watcher 11
*一気に波に足をさらわれてしまった。
そんな感覚。
そのまま砂場に尻もちついて思いっきり塩水を飲まされた感じだ。
予想だにしなかった道明寺司の登場。
怒る気にもならない。
速水会長の孫娘に、結婚してた!子供も3人!とばれて部屋の片隅につくしは引っ張られて行ってしまった。
彼女の興味は道明寺財閥の奥方と言うことではなく恋愛に関する事らしい。
そして限りなく見たくない男二人のツーショットが出来あがる。
「余裕ですね」
顔を合わせないままに並んで壁際に背中をつけて孫娘に質問攻めになっているつくしを道明寺と二人で眺めてる俺。
「以前なら俺がつくしの側にいるだけで嫌だったんじゃないですか?」
「今でもそれは変わらねぇよ」
わずかに上がる口角は含み笑いを二人して作ってる。
駆け引きはここから始まっている。
下手な裁判よりおもしろいかもしれない。
相手は天下の道明寺、不足なし。
第一公判は負けたが次は勝つ!
みたいな闘争心。
つくしの事になるとムキになる俺も成長してないみたいだ。
「嫌な奴だけど、お前のことは信頼してる。つくしの害になる奴じゃないってな」
「だから今回は任せた」
つくしを愛しいと言う様に目を細めて見つめる瞳とは対照的な強気な声。
余裕のある表情はここまでの二人の歴史をさまざまと見せつけられてるようだ。
それで落ち込むと言うよりは幸せなんだとつくしの今の充実した生活を素直に喜べる感情がある。
だから・・・
道明寺を焦らせたいと思う悪戯心も浮かんでくると言うものだ。
「つくしは怒ってるでしょうね?」
「あっ?」
道明寺がわずかに首を右に向けて俺にようやく視点を合わせる。
それを横目でチラッと確認して言葉をつづけた。
「つくしを騙してたわけでしょう?それも俺を巻き込んで」
「つくしの性格じゃ納得しないよな」
わざとらしく小さく息を漏らす。
俺からの仕返し。
たいしたものじゃないと分かっていながらわずかに焦った様な表情を浮かべた道明寺に満足した。
「そんな、小さな事どうとでもなんだよ」
道明寺の頭ん中はつくしにどう説明するか思考を働かせてると思わせるほど眼球が落ち着きをなくしてるのが解かる。
根本的には昔と変わらない道明寺を見つけた。
「私より仕事をとったんだなんて言ってすねそうだな」
「公平まで巻き込んでとか俺のことをかばいそうだし、申し訳ないと俺に気を使ってくれそうだ」
「お前、意地悪くなってねぇか?」
「道明寺さんほどじゃないですよ」
以前ならこの辺で襟首をつかまれていただろう。
苦笑するような表情を見せるこいつはまだ8割がた仕事モードを保ってるのだろう。
「もう疲れる」
つくしが質問攻めから逃げるように俺達の前に駆け寄った。
「学生時代のノリで恋愛話なんて出来ないわよ」
つくしが振り返ってみた孫娘は笑顔で手を大きく左右に振っている。
確かにあの調子は高校生のノリだ。
「学生時代のノリって・・・どんな話してたんだよ」
「別に司には関係ないから」
道明寺はわざと現在から学生時代に話をすりかえる気なのだろうか?
その話の進め方は無理があるぞ。
口の中で漏れそうになる声を必死で抑えた。
「関係ないって、学生時代お前がつきあってたの俺だけだろうがッ」
「横暴で我ががまで自己中なことしか私たちの恋愛にはないでしょう」
それでどう恋愛に発展するんだ?
大学の二人は周りが遠慮するくらい仲が良いっていうか幸せそうなこぼれる笑顔を道明寺に向けていたつくしを俺は覚えてる。
自覚がないのがつくしらしいと言えばらしいけど。
道明寺のそばにつくしがいるときは近づくなと大学の格言になっていたとはウソの様なホントの話。
幸いにも俺はそれを目にすることはなかった。
「それより、今回の事はなんなのよッ」
矛先はつい数分前の事に戻っている。
「私だけじゃなく、公平まで巻き込んでいいと思ってるの」
「うまく解決したから問題ねえだろう」
「私に内緒だったんだよね」
「だからなんだ」
「私より仕事を取ったんだ」
「お前には迷惑かけてねえだろう」
「かけてるでしょう公平にッ」
俺の予想通りに言葉を発するつくし。
こいつの正義感の基準は自分より他人に置いているのは昔から変わらない。
自分のせいで他人が傷つくことを一番いやがる奴だから。
だから俺はつくしを守りたくなるんだ。
つくしの機嫌を損ねない対応。
道明寺が失敗した。
ドS倶楽部発動はないだろうと思わせて公平君に司を煽ってもらいました。
本当はこの回くらいで終わる予定だったんです。
でもまだ続いてますが・・・(;O;)
いまこのwatcherのお話が数話頭の中に埋まっていて、他の話がUP出来ません。
どうしよう!と焦りぎみです。
早く終わらせないと他の話が思い浮かばないと言う状態です。
どこから手をつけるかな・・・(^_^;)