watcher 4
*嵐の去った後の静けさ。
いや・・・
ただいま台風の目の中の静まりというところか。
一通り会話をした後で派手な彼女は俺とつくしを残して姿を消した。
「どこで知りあったんだ?」
今のつくしと彼女との接点を見いだせないでいる俺。
道明寺の本社ビルで仕事して必要あればSP付きの生活のつくし。
あの手のタイプがつくしに近づけば真っ先に排除されそうだ。
「あれ、わざとだから」
「へっ?」
「化粧を落とせば清楚なお嬢様になるわよ彼女」
信じられない表情で彼女が去った先を目を凝らして見つめた。
入り口でぶつかった相手に頭を下げている場面を目撃。
見た目よりは素直そうだけどドジっぽい。
突然彼女が莫大な遺産相続人になった話もドラマっぽい展開。
ついでに命を狙われているって弁護士の仕事逸脱じゃないか。
「お前の旦那は知らないよな?」
発する声も自然と小さくなる。
「言えるわけないでしょう、真っ先に身辺警護の数をふやされるか、仕事止めさせられるわよ」
「最初は遺産相続の相手を見つけ出すだけだったんだけどね。途中から雲行きが怪しくなっちゃってね」
ため息交じりにわずかに表情が曇る。
グラスに手を伸ばして一気につくしが水をのどに流し込んだ。
「どうしてこうお金が絡むとこうなるのよ」
憤慨するようにテーブルがドンと大きく音を立てる。
グラスの水がピチャッと飛び出してテーブルを濡らした。
「ごめん」とつくしが慌てた仕草で自分のおしぼりで水を拭き上げる。
普段は全部人にやってもらうのが当たり前の生活をしているはずなのに全然らしさがない。
感化されてないというか変わってないというかセレブには見えないよな。
欲がからむから人間は貪欲になるんだ。
バカなこともするし事件も起きる。
司法の仕事についてれば人間の欲もその裏側も犯罪の臭いも全部見ている。
今さら憤慨する理由はそこにはないと俺は思う。
「手続きが済むまでは彼女は身を隠して、その間に彼女の命を狙っている犯人を探す段取りなんだけどね」
みつからないためあの変装。
どうせならその間、道明寺邸宅に避難させた方が安全だと思う。
人一人保護したところで大した詮索もされそうもないと俺なら考える。
そこには道明寺の力を頼りたくないと思うつくしの感情があるのだろうけど。
「コナン君の手配は無理だけど、検事の公平が1枚かんでくれたら相手も無謀なことしないかもしれないでしょう」
やたら楽天的な反応。
アニメの世界と現実を交差させるな。
1話で完結できるものじゃない。
「旦那に頼んだ方がすんなり解決できるんじゃないか」
心の内ではぼやいてみる。
変なところで頑固というか、融通がきかないとこあるもんなつくしの場合。
こいつの性格を考慮すると引き受けた仕事を途中で投げ出すタイプじゃない。
泣き言を言うはずもない。
それが自分の身に危険が迫っているとしても。
危険だって自覚があるかどうかは、はなはだ疑問が残る部分ではある。
まぁ・・・。
頼られているのが道明寺司ではなく俺っていう優越感があるのも否定できないとこがみそだ。
ここが惚れた弱みって言うことに違いない。
最終的には「道明寺つくし」という切り札は有効的に使えると思う。
日本政府も動かせるつーか手出しできない巨大な権力。
何かあったらすぐに機動隊でも出動しそうだしな。
それが最後の砦みたいなものかも。
そう考える俺も楽天的かもしれない。
「手に負えなくなったらどうする」
「その時はその時で考える」
考える様子もなく即答気味に返された返答。
だからそれが無謀なんだッ。