木漏れ日の下で 15

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-From 1 -

「なにしてるの?」

「なにって、玉ねぎ切れって言ったのはお前だろう?」

「皮を剥かないの?」

「皮って・・・玉ねぎなんて全部皮みたいのものじゃねぇのか?」

「玉ねぎの生態は知ってるんだ?」

「俺をアホみたいな言うな」

「茶色の皮は食べないんだけど・・・」

手に玉ねぎ1個握りしめての大人の会話。

材料のをどこが食べられてどこをすてるのか、そこからの指導が必要だった。

「玉ねぎはみじん切りだからね」

道明寺には一番簡単な切り方だと私は思う。

切り刻めばいいだけだからね。

「美人・・・切り?」

「み・じ・ん!」

道明寺の持っていた玉ねぎと包丁を「貸して」と無理やり奪い取る。

大まかな大きさに玉ねぎを切って後は包丁の刃をポンと当てるだけの状態にして包丁を渡した。

「こんな感じで切り刻むだけだからね」

「分かった」

しばらくして「おもしれっ」と横から上がる声。

玉ねぎを切りきざむだけの単純作業に夢中になる道明寺は子供の様に無邪気に笑ってる。

結局道明寺がしたことって玉ねぎを切り刻んだだけだった。

あとはフライパンに私の言われた順番に材料を投げ込む。

指示するたびに「おっ!」と焦り気味に上がる声。

跳ねる油に「テッ」と時々顔をしかめる道明寺。

火のそばで熱い思いをしてるのは私の方なのだけど。

塩コショウで味を調えて出来上がったロブスターのエビチャーハン。

その横には野菜スープ。

「いつの間に作ったんだ」と不思議そうに道明寺が覗き込む。

「道明寺がロブスターを引きちぎってる間にねッ」

悪戯っぽく浮かぶ笑み。

料理の時間はなんだかんだと言いながらスムーズに進んで1時間とかからなかった。

程よいお腹の減り具合と言ったところか。

料理を運んで向かい合って座るテーブル。

料理からセッティングまで道明寺と二人でやったなんてはじめての経験。

テーブルにスプーンを並べる道明寺が、「夕食がスプーンだけってマジに初めて」とつぶやく。

その声もやけに楽しそうに聞こえる。

「俺様が作ったんだから味わって食えよ」

ほとんど作ったの私なんだけど・・・。

全部自分で一人でやった様な大きな態度。

それがやけにおかしくて自然と笑顔になった。

道明寺がチャーハンをスプーンで口に運ぶ。

「俺、料理の才能あんじゃねぇ?」

玉ねぎ刻んで私に料理を言われたとおり投げ込んだけで料理をしたことになるのだろうか?

そこまで自信が持てる道明寺は天下無敵だよな。

その道明寺に答える様に「料理の才能あるかもね」と笑った。

「俺様が作った料理食べられないって言った言葉は撤回するよな?」

道明寺が料理を作ると言いだした発端は私のそんな言葉の何気ないやりとりだった。

「食べられました。すいません」

反論する気はさらさらなく道明寺の機嫌のよさが私の気持ちも包容力を大きくさせている。

「言葉だけじゃたんねぇよ」

「えっ?なに?」

思わず椅子から腰を浮かせる。

「態度で示してもらわねぇーとッ」

「昨日も俺をほったらかしでお前は寝ちまったからな」

いじわるっぽく道明寺の口元が口角を上げる。

鼻息も荒く見える気がした。

返事をするよりさきに道明寺の顔が私の目の前に張り付いた。

-From 2 -

「息・・・できない」

離した唇の先から途切れがちの声。

「それじゃまた人工呼吸しねぇとな」

突然過ぎると顔を横にそむけられた。

「突然でもねぇぞ」

「昨日からお預け食ってるし」

逃がさない様にいすに縛り付ける感じに背もたれごと腕を巻き付けた。

「まだ食べ終わってない」

俺を見上げるつくしの瞳は困った様な色合いをにじませる。

その表情がおれのハートに火をつけるんだけど。

導火線は確実に短くなってきてるぞ。

「片付けもしないと」

「はぁ?そんなの後で使用人がやるぞ!」

「でも今日は皆いないんでしょう?」

二人の時間を邪魔されたくないと全員帰らせたとつくしに自慢げに告げたばっかりだった。

このままにはしておけないと一歩も引かない意地を見せるつくし。

こうなったらあと数分?数十分?のお預けは確実だ。

言い出したら聞かねぇ頑固な女。

情けねぇことにそこにも惚れている。

「私が片づけるからそれまでおとなしくしといて」

「俺も手伝う」

「いいよ、道明寺が手伝うと仕事増やされそうだもん」

シャワーでも浴びて部屋で待っててくれたらいいと言うつくしの言葉にときめく俺。

「おとなしくシャワーを浴びてるから早く終わらせろよ」

一緒に連れ込みたい衝動を抑えて、さきに部屋へと戻った。

我慢させられた分、後はしらねぇからな。

そんな想いを胸に一人で浴室へと入る。

昨日はこの浴槽で二人でじゃれ合っていたんだよな。

初めて浴槽が狭いのに感謝した俺。

二人で入るには小さくて俺の上に乗っかってたつくし。

やわらかなちょうどいいあいつの重みを確かめる様に抱きしめていた。

あのままやっちまえばよかった。

後悔先に立たずとはこのことか。

そうだよ!やるときやらねぇで失敗しのは1度や2度じゃねぇぞ!

浴槽から濡れたまま飛び出して素肌の上にバスローブを羽織って浴室から部屋に戻る。

まだ戻ってねぇか。

このままキッチンまで行って無理やり抱き上げて連れてくるかと部屋をでた。

キッチンにもダイニングにもいやしねぇ!

どこ行った?

行き違い?

すれ違ってねよな?

俺達の部屋まで通る道は1本しかない。

考えられるのは俺が部屋を飛び出すときあいつは部屋にいたということになる。

それならどうして俺を起きかけてこない?

NYについた時みたいに隠れて俺をまた脅かそうとか考えてるのか?

同じ手はニ度もくわねぇよ。

そっと足音を忍ばせて部屋に戻る。

ゆっくりとドアノブを回して開けた。

目の前に飛びこむ3人掛けのソファー。

その左側にちょこんと腰を下ろすつくしを見つけた。

脅かすつもりは無かったようだ。

「終わったんなら教えろよ」

ぼやきながらつくしに歩み寄る。

反応がねぇ・・・。

それよりスースーと口元から漏れる息の音。

完全にソファーにもたれかかってる。

寝てんじゃねーよッ。

寝不足気味は俺の方だぞ!

お前を抱くことが興奮剤になって起きてる状態なんだぞ俺!

「起きろーーーーーーッ」

耳元で怒鳴って、両肩を力いっぱいに両手で揺り動かしていた。

ち**様のコメントで『お料理は「後片付けまで」ですヨ。』

この言葉を見つけてからグフッと思ったわたしは、つい司君を焦らせてしまってます。

無理やり起こしてここからが本番!

なるのか?

拍手コメント返礼

b-moka

西田さんのフォローとつくしが司の扱い方さえ間違わなければ道明寺家は安泰です。

セレブはチャーハンの材料も豪華ですよね。

マリエ様

俺様GO!でどこまで行くでしょうか(笑)