下弦の月が浮かぶ夜16
*人肌が気持ちいい。
もう少しこのままで・・・
朝なんて来なくていいのに・・・
ンッ?
ここどこだ?
どう考えても私と素肌を寄せ合って抱きしめる相手は一人しかいない。
ヤバーーーーーッ。
あのまま寝てしまったんだ。
また無断外泊だ。
最近は両親の方が道明寺の家に行くと言ったら「帰りは明日?」なんて聞いてくる。
結婚前にこんな状況でいいはずがない。
って・・・考えても今さらだよね。
「帰る」って言った私。
「うんざりされても離さねぇ」と裸のまま抱きしめた道明寺。
離れるすべを失った。
身体を起こして、ぼやけた目を右手でこする。
開けてきた視野の中に映るのは緻密に整理された部屋の中に無造作に脱ぎ捨てられた二人の私服。
昨日の情事を見せつけている。
思い浮かべただけで身体が熱くなった。
「起きたか?」
わずかにかすれた低い声。
身体からずり落ちたシーツから露わになる艶やかでみずみずしい肌。
そこから伸びてきた腕は私を包み込む。
逃げ遅れた。
「もう行かなきゃ」
「行くってどこに?」
「大学に決まってるでしょう」
「道明寺も会社に行かなきゃいけないでしょうが」
「かったるい」
私を抱きしめたままの道明寺の指先はゆるゆると肌を刺激する。
「触んないでよ」
「なんで?」
「なんでって・・・」
「感じるか?」
「感じるってね、くすぐったいの!」
振り払っても指先は別の場所に移動したにしかすぎない。
抗おうとする動きは道明寺にすべて見透かされてようだ。
身体を離そうとすると肩をつかまれて引き戻され二人の密着度を増す。
脚をベットの端に移動させようとすると腰を掴まれる。
「俺から逃げんな」
「逃げなきゃやばい」
すぐ上にある道明寺の精悍な顔を睨み付けた。
「お前、まだあきらに付き合うつもりか?」
「だって・・・助けるって約束したしね」
「美作さんが大丈夫って言うまでは付き合わないといけないでしょう」
「ったく、言いだしたらきかねぇからな、お前の場合」
吐き捨てる様な道明寺の言葉に一瞬でギクッと緊張が走る。
「タダじゃ許せねぇな」
「許せないって、何させる気?」
これ以上のこと要求されたらヤダッ。
目の前の顔がニンマリと動く。
「あきらに付き合うんだったら俺にも付き合ってもらわないとな」
「な・・・っ」
道明寺の意図とするところに考えが行きつかずに言葉がつまる。
あたしの髪に触れていた指先を滑らせ私の両頬を包み込んだ。
上向きだった顔はさらに上の方に向けられる。
近づいてくる顔には熱い輝きの黒色の瞳。
「俺より長い時間を他の男と一緒にいるなんて許さない」
苦しいほど喉をそらせた姿勢のままに息が止まる。
「しばらくここに住め」
「あきらのことが決着つくまで」
くちびるが触れる瞬間に道明寺が呟く。
「えっ!」
問いただそうとした瞬間に唇がふさがれた。
ここでの司クンを別なお話の司クンに見せたいと思いながら書いてます。
差があり過ぎだ~
その差を楽しんでいただけたらと思います。