秘書西田の坊ちゃん観察日記 21(white day side story)
このお話はSt. Day 分岐したお話「white day side story」のお話になります。
*「西田、俺の結婚が早まるかもしれない」
3月初旬の温かな昼下がり。
久しぶりに見た坊ちゃんの満面の笑み。
「つくし様が結婚したいとでもおっしゃったんですか?」
「いや、そうじゃねぇ、近いうちに牧野からそう言うかもな」
予測?
願望?
切望?
結婚しなければ行けない状況を無理やり作った?
それはそれで特に問題になるものではない。
重大事件に思えるのはつくし様くらいのものか。
「それは喜ばしいことで」
一応そう返事をした。
機嫌のいい坊ちゃんをわざわざ怒らせることもないことなのだから。
「今日の予定です」
ファイルをデスクの上に置いて踵を返す。
その話題には興味がないと言う様に・・・。
「聞かないのか?」
「何をですか?」
「結婚の理由」
「相手がつくし様なら問題ないのでは?」
「牧野以外に誰と結婚するって言うんだよ」
不機嫌に尖る口元。
それもすぐに緩む。
「だったら、おめでとうございます」
「だから聞けってッ」
喋りたい様子でうずうずしてるのが手に取るように分かる。
可愛いものだ。
気が付いてるのに気が付かないふり。
最近私も意地悪くなった事を自負。
「ご結婚が早まる理由をお教えいただきたい」
大体の予想はついていながら仕方なく言葉を発する。
「牧野がなぁ」
牧野と発言したでけで坊ちゃんの頬が落ちた。
「妊娠したかも」
『妊娠したかも』と『妊娠した』の違いは坊ちゃんに有るのかどうかそれが肝心です。
「今の段階はかも? なのですね」
「ああ」
「事実ならお腹の目立たないうちにご結婚というところでしょう」
「はっきりしてからお知らせください」
頭を下げて総務室を退出しようとして脚を止めた。
私の中のここ数カ月の坊ちゃんのスケジュールデーターをはじき出す。
「つかぬことをお伺いします」
「なんだ?」
「つくし様と坊ちゃんが長い時間会われていたのは2月14日が今年最初だった記憶があるのですが?」
「そうだったかもしれない」
バレンタインの日を開けろとの強烈な意思表示。
1月は無理やり仕事を詰め込んだのだからそのような時間は確保できなかったはず。
その前に妊娠したのであれば今頃はお二人は結婚式が終わってます。
今日までの坊ちゃんの機嫌度を総評しても、バレンタインの後の坊ちゃんの機嫌の良さは格別で、
それを意味するものは自ずと察知できるといものです。
坊ちゃんの機嫌のもとはつくし様しかあり得ないのですから。
「坊ちゃん、今はまだ3月になったばかりですよ」
「それがどうした?」
「まだ妊娠が分かる時期ではないと思うのですが?」
「だから、『かも』ッて言ってるだろう」
つくし様は妊娠を盾に結婚を迫る様なタイプではない。
どちらかというと坊ちゃんの方が妊娠させて結婚を望みそうだ。
しばらくは機嫌いいままの状況を維持できるのも悪くない。
相変わらず浮かれたまんまの坊ちゃんを残して部屋を後にした。
「・・・西田、結婚止めだ」
落胆気味に書類に落とす視線も虚ろに見える。
2週間の持続の機嫌のよさに感謝。
ここ数日の仕事の遅れを補うには十分すぎる蓄積量。
「ぼっちゃん、しっかりとつくし様の意思を確認してから行動して下さい」
「無理強いは嫌われますよ」
どうして知ってるんだとでもいう様な驚きの表情をぼっちゃんが私に向ける。
表情は変えずに心の中でにっこりとほほ笑んだ。
久々の西田さん日記です。
ち**様のリクエストにおこたえしてUPしてみました。
あとのリクエストはつくしサイドのお話と二人を見守る神様?いるのかな?(^_^;)