木漏れ日の下で 26

 *

ロスについてからまだゆっくり話してもいない。

俺を抱きしめてたのは姉貴だし。

ロスではたっぷり72時間の時間があるはずだったんじゃないのか?

西田!

愚痴りたい相手は私のせいじゃないとでも言いたげな澄ました顔で俺の後ろに控えてる。

姉貴に連れまわされるつくしを取り戻すこともできず、気がつけば西田に連れまわされる俺。

結局仕事かよ。

「椿さまに今満足していただいたほうが、後でお二人の時間がゆっくり持てるかと・・・」

耳元で告げる西田に半分乗せられた様な気もする。

が・・・

ここで失態見せるほど気分のままに行動するほどガキじゃない。

しっかり道明寺の代表としての責任が俺を縛る。

まあ姉貴がついてればつくしも大丈夫だと自分に言い聞かせてる俺は過保護気味かもしれない。

姉貴にもまかせたくねぇつーのが本音だけどな。

コンタクトを取りたかった相手と言われれば動かないわけにいかなかった。

あいさつすれば表面的には穏やかな会話が続く。

内情は駆け引き。

一瞬のすきも見せられない相手。

なんとか3日後の約束を取り付けて握手を交わす。

休みの後は仕事かよ。

西田のやつ仕組んだんじゃねぇよな?

握手を交わしながらつくしの姿を探す。

若い男に笑顔で応えるつくし。

そのそばに姉貴の姿は見えない。

何やってんだ姉貴のやつ。

つくし一人にしてたらあぶねーぞ!

照れくさそうに笑ってやたら楽しそうに映る。

俺のこと忘れてんじゃねよな?

「あれは私の一人息子です」

俺の視線の先をたどりながら商談の相手がにこやかな声を発してた。

「道明寺さんに妹さんがおられたとは初耳でした」

え?

妹?

姉貴しかいねぇけど?

聞き間違いじゃねえよな?

「まあ、突然兄弟が増えることもよくある話ですから驚きはしませんが」

それは俺の方が驚く。

「先ほどお姉さんから妹ですと紹介されましたから」

呆けた表情のままの俺の肩をポンとおッさんにたたかれた。

姉貴にとっちゃつくしはたしかに妹だ。

妹の前に義理がつく。

俺にとっちゃ妻だぞ。

つくしの方向に歩きだすおっさんの後ろをついていくように慌てて駆けよる。

違うと訂正する間を失った。

「息子が何か悪さをしませんでたか?」

何言われたかわかんない表情のつくしがおッさんの差し出した手を慌てて握って握手をかわす。

俺と視線があった途端にサッと血の気が引く様に顔の色がなくなった。

「何してんだ?」

つくしを責める様に響く冷淡な声。

「何って・・・別に・・・」

「ジム君が相手してくれてた」

俺に気に障らないように言葉を探すつくし。

何言われてもこの状態が一番に気に障る。

「ジム君高校生だからね」

慌てた様につくしが付け足した。

ガキでも男は男だ。

高校生なら女の扱いも知ってるぞ。

「ジム、こちらはこのお嬢さんのお兄さんだ」

おッさんがガキに俺を勝手に紹介。

つくしが「なに?」みたいな顔で俺を見る。

見るッーか睨んでねーか?

「いつ私に兄ができたの?」

そんくらいの英会話はわかんのか。

腹立てるのはお前じゃなくて俺の方だ。

お前の機嫌をとる気もない。

「俺が言ったんじゃねーよ」

「おっさんが勝手に勘違いしただけだろうが」

「訂正しないの?」

訂正で来るような状況じゃねーよ。

つーか訂正する暇なかったんだ。

それにお前のこともそのうちだれかが教えるよ。

俺が結婚したのは皆知ってるはずだ。

嫁さん同伴じゃなく日本に置いてきてるのは周知の事実。

こっちで夫婦同伴じゃないのは目立つんだよ。

最初からお前と連れ立ってればこんなややっこしことはなかったはずだ。

姉貴の責任じゃねぇの?

「必要ねえだろう」

「必要ないってなに?」

攻めの態勢になったつくしが一気に気を吐く。

「こいつらと会うこと、もうねえだろうし」

気を押し返す様に腹に力を入れ直す。

「そんな問題なの?」

「問題あるのか?」

近づきあう顔。

キスできる距離で睨み会う展開。

このままねじ込むか?

「最低」

背伸びして迫っていた顔が後方にずれて深い溜息。

上等じゃねぇかッ!

俺の存在忘れたように男に笑顔向けてたのはお前だよな。

無性に盛り上がる怒り。

「最低なのはお前だろう!」

「ナンパされてんじゃねぇよ。浮気するな」

「浮気って!話してただけでしょうが!」

一発触発な感じの日本語のマシンガントーク

周りの視線に気がついて黙り込む。

「失礼します」

おッさん親子に最低限のあいさつ。

これ以上しゃべると何するかわかんねぇ気分。

お前が誰のものか教えてやるよ。

「来い!」

つくしの手首を握って大股で歩き出た。

「痛いって」

「ヤダ―」

逃すか。

にぎやかな会場から俺達の部屋へと戻った。

ベットの上につくしを投げ出す。

ベットがギシッと揺らいで軋む。

「何よ!」

強気な視線はさっきよりメラッとして俺を睨みつける。

ドレスの裾は、わずかにはだけて白い足先を艶めかしく映し出す。

「な・・なにネクタイ緩めてんの!」

「上着も脱ぐなッ」

上乗り気味になった俺の下でくるっと拒否するようにうつぶせの態勢をとられた。

肩に置いた指の先でピクッと小さく震える。

「きょ・・だい、お兄ちゃんなら変なことしないでよね!」

へ・・・

マジで言ってんのか?

上を向かせようとした指の力が抜けた。

「何もしないからね」

「まだ筋肉が痛いし・・・」

全身にギュッと力を入れて一回り身体を小さくした頑なな態度。

「勝手にしろ!」

ムカッとしたままベット半分に身体を滑り込ませて背中を向けた。

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b-moka

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