第13話 愛してると言わせたい 26
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一瞬息が止まるかと思った。
抱きしめられて高鳴る鼓動。
見あげた私の顎をそっとスマートな指先が持ち上げる。
唇が温もりに包まれた。
「ダ・・・メ・・・」
唇の中の言葉が、道明寺の熱い吐息で溶けて消えていく。
「んっ……」
熱い熱を伝える口づけは官能的で体中が心音に包まれて立ってられなくなりそうだ。
力の抜けそうな身体を力強い腕に預けてる。
すべてを投げ出すように・・・。
道明寺の欲しているものがなんなのか・・・
そんなこと解りきっている。
が・・・
記憶の欠けてる私には不安と少しの怖さが生まれてる。
わずかに動く指先が道明寺の手のひらの動きを押さえた。
押し返そうと、指先に力を込めても、道明寺はビクともしない。
緊張でギュッと閉じた唇の間を、道明寺の舌が割り入った。
私の手のひらを道明寺の指先が包み込む。
握ってくれた手のひらはすごくあったかくて安心させるように優しさが溶け込んできた。
執拗に追い求めてくるその舌の熱さに、眩暈を覚える。
その口付けは優しくて、それだけでまた意識が遠くなった。
「嫌ならいくらでも殴るなり、蹴るなり、外に放り出すなりしてくれてもいい」
首筋を伝う唇から聞こえる声。
抵抗のすべなんてなくしてしまってる。
どうしたら拒むことができるのだろう。
そんなことできるはずがない。
胸のふくらみを優しく包む手のひら。
まるで壊れ物にでも触れるように。
その手の優しさが・・・優しすぎるから泣きたくなる。
「どう……みょう……」
いつの間にかベットに横たえられた身体。
頭が真っ白くなって・・・
唇が・・・
体の奥から痺れて上手くあいつの名前を呼ぶことが出来ない。
優しくなぞる指先は乳房に触れ、軽く弾かれた瞬間に最後の理性まで崩れてく。
ダイレクトに伝わる熱に何も考えられなくなった。
「・・・キ・・ス・・して」
いつもの自分の声とはあまりに遠い甘えた声。
強さなんて微塵もなく弱弱しく哀願する。
道明寺を受け入れた瞬間に胸の奥から厚いものがこみ上げてくる。
誰よりも愛してる。
声を発せないままに背中に回した腕に力をこめた。
ゆるゆると瞼を開けた先には朝日がわずかなカーテンの隙間から差し込み柔らかな光を作ってる。
どのくらいの時間この腕の中にいたのか・・・
10本の指を折って考えるうちにたまらなくはずかしくなった。
顔を近づけて、道明寺の寝顔を覗き込むように見つめた。
改めてみてもやっぱり綺麗な顔をしている。
ニキビ一つない綺麗な肌に、少しだけ悔しい気持ちになった。
女の自分よりも綺麗な肌なんてずるい。
卵みたいだよな。
ツンツンと指先で道明寺の頬を突付いた。
その瞬間、その手が強く握られてビクッと無意識に身体が反射した。
「ぎゃあ!」
お世辞にも色っぽいとは言いがたい悲鳴を上げてたじろぐ。
「大丈夫だったか?」
寝起きでかすかにすれた様なハスキーボイス。
いつ聞いても好きなんだよなこの声。
私しか聞いたことのないよね。
少しの優越感。
「大丈夫ってなにが?」
言わせるのか?みたいな驚きの色が道明寺の瞳にかすかに浮かんでる。
「・・・あぁ・・まあ・・・いつものことだし・・・」
「いつもの事って!お前」
眼を見開いた驚いた表情にこっちの方が驚くよ。
「ほら・・・会えない時間が長いといつもこんなもんでしょう?」
言いながら熱くなる頬。
ったく何を言わせるのよ。
「思い出したのか・・・・?」
意外そうな顔が目の前に迫る。
「なにを?」
その瞳をじっと見つめかえした。
「お前今いくつだ?」
「恋人の年も忘れたの?」
アホらしくなって相手するのもつかれる気分。
「もうすぐ22に・・・」
言い終わらぬうちに押し倒された。
「ったく、抱いて思いだせるんなら早く押し倒しておけばよかった」
ブチュッと押し付けられた唇がこれ以上にないくらいにやさしくほほ笑んだ。
END
あ~朝から何を考えてるのか。
この手の場面のお話はなかなか筆が進みません。
やっぱり苦手だな(^_^;)
後で書き直すパターンありです。
最後はこんな展開で♪
記憶を思いだすのはどうやって?
みなさんの予想はどうだったでしょうか?
いろいろ悩みながらこんな顛末になってしまいました。
お付き合いありがとうございました。
「あっまだ面と向かって司君愛してるって言われてない・・・」