幸せの1歩手前 4

 *

「先に行っといて下さい」

甲斐さんの声に送られて事務所を後にする。

仕事の書類作成が終わらないと残業を余儀なくされた甲斐さん。

「甲斐君には悪いけど、女同士の方が安心よね」

玲子さんは意味深な笑顔を浮かべる。

「代表が不機嫌になる要素が一つ消えた」

本気で玲子さんに言われてるから恥ずかしくなる。

2時間前の道明寺への携帯コール。

「一応断りを入れておきます」

デスクの下に体を隠す様にして道明寺への短縮ボタンを押した。

「オッ、どうした?」

聞きなれた声。

穏やかな優しさを含む声に言いやすさを感じてホッとしている。

私が朝一人で先に行ったことへの不満はなさそうだと安心した。

「今日遅くなるんでしょ?」

「情報が早いな」

「西田さんからメールが来たから」

「手回しのいいことだ」

声のトーンが低く下がる気配。

どうも西田さんには不満があるらしい。

「私も少し帰りが遅くなってもいい?」

「なんで?」

「玲子さんが就職祝いしてくれるって言うから」

携帯の向こうが黙り込む。

この沈黙に耐えるのは苦痛だ。

ダメだって返事が返ってきそうで息をのむ。

ダメって言われても行くからね!

反抗してアホらしい言い合いに発展するのは嫌なんだよな。

心がつぶやく。

「俺の帰りが遅くて一人が淋しからとか言わねえのか?」

返ってきた言葉はあまりにも予想外で言葉を失った。

聞き耳を立ててそうな雰囲気の玲子さんと甲斐さん。

言えるかぁぁぁぁぁ。

「言えば許す」

声の主は威圧感丸出しだ。

携帯を包み込む様に両手の手のひらの中に隠した。

「淋しいから・・・」

小さくこもる声

「それだけか?」

「一人じゃ淋しい、愛してる。これくらい言え」

暴君気味に暴走し出してる。

「あのね、今事務所の中で皆がいて一人じゃないんだから」

「だからなんだ」

「俺なら聞こえる様に宣言するぞ」

宣言って・・・

道明寺ならやりそうだ。

「朝も置いていかれた」

「仕事は山積み」

「帰りもここしばらくは遅くなりそうだ」

「西田にお前の周りをウロウロして邪魔するなと釘も刺された」

「俺を邪魔者扱いするのは西田とお前くらいのもんだ」

携帯の向こうでどんどん熱を帯びてくる声。

それくらい言わせなきゃやってられねぇみたいな二アンス。

「一人じゃ淋しい、愛してる」

言われた通りに繰り返す。

革張りの椅子に踏ん反りかえってる道明寺が見えた気がした。

「愛してるってぇ、やっぱ新婚だよね」

デスクの下からゆっくりと出した頭の上から聞こえる玲子さんの声。

視線がぶつかった瞬間に体中が火照り出す。

もうニ度と人がいるとこで道明寺とは連絡をとらないと誓った。

最近なかなか更新が思うように行かなくて申し訳ありません。

ペースが落ちてるというよりも、もうすぐ子供の春休みということで時間が拘束されるので、

作品の書き貯めを行っているのです。

1日数話のUPより毎日新しいお話が読めるようにと考えています。

今までの数話UPのペースに戻るのは春休み明けだと思っていただけたらいいでしょうか。

しばし御辛抱お願いいたします

拍手コメント返礼

mi様

これで司の仕事の能率はあがることでしょう。

もしかしてこれを狙っていたのかな西田さん・・・。

なおピン様

温かいお言葉ありがとうございます。

更新しないと落ち着かなくて(笑)

ほとんど日記みたいな感じになってます。

あっ・・・でも日記は3日坊主でした(^_^;)