souvenir に心をこめて 1(抱きしめあえる夜だから side story)

抱きしめあえる夜だから お土産編のお話第2段です。

第1段 秘書西田の坊ちゃん観察日記 13 を読んでからお楽しみください。

 *

「何がいいかな?」

「何って?」

「タマ先輩に花沢類に西門さん、美作さん」

名詞の後にド♪ ミ♪ ソ♪つけて声が出てんぞッ。

振り返って見せる笑顔。

付き合ってる俺もまんざら悪い気はしない。

「あっ!大事な人忘れてた」

しまった!という様な顔で考え込むつくし。

最後に寄ったショッピングセンター。

2時間前から俺はつくしの土産の荷物持ちに徹してる。

会社の同僚に牧野の家族。

屋敷の使用人に運転手とSP。

次から次に気が回るものだと感心していた。

「お母様は何がいいかな?」

そんなこと俺に聞くなッ!

何やったってよろこばねぇよ。

西田を脅して2週間も休みを取ったなんてばれたら半年は自由にさせてもらなくなる。

「お袋にはこの旅行のことは内緒だ、いいな」

なんでと疑問符付けたつくしが俺の迫力に押され気味に黙り込んだ。

そして・・・

予想がついた様にニンマリと笑顔をつくる。

「もしかして・・・帰って、ママにばれたらやばいのかなぁ」

何がママだっ。

俺で遊ぶな。

「やばくはねぇよ。俺の休みがなくなったら淋しいのはお前だろう」

手を伸ばした俺から逃げる様につくしが数歩前に歩いた。

逃げられた。

どうも両手に下げた紙袋が邪魔なんだ。

いつもの瞬発力は発揮できない。

大事な人って・・・・誰だ?

あと・・・誰を忘れてる?

思い浮かばねぇーッ。

つくしに手を引っ張られて売り場を移動する。

目に飛び込む男性のマネキン。

紳士物のフロアー。

もしかして俺!?

つくしにとって大事なのは俺だよな?

俺しかいねぇーッ。

俺がつくしにもらったのってストラップだけだもんな。

新婚旅行の記念にとまた何か選ぶのだろうか。

つくしの手には2~3種類のネクタイ。

俺がネクタイを絞めるのをつくしが手伝いながら「あなたに首ったけ」なんて言われたら1日中機嫌良く仕事ができそうだぞ。

俺の好みはそのストライプの右手のやつだ。

左端に並んでるのも渋めでいいぞ。

なんでも似合うのも困りものだよな。

真剣にあれこれと悩んでるつくしの横顔を見つめてほころぶ頬。

ようやく一つの柄のネクタイに視線を止めた。

紺のシルクの生地に赤い色で縁取られたハートの模様。

ハートのネクタイって・・・

つくしが俺にベタぼれだと宣伝して歩いてるようなもんだぞ。

照れちまいそうだ。

「これどうかな?」

俺の胸元にネクタイをあてて考え込む仕草。

「いいんじゃねぇ」

テンション高めに発する声。

喜びが出ちまってる。

「派手じゃないよね?」

地味なくらいだと思うけど・・・。

「西田さん喜んでくれるかな」

西田・・・

西田!

にしーーーーーだーーーーッ!

目が飛び出るくらい驚いてる。

俺のじゃねぇのか?

そのハートは西田のかよッ!

西田にハートってどんな組み合わせだ。

似合わねぇぞッ。

これはけして嫉妬じゃない。

類になんて言われたら容赦なくネクタイの原形をとどめないただの布ッきれになるだろうけどなッ。

つくしからのネクタイ受け取った時の西田の反応・・・

どんなんだ?

無表情がしかめっ面に変わるかも。

見てみてぇ~

落胆をその楽しみが上回った。