Fools Rush In 4
*「わぁ!走るな!飛ぶな!持つな!」
目の前に必死の形相が迫る。
そう言われても困るものは困る。
駿を追いかけて階段1段飛び越すのも、抱っこするのもしょうがない。
今1番手のかかる2歳児なんだからッ。
止めるなら私より駿の方だぞ。
まだ今のところ体型が変わっているわけじゃないから駿の世話をするのも苦痛じゃない。
「ねぇ、私を抱きしめるより先に、駿を捕まえて欲しいのだけど」
「えっ?あっ?そうか・・・」
慌てて私を抱いていた腕の力を緩めて幼い声の上がる方に司が視線を移動させる。
廊下の端の方にすでに移動している駿。
歩くと言うよりは走りまわっている。
屋敷の中が広いだけに一度目を離すとどこに迷い込んでるか分からなくなる。
家の中で迷子になるってどこまで広いんだか。
駿にリードをつけたいとこの頃本気で思っている。
簡単につかまった駿は司に肩車されて御機嫌だ。
「あんまり世話やかせるな」
頭の上の駿を見上げながら司が目を細める。
「言ってもわかんねぇか」
駿の笑い声に合わせる様に司の口元にも笑みがこぼれた。
「駿で慣れたから大丈夫だ」
司が言っていたのは翌日には妄想だと気が付いた。
相変わらず1日1回は10階の事務所に顔を出す司。
「変わりないな」って、数時間で何か変化がある方が怖い気がする。
甲斐さんも玲子さんも駿君の時で慣れたって半分面白がっている節がある。
今はまだ身近な人しか私の妊娠は知らないはずだ。
だけど、この調子じゃお腹が膨れる前に私の妊娠は会社中に知れ渡ることになりそうだ。
駿の時と同様に社員食堂まで出没されたら・・・。
『甲斐甲斐しく奥さまの世話を焼く代表』
このフレーズは今回も有効な気がする。
今も、都内に出ていくついでだと事務所に顔を出す司。
周りは素知らぬふりで見て見ぬふり。
「もう、毎日事務所まで顔出さなくていいから」
「ついでだろうが」
「ついではいいから」
「ついでじゃなきゃいいのか?」
「駿で慣れたんじゃないの?」
「気になるものは気になる」
顔を下に向けた甲斐さんが笑いを噛み殺してるのが分かる。
肩が完全に震えています!
追い出す様に司の背中を事務所の外に押しやった。
「無理すんなよ」
温もりのある瞳に優しさのこもる声。
だから・・・。
無下にできなくなる。
「大丈夫だから」
肩に置かれた暖かい手のひら。
それを感じながらその手に自分の手を添える。
「今日は早く帰れそうだ」
待っているの気持ちを乗せてコクリと頷いた。
拍手コメント返礼
しずか様
最初の書きだしは悪阻でグダグダ気味につくしを書いてたんです。
でも途中で却下しました。
いい場面が浮かんだらそのまま言っていたかもしれませんけどね(^_^;)