恋の駆け引きは密室で 14

久々のカッコいい司君に読者の皆様のテンションも上がってるようでうれしい限りです。

せっせと書いてる甲斐があります。

いま一番ノッて書いてる作品なんですよね。

何時もの我儘、俺様嫉妬丸出しの道明寺より、今回の司の態度はつくしにとってはなおさら辛くなるんじゃないかと思う設定をしてます。

つくしが騙されたことを俺と付き合ってるばかりに巻き込んでごめんなんて思ってる司君。

騙されたつくしを包み込む包容力を見せられたら罪悪感いっぱいになりそうで・・・((/_;)

つくしちゃんサイドを書く前から胸が締め付けられてます。

*

一瞬、周りからすべての音が無くなった気がした。

道明寺を目の前にして動揺してる自分をふわふわと空の上から眺めてる気分。

呼吸をするのも忘れそうになる。

コツコツと革靴の冷たい音を響びかせる公道。

その音は徐々に大きくなって私を追いつめる。

無意識に後ろに下がる身体。

レンガ造りの壁の冷たさを背中に感じて動けなくなった。

道明寺・・・

唇は震えるだけで声にならない。

「逃げ場は無くなったな」

聞こえてきた横柄な声。

それなのに、険しかった表情は私を見つけた途端に優しく目元をほころばす。

そんな瞬間が眼の前に映える。

今は道明寺を真直ぐに見つめられない自分がいる。

逃げだそうとした瞬間に手首を道明寺に掴まれてしまっていた。

「しばらく会わないんじゃなかったの?」

それだけ言うのがやっと。

何時もの私ならもっと強引に抵抗できるのに、道明寺が今私の前に現れた意味を知るのが怖くて身体の動きを阻む。

ここ数日眠れなくて、つらくて、悩んで・・・。

どれだけの時間を一人で過ごせば良いのかわからなくて・・・。

道明寺に会えない不安より道明寺に会いたいと思う自分が許せなくて・・・。

それなのにいきなり目の前に現れないでよ。

「牧野、お前に会わないのは我慢できないって、気がついた」

力任せに引き寄せられた身体は私の悩みなど無視しして道明寺の胸の中に飛び込んでしまってる。

温かな温もりに包まれて感じる道明寺の香り。

すぐにでも縋りつきたくて泣きそうになる自分がいる。

私、眠らされてしまって、知らないうちに道明寺以外の人としちゃったかもしれない。

絶対やだよ。

「キャッー」

周りから聞こえてきた声は道明寺の腕でふさがれた耳にかすかに届いた。

ここ大学の前だった。

今はまだ素直に道明寺に甘えられない想い。

そして、今、目立ったことしたら、またなにされるかわかったものじゃない。

私を騙した相手は道明寺と私の関係を壊すつもりの意図があるのは明らかなんだから。

「道明寺ッ」

離してほしい気持をこめて道明寺の名前を吐き出した。

「俺が抱き締めてるのは誰だか見えないから、拒むな」

私の気持ちなんてお構いなしに道明寺の腕は一段と強く私を抱きしめる。

頬に触れるかすかな道明寺の唇の感覚。

軽いキスにも幸せを感じれる瞬間はまだ確かにいまも私の傍にある。

「道明寺が抱きしめてる相手って誰だか皆、想像つくでしょう。大学の前だし」

私と道明寺が婚約をしてるのは大学では周知の事実。

道明寺がほかの女性に関心を示さないのも認知されてるんだから。

未だに私に対する風当たりは強いから大学ではベタベタしたくない。

見せつけるように遠慮なく俺のだと抱き着いて来るのは今は困る。

私を騙した相手も今は刺激したくない。

「意外に強気だな。それじゃここで俺を突き放すか?」

口角を上げて軽く笑った道明寺。

強気なのは私じゃなく道明寺の方だ。

「それも、困る・・・」

今ここで、道明寺と離れたら、道明寺の温もりが一瞬で奪われそうで・・・

自分からそれを求めるなんて出来そうもなくて・・・

道明寺に会わせる顔はないのに、このまま一人でいたくないって思う我儘な自分もいて・・・。

上手く感情をコントロールできずにいる。

熱くなってきた目を隠す様に道明寺のスーツの襟をギュッと指先で掴んで顔を押し付けた。

「桜子の時みたいに騙されて眠らされたんだろう?」

「牧野、悪いのは俺だから」

それって・・・

道明寺は知ってるの?

何処まで?

私が眠らされたって誰に聞いたの?

花沢類?

でも花沢類が道明寺に言うはずないって思える。

私の見つけた四角いパッケージのことは花沢類にも話してないから道明寺が知ってるはずはないよね?

この人たちの情報網は一般論では語れないから分かんない。

「俺のためにお前が危険な目にあってるって分ってる。俺と付き合わなきゃ、お前は平和に過ごせるよな?」

切ない声が聞こえて頭の上でゆっくりと道明寺は息を吐くのが分かった。

まさか道明寺が距離を置こうと言ったのは、私が結婚を拒んだからじゃなく私を守るため?

私が襲われたからあわてて会いに来てくれたの?

道明寺はすべてを知って私を受け入れてくれるつもりなの?

道明寺の感情を読み取ろうと顔を見上げた。

長い睫毛に縁どられたクッキリとした二重の瞳。

何もかも見透かされているようで、それでいて熱の籠る熱いまなざし。

ゆっくりと私の唇に降りてきた唇が鼻先を過ぎたところで道明寺が瞼を伏せるのが分かった。

今はまだキスできないよ。

何もなかったように道明寺をこのまま受け入れるなんて出来そうもないから。

「道明寺」

息が触れあう距離でダメだと拒否した

何時もなら私の拒否など無視して強引に奪わうはずの唇はそのままわずかに私から離れる。

「俺が、すべて悪い。分っていてもお前を手放すことは出来そうもない」

「だから、一人で苦しむな。全部わかってるから」

道明寺の指先が私に触れるたびにドクンと胸が音をたてる。

ごめん。

何度となく言葉に出来ない謝罪を繰り返してる。

「牧野、お前だけは、何があっても俺を裏切らないって分ってるから、心配すンな」

道明寺・・・

これ以上優しくしないでよ。

こらえきれなくなった涙が頬を伝うのを止められなくなった。

道明寺の親指が涙を掬い取って温かな手の平が私の頬を包み込んだ。

「泣くことじゃねぇだろう」

道明寺が何時もと違って優しすぎるから、涙が止まらない。

優しすぎるから、ただ眠らされただけとは違うのかなってまた不安になる。

感情のままに怒りをぶちまけられた方がどれだけ楽なのかって思える。

何時もはもう少し優しくしてって思うのに・・・。

「怒ってないの?」

私に対する怒りを少しでも見せてくれたら僅かでも心が軽くなる気がした。

道明寺の返事が聞こえるまでの数秒。

考え込んだ道明寺の表情が顔色を変える。

「すごく、機嫌悪そうに見えるんだけど」

何時もの道明寺にホッとしてる。

「ウソじゃねェよ。お前を騙した相手に殺意を抱いてるだけだ」

吐き捨てるように言い捨てた道明寺は殺伐とした冷気を浮かべてる。

道明寺が見せてる怒りは私にじゃなく私を騙した相手に見せてるもの。

私を見つめる瞳は切なさを滲ませて、道明寺の表情が曇る。

「道明寺・・・ごめん」

道明寺のそんな落ち込んだ顔はみたくなくて・・・。

何時もの自信に満ちた尊大な道明寺が道明寺らしくって・・・。

俺様な道明寺が好きで・・・ 。

騙された私がバカだったのに、自分を責める道明寺が辛くて、辛くて、見たくなくて、自分が許せなくなる。

止りかけた涙がもう一度溢れだした。

「泣くな。お前が泣くと俺の方が辛いんだよ」

感情の行き場がなくなって、道明寺に抱き締められるままにその胸にぐしゃぐしゃになった泣き顔を押し付けていた。

拍手コメント返礼

匿名様

あの・・・何方でしょう?

今日一番の拍手コメいただいた方?

名前の記載忘れのような気が・・・(^_^;)

司と一緒で騙した男を許さないのコメです。

続きは週明けということでお許し下さい。

やなぎ様

つくしちゃん今度は司がどこまで知ってるのかふあんでしょうがないんじゃないんでしょうか?

悩みが増えてたりして・・・

ここは心を鬼にして更新は週明けということでお待ちいただきたく・・・

けして意地悪じゃりませんから~

後ろからときどき覗いて来る邪魔者が邪魔なんですよね。

トマト 様

司には言えないですよね。

つくしちゃん~~~~~~と慰めたくなるんですけど。

慰めてくれるお人はいっぱいるだろうなぁ。

かよぴよ様

大人のカッコいい司が見られるなんてめったにありませんよ~。

あれ・・・

私カッコよく司を書いていたつもりなんですけどね。(笑)

つくしちゃんが絡むと嫉妬むきだしで我儘で突き進んじゃうから~。

椿お姉さまもタマさんもきっと泣いて喜ぶだろうなぁ。

あずきまめ 様

司の対応はカッコ良すぎですけどつくしちゃんの罪悪感は膨らんじゃいますよね。

何時もの司の方がつくしちゃんにとっては楽でしょうね。

そう、仕向けてるのは私なんですけどね(^_^;)

心が痛みます。

そうそう、今回は珍しくつくしちゃんも素直なんですよね。

相乗効果?