいやつとでも言ってるような優しい笑みを見せる。
そのわずかな違いに気が付いてムッとしていた感情がほころびそうだ。
必死に伸ばした指先はエレベーターのボタンを探した。
早く最上階に到着してほしい。
近すぎる道明寺との距離。
道明寺の吐息を感じる距離。
心臓がバクバクと口から飛び出してきそうな勢いで私の胸を押し上げてくる。
「お前・・・なんで1階押してんだよ」
私の腕と交差するように伸ばした道明寺の腕がなんなく最上階の数字を押しなおす。
数秒の遅れで一度は閉じた扉が開く。
「えっ・・・」
道明寺と私の声が重なって唇からこぼれた。
女性を魅了する微笑みを浮かべる美作さん
私にだけ見せる花沢類の人なっこい笑み。
花沢類・・・に、美作さん・・・。
西門さん一人だったのに増えてる。
3人を見つけた道明寺の指先がせわしく何度も最上階を示す数字を押してる。
「なんで、あいつらがいるんだ・・・」
焦った表情を見せる道明寺はどうやら3人会いたくなさそう。
3人が乗り込む間もなかったというよりは、道明寺の気持ちを察知した相葉さんがエレベーターから降りて3人を身を挺してノロこませないように頑張ってる。
その間に扉のしまったエレベーターは私たちだけを乗せて上昇を始めた。
「みんな、後からやってくるよね?」
逃げてもその場限りって気がする。
「俺と、お前の二人の時間をこれ以上邪魔させるわけにはいかない」
「それはそうだけど・・・」
なかなか四人がそろって、そして私と会うのってしぶりだよ。
個々には大学で会うことも間々あるから久しぶりってわけじゃないんだけど・・・
F4勢ぞろいで会えるのは道明寺と会うのとはまた違う楽しさがある。
久々に話もしたいかも・・・
その言葉を言いかけた私は道明寺に鋭い視線を向けられてその言葉をごくりと飲み込んだ。
これ以上道明寺をイラつかせて自分に降りかかる火の粉を増やしたくはない。
でも・・・
私ひとりより3人がいてくれた方が道明寺の怒りのパーセンテージは4等分できるかも。
「来い」
私が考え込んでる間にエレベーターは到着したらしい。
手首がいたくなるくらいの力で私の腕を道明寺の指先が掴んで引っ張られる。
イタイッ。
この強さじゃ道明寺の指の跡が手首に残りそうだ。
私の発した痛みの声は道明寺に届いてないようで道明寺の力が緩む気配は感じられない。
え?・・・
道明寺?
執務室・・・通り過ぎてない?
道明寺の部屋ってここじゃないの?
Office of the President・・・
Secretary Section ・・・
chairperson・・・
もっ!
ビジネス英語ってわからないんだから!
日本語で表記してよ。
つーか!
全部の部屋通り過ぎたんだけどッ!
グイッと反抗的に自分の手首に力を籠める。
私の反抗の意味合いを感じ取ったように道明寺の足が止まり半身ふりかった。
「部屋に戻ったらあいつらに邪魔されるのは間違いない。
だから・・・」
「だから?」
道明寺の考えを考えあぐねたまま私はオウム返しで聞きかえす。
「逃げる」
走り出した道明寺に引っ張られるままに非常階段の扉を開けてその中に入り込んだ。
まさか最上階から1階まで降りるわけじゃないよね?
無理!
汗だくになるのは必須。
死ぬっ!