恋の駆け引きは密室で 13

司・・・つくしを待ち伏せ

「人をストーカーと一緒にするな!!」

「迎えに来てるだけだろうがぁぁぁ」

凄まれても、今のつくしちゃんにとっては、一番会いたくない相手だと思います。

さて、司君はつくしちゃんの壁を壊せるのか!

乞うご期待!

*

足を一歩前に出せば、あいつは後ろに一歩、身体を後退させる。

縮まらなかった俺との距離も外部と大学を遮断する高い壁に阻まれて牧野の動きが止った。

「逃げ場は無くなったな」

目の前の俺をすり抜けるように横に逃げ出そうとした牧野の腕を俺の手のひらが反射的に捉えた。

「しばらく会わないんじゃなかったの?」

少し震えてる声を必死に絞り出す牧野。

俺に握られてる手首は俺の手の中で逃れようともがく。

全部俺は知ってるから虚勢を張るな。

「牧野、お前に会わないのは我慢できないって、気がついた」

そのまま胸の中に引き寄せて抱きしめた。

「キャッー」

聞こえた声は牧野の悲鳴ではなくて辺りから聞こえてきた。

牧野に聞かせないように片腕を後頭部に回して両耳を塞ぐようにしてすっぽりと俺の胸の中に閉じ込めた。

俺が誰を抱きしめてるか外からじゃわからない恰好。

「道明寺ッ」

牧野の批難じみた声は胸元に籠って胸の奥に吸い込まれる。

「俺が抱き締めてるのは誰だか見えないから、拒むな」

俺と牧野の密着度は高まったままで、俺の唇はかすかに牧野の頬に触れる。

「道明寺が抱きしめてる相手って誰だか皆、想像つくでしょう。大学の前だし」

胸元から俺を見あげる瞳。

気弱な声はいつの間にか無くなって強気な瞳の中に俺が映る。

動揺するように僅かに瞳が微弱に中心から動いたように見えた。

それは一瞬。

牧野が自分の感情を俺から隠した?

きっと、写真のことで動揺してるだけ。

だよな?

騙されたって気がついて、それをどう利用されるのか考えて落ち込んでる。

俺にまず相談するのが本当じゃねぇの?

全部知ってる。

そう言ったら、それで牧野の悩みは解決するはずで、たいした問題じゃない。

「意外に強気だな。それじゃここで俺を突き放すか?」

「それも、困る・・・」

目を伏せて、胸元にもう一度牧野が俺の胸にもたれ掛る。

「桜子の時みたいに騙されて眠らされたんだろう?」

「牧野、悪いのは俺だから」

ピクッと牧野の身体が俺の胸の中で小さく反応したのが分かった。

「俺のためにお前が危険な目にあってるって分ってる。俺と付き合わなきゃ、お前は平和に過ごせるよな?」

俺の言葉に牧野は頭をもたげる。

長い睫毛に縁どられた大きな瞳がこれ以上に大きくならない大きさで俺を見つめる。

高くはないが形のいい鼻と赤くふっくらとした唇。

柔らかなカーブをした頬。

長く伸ばしたストレートの髪に指を絡ませながら牧野に吸い寄せらる。

唇がもう少しで触れあいそうな紙一枚を挟んだ距離。

「道明寺」

牧野の唇がつぶやいて、俺を拒んだ。

「俺が、すべて悪い。分っていてもお前を手放すことは出来そうもない」

「だから、一人で苦しむな。全部わかってるから」

牧野の涙を止めようと必死過ぎて俺らしくない饒舌。

「牧野、お前だけは、何があっても俺を裏切らないって分ってるから、心配すンな」

瞳の奥からゆっくりと潤んで溢れだす涙。

俺の指先は壊れ物を扱うような繊細な動きで牧野の両頬を包み込む。

親指の腹で牧野の瞳からあふれ出た涙をふき取る様に自然と動いた。

「泣くことじゃねぇだろう」

「怒ってないの?」

二度も同じ手にひっかかるこいつの警戒心の低さには呆れてる。

たかが写真を撮れたたくらいで牧野を責める気にはなれねェよ。

その程度で、不満を爆発させていたら俺は今までにどれだけ残酷になれるか自分でも分かるものじゃない。

牧野を責める気はさらさらないが、牧野にわざわざ覆いかぶさってたあの写真の男は別物だ。

桜子が企てた牧野の肌着の写真より露骨で胸糞悪い。

俺以外が牧野の体温をまじかで感じた事実は黙っていられるものじゃない。

「すごく、機嫌悪そうに見えるんだけど」

鼻を啜りあげながら必死に涙をこらえる牧野。

「ウソじゃねェよ。お前を騙した相手に殺意を抱いてるだけだ」

見つけだしたらただじゃおかねェ。

「道明寺・・・ごめん」

何度も何度も謝罪を繰り返す牧野の肩は俺の腕の中で震えてる。

頼りなくて、壊れそうで、小さな子供が泣きじゃくるような牧野は初めてで・・・。

牧野の悲しみを取り除くことが出来ずに俺の方が焦りを覚えてる。

「泣くな。お前が泣くと俺の方が辛いんだよ」

牧野を抱きしめならこれまでに感じたことにないどす黒い感情が胸の中に渦巻く。

あの男を見つけたら今の俺は本気でそいつを殺しかねない。

そう、思えた。

次回はつくしちゃんサイドからのお話となる予定です。

拍手コメント返礼

みえこ様

つくしちゃん、悩んでなければ惚れ直しそうなんですけどね。

まだ司は全容を知りませんからね。

ここからですよ~。

Gods & Death様

つくしちゃんのないぇまを早く取り除かないととんでもないことになりそうですよね。

司が優しすぎるとつくしちゃんはますます疑心暗鬼になっちゃうかもですよ。

ゆうん様

正方形のごみのことはまだ司君は知りません。

写真を撮られただけと想っちゃってますからね。

これで殺意を持ってるんだからゴミのこと知ったらどうなるか!

司を犯罪者にはしたくないなぁ~

pomozuku様

ここからの司君はいつものお子ちゃまな司君は封印です。

大人な司君を楽しんでもらいたいです。

c4 様

今回のこの包容力なんなんでしょ?(笑)

何時もの司君と違い過ぎですよね。

包容力も我儘も超がつくのはつくしちゃんだけなんですよね。

嵐熱再燃、コンサートも初参戦で羨ましい。

思いっきり弾けて楽しんじゃって下さいね。

コンサート、一度は言ってみたいなぁ~

あずきまめ 様

モット惚れ惚れしてもらいましょ。

今回の司君は一味違いますよ♪

つくしちゃんも何もないときにこんな司を見たかったでしょうけどね。

akko

ハイ♪しっかりコメいただきました。

楽しく読ませてもらってお返事書いちゃってますよ。

今回は惚れ直しそうな司君を書いてみたくて頑張ってます。

つくしちゃんが今回は切なくなりそうで(/_;)。

拍手ありがとうございました。

佳扇 様

いつもの怒りと嫉妬丸出しの司より包容力を見せる司はつくしにとっては逆に辛いと思いませんか?

今回はそんな話に書きたくて司君を大人にしちゃってます。

最期はいつもハッピーにはなるんですけどね。

まさこ様

司君成長を見せてます。

つくしのおかげと喜んでいる人たくさんいるだろうな。

その筆頭は西田さんかな?