watcher 7

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「怪しい人は、いた?」

いたって・・・

普通はお前の方がその情報を把握してないとおかしいだろう。

ガクッと力が抜けるような感覚。

「しぼってないのか?」

「だって全員が怪しいんだもん」

「ほら、ドラマなんかだと一番らしくない人が犯人だったりするじゃない」

あっけらかんとした笑顔。

緊張感なしだ。

命狙われてるんじゃないのか?

まあ・・・表立って相手は動かないよな。

ばれた時点で遺産相続の権利はなくなるはずだから。

「あの子を孫娘と無事にお披露目が済めばいいってことだからね」

そうすれば表立っての手出しは出来ないだろう。

相続が済めば、遺産相続の権利は優先順がまた変わる。

「それまであとどのくらいなの?」

ジュースを飲むためにストローを口に含んだ。

「1週間後かな」

「その前に親族の集まりがあるんだよね」

「そうか」

「一緒にいってくれない?」

吸ってたストローごとジュースを吐きそうになった。

「なんで俺が!」

「ほら、検事がいるってなればそれだけで護衛の威力は上昇するでしょう」

俺は単なる盾?

「まさか警察沙汰にはしたくないだろうし」

「どうせ警察沙汰にならないように手を回すんじゃないか?」

「道明寺がついてればそれは無理でしょう」

それじゃ最初から道明寺で表立ってやった方が安全策だろう。

「旦那連れて行けよ」

「昼間だし無理よ」

頬づえついてため息をつくしが漏らす。

「それに公平に頼んだなんてばれたら・・・」

もう・・・後は聞かなくても分かる。

「表立って道明寺が後ろについてますって分かるのはまずいみたい」

「道明寺の名前を出すのは最終手段だって依頼主から言われてるから」

「企業提携を結ぶの極秘なんだって」

小声でこそこそ呟かれた。

このへんの駆け引きは俺には分からない。

安全に迅速に事を進める!

その方が大事に思える。

まあ・・・

つくしが俺に頼みごとをした。

この事実が道明寺司の耳に入ったらおもしろくないのは確かだろうけど。

なんとなく・・・。

それが・・・。

気分がいい・・・。

誤魔化されてはダメだ。

自分に言い聞かせる。

「付き合えと言われてもなッ」

わざとらしく嫌そうな表情に眉をしかめる。

「お願い」

目の前で手のひらを合わせて必死の視線。

それを拒めるほど強くない。

「しょうがない」

「良かった」

安心したようにホッと息をつくつくし。

それが・・・・・

くすぐったくて俺の口元もほころぶ。

それは何年たっても変わらないと思わせる甘い恋心。

やっぱ、こいつに惹かれてる。

俺も甘い。

見返りのない思いの男の純情。

苦笑して受け入れるしかなかった。