下弦の月が浮かぶ夜38
*「・・・で、どうなっているの?」
「どうって?」
珍しく夜の時間に集まった4人。
誰から言いだしたのか分からないまま高校時代みたいにつるむのは久しぶりだ。
今日は牧野もいないっていうのも珍しい。
顔を合わせた途端こいつらの聞きたいことは俺と葵のその後の進展。
大した進展なしだよ。
進展させるつもりもなしだ。
「とぼけるな、秘書にしたんだろう?」
総二郎が俺の肩にくるっと腕をまわして締め付ける。
どこからの情報だ?
こいつらの情報網は司と牧野のことだけかと思っていた。
「司は側に置いておきたくて牧野を秘書にしようとしてしくじったけどね」
一番興味ない様な顔して横文字の本を眺めながらさらりと核心的な事を口にする類。
俺はたんにあの噂の中に葵を置いておけなかっただけだ。
「うるせぇ」
「あいつは元から弁護士志望だからな」
司が大学卒業前に牧野をバイトさせた話は聞いている。
自分の横で牧野にハンコを押させたって緩んだ表情で自慢していたのは1年以上前のことだ。
葵はしっかり秘書の役目はたしているぞ。
俺は自分の満足を満たすために秘書にしたわけじゃない。
根本から違うだろう。
葵は俺が思っていた以上に優秀だった。
英語にフランス語、ドイツ語、中国語と語学力は堪能。
家族全員何かしら日本語以外喋れるからっと当たり前みたいな顔で葵から説明された。
『世が世ならお姫様』という爺様の触れ込みもあながち嘘じゃなかったと俺も評価を変えた。
一之瀬の評価もうなぎのぼり。
「こんな奥さまなら問題ありません」
にこやかにそう俺に告げて満足そうだ。
それは俺が決めることだと言ってもその評価は爺様まで伝わっているんだろうな。
「秘書って言ったら、いつも一緒だろう?」
「誰も呼ぶまで来るなって言ったら密室の出来上がり」
音符付きで聞こえる総二郎のおどけた声。
「そこまで飢えてねぇよ」
茶室だって似た様なものだろうがぁぁぁと俺は総二郎を睨む。
なにを想像しているんだ。
以前なら司を肴に良くやった総二郎と二人の小芝居。
今は総二郎が一人で上演を始めそうだ。
「あきら、俺達は親に言われたとおりの結婚するんだろう?司は例外としてな」
「それなら葵ちゃんを相手に選んでもなんの問題もないよな」
「お前の秘書にしたってだけでもお前らしくないことだと思うけど」
気にいっているんだろうといいたげな表情を総二郎が浮かべる。
今はまだ自分の気持ちがどこまであるのか分からない。
女性に真面目に向きあった感情なんてないに等しいのだから。
今が楽しければそれでいい。
総二郎、お前もそうだったろう。
司が・・・
類が・・・
牧野にあそこまで真剣になる気持ちがわかんねぇ
言った総二郎に「牧野だからだろう」と答えた俺。
あの時から俺の恋愛に対する気持ちは変わり始めていたんだと思う。
「俺はしっかり応援するぞ。あきら」
うれしそうな高揚した顔を見せる司。
お前の応援は明らかに俺の為じゃない。
そのほうが都合いいだけだろうが。
そんなにせかすな。
自分の気持ちをうまくコントロールできるほど真面目な恋には慣れてない。
実際・・・戸惑ってるんだよな。
葵には・・・。
俺の恋人って噂も相変わらずだ。
それでも会社では上司と部下の枠からはみ出していない。
秘書課の連中の間には俺達二人には何にもないという評価に落ち着いてきてる。
「仕事がやりやすくなった」
うれしそうに葵から報告を受けた。
それって・・・。
俺と恋人じゃなかったって評価されて葵は喜んでるってことだよな?
自分でそう仕向けたはずなのに、素直に喜べないのは俺のプライドか?
ったく・・・。
予想できない感情と今は向きあっている。
「お前ら、好き勝手に想像するなッ」
「まあ、頑張れ」
俺の反応を楽しんでいる3つの顔が目の前にあった。
ここまで行くと話の筋は見てくると思います。
どうしても私はつかつくオンリーなのであきら君にも総二郎にも幸せになってもらいたい気持ちが~。
あきつく以外は見たくない方はこの辺で引き返してくださいね。
そうは言っても類にはつくし以外の誰とも想像が出来ないんですよね。
拍手コメント返礼
しずか様
ミニF4の登場も楽しそうですよね。
その前にF4の全部の相手・・・
それが一番の問題だ~。
あっ・・・書かないで子供だけ登場させると言う手だてもありかな?