watcher 12

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「ただいま」

待ちかねたようにつくしに飛びつく身長120cmを真ん中に左右に並ぶ90cm弱のチビたち。

俺には「お帰りなさい」の言葉だけ。

「いい子にしてた」

「ウン」と頷いて駿の顔はつくしの腹部にべったりと張り付いてる。

ここで「こら」なんて駿に対抗したら完全につくしはストライキ状態に突入しそうだからグッと耐える。

帰りの車の中では完全に無視された俺。

それは今も続いてる。

その不機嫌さも子供の前では穏やかな顔にかわる。

双子にほっぺを挟まれてこぼれそうな笑顔をつくしが見せた。

「さぁ、部屋にもどろうか」

4人で並んで手をつないでも歩ける幅の廊下。

「今日学校でね!」

「庭でねブランコが!」

「ねこしゃんがね!」

幼い声にあどけない声が一斉につくしめがけて喋り出す。

「みんなが一緒におしゃべりするとお母さんは分かんないよ」

クスクスと口元がほころぶつくし。

黙って見てる俺。

一人くらい「お父さん」って駆け寄ってもよさそうだが、誰も後ろを振り向かない。

俺だけぽつんと取り残された。

あのまま進むのは子供部屋か?

ガクッと落ちる両肩。

「どうかなさいましたか?」

遠慮がちに使用人頭の溝口に声をかけられた。

「なんでもねぇよ」

「奥さまが・・・」

ご機嫌悪い様なと言われる前に睨んで溝口の声をふさぐ。

つくしが俺も無視して使用人にいつもは見せる心遣いも忘れて声も欠けない異常事態は滅多にない。

俺の機嫌よりつくしの機嫌に敏感な使用人たち。

我が道明寺家の平穏はつくしでもっている。

それは数年の結婚生活で蓄積された使用人たちの信頼を一気につくしが集めた成果。

俺の機嫌はつくし次第なんて囁かれてるのは癪だが本当だと認めざるおえない。

不機嫌を象徴するように靴音を荒く立てて本来ならつくしもいるはずの俺達の部屋を目指す。

「・・・」

扉のむこう側からキャキャと聞こえる声。

なんだここにみんなでいるのかとようやく俺の口元にも笑みが浮かぶ。

やっぱそうだよな。

家族だもんな。

俺を仲間外れにするなんて姑息な仕返しをつくしがするはずねぇよ。

駿はつくしにべったりのまま。

「パパ~」「おとうしゃ~ん」

ようやく双子のチビ達が俺に飛びついてきた。

双子の片割れは最近は駿の真似をしたがる。

まだ「お父さん」とうまく発音できないのに無理して「おとうしゃ~ん」と甘ったるく俺を呼ぶ。

上の男二人とは違うかわいらしさがやっぱあるよな女の子の場合。

頭を軽くなでてやった二人が「キャッキャッ」とご機嫌な声を上げる。

膝を折って二人を抱き上げようとした俺の視線が固まった。

こいつらもうパジャマ着てる・・・。

手にはクマにウサギの自分たちの安眠枕を抱えてる。

「おい!・・・これッ」

「今日はみんなで寝るんだよねっ」

「「「ねっ」」」

ちっこい顔がかわいく首を傾けた。

「寝るって・・・」

「5人でか?」

「なんとか寝れるでしょう」

キングサイズのベットの広さは余裕だが、子供たちがベットから落ちると危ないから左右に別れる俺とつくし。

自然とつくしを抱き寄せる事は子供達が壁となる。

つくしがすねても仲良くなる方法はある!

朝はきっと甘い二人に戻ってるって俺の考えはバレバレか?

「今日はぐっすり寝むれそう」

鼻歌でも歌いそうな調子のつくしの声。

これが仕返し?

子供たちが寝てからが勝負だ!

負けねェーーーーーッ。

いきなり帰宅させてしまいました。(^_^;)

公平君どうしてるのかな・・・。