木漏れ日の下で 27
*背中合わせの距離。
それは思った以上に遠い。
視覚が・・・
聴覚が・・・
触覚が・・・
嗅覚、味覚までもが混ざり合って、すべての五感が背中に集中している様だ。
わずかな動きにもビクッっと心が揺らぐ。
ゆらっと身体をつくしが起こした。
気にならないそぶりで視線だけを斜め上部の方向にずらす。
見えるはずもない。
はーぁと深く聞こえる溜息。
べットの端に腰かけてると揺らいだベットの振動が俺に知らせる。
思わず寝返らせる身体。
開いた瞼の先でつくしの視線とぶつかった。
「シャワー浴びるけど・・・」
え?
おっ?
仲直りに一緒にとか?
言われたら速攻押し倒す!
「見ないでよね」
ガラガラと希望は音を立ててて崩れてく。
俺を置き去りにしたまんま落ち込ませた原因は浴室へと向かってる。
俺に向けられてる背中には怒りより淋しさを漂わせてんだけど。
「なぁ、俺・・・」
「お前をそんなに怒らせることやったか?」
わずかに身体を起こして、肩肘付いた手のひらで頭を支えながらつくしを見つめる。
「自覚ないの?」
くるっと振り向いた顔が呆れたようにつぶやいた。
「兄って言われて自分で思った以上にショックだったんだから」
責めるというより甘えを含んだ愚痴の様に聞こえる。
「結婚前はべたべたで、パーティーでは必要以上に婚約者だって強調してた」
「結婚した途端私のこと隠した」
泣きそうに潤む目元。
「別に隠してねぇよ」
責められるよりキツイとズキッと心が音を立てる。
「あれは姉貴がお前のことを妹って紹介して回るから変なことになったんだぞ」
「俺は自分から一言もお前を妹なんて言ってないからな」
「訂正しなかったじゃん」
それは・・・
言いかけた言葉を飲み込んだ。
仕事相手の心情を考慮した気持ちがわずかに動いていたことを否定できない。
今この場で否定するほど大したことではないと思った俺。
お前をそんなに傷つくなんて思いもよらなかった。
何を言っても言い訳にしかなんないよな。
ただ、一番言えなかった理由は・・・
弱さを見せたくない相手の前で、つくしを妻だと紹介し直したら、緊張が溶けてみっともない表情に崩しそうだったこと。
つくしが側にいるだけで俺の心の中がすべて顔に出てしまう。
仕事相手の前で殻をかぶってしまってた。
「どうすれば許す?」
大きく見開いたまんまの瞳が俺を見据える。
「許すって言葉知ってたんだ?」
俺にも意外だ。
お前にしかいわねぇけどな。
「考えとく」
くるっと背中を向けてそのまま再度浴室に向かうつくし。
機嫌が上向いた様に肩が上下に揺れる。
このまま一緒に浴室ついていっても大丈夫?
思えるけど・・・。
誘ってるようにも思えるし・・・。
そのほうがグダグダ言うより早くねぇか?
そんな気分がわき上がった。
もう一息!
このまま襲ったら・・・
どっちに転ぶ?
追い出されて撃沈!
そのまま楽しいたっぷりした方向へ~
どっちかな~
そのあとにジム君の問いの意味がわかる?
伸ばしてすいません(^_^;)