木漏れ日の下で 30

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-From 1 -

「Good morning」

明るくさわやかな笑顔。

今にもつくしに抱きつきそうなジムの勢いに片手を伸ばしてつくしを背中に隠す。

「初々しくていいわね」

つくしより姉貴の方が楽しそうなのは気のせいか。

「司、怖い顔しないの」

軽く肘で突かれた。

「For what was done did you come?」

俺の問いかけにつくしに会いにきたとは当たり前過ぎるジムの返答。

聞いた俺もバカだ。

静かなところで二人で話したいって俺を通り越して俺の後ろから顔をのぞかせてるつくしに話かけている。

ジムの瞳の中にはつくししか映ってないらしい。

そんなの許せるはずもない。

「つくしちゃん、隣の部屋使ったら?」

俺が口を開く前に姉貴が喋り出す。

姉貴がジムとつくしの中をとる様に動いた。

「おい!ダメに決まってるだろう!」

叫ぶ俺にじろりと姉貴が視線を投げる。

それは・・・お袋より迫力がある。

負けじとグッと腹に力を入れてつくしの腕を握った。

「行かせる訳ねえだろう」

「ここで話せばすむことだ。つくしは英語まだそんなに理解できてねえし通訳いたほうがいいだろうが」

「司じゃ冷静に通訳任せられないわよ」

ため息交じりに響く姉貴の声。

「それに司が決めることじゃないでしょう。ジムはつくしちゃんに会いに来たんだから」

「つくしちゃんどうする?」

主導権は姉貴が握ったままだ。

「道明寺がいると冷静に話せそうもないですよね・・・」

遠慮がちに小さくなる声。

「お前こいつと二人っきりになりたいのか!?」

自分でも頬が引きつってくるのが分かる。

「誰もそんなこと言ってないでしょう!」

「ただ話を聞く義務はあると思うから」

「だったら俺がいてもいいだろう」

「道明寺は私が英語を理解する前になにかと行動を起こしそうで危ない気がする」

クッ・・・

ジムがつくしに告白でもしたものなら速攻でぶん殴りそうだ。

英語を理解するより道明寺の感情を読み取るのに神経使いそうだとつくしが顔をしかめた。

「兄妹げんかはやめてください」

「つくしを責めるな」

ジムの声につくしとの会話が途切れた。

「兄妹じゃねぇっ」

「こいつは俺の妻だ!」

つくしを腕の中に抱きしめながら

「Carrying out is my wife」

英語で言いなおした。

「Still, it doesn't care」

・・・・えッ・・・

気にならないって言わなかったか?

こいつ?

聞き間違いじゃないと姉貴とつくしの眼を見開いたまんまの表情が教えてる。

ジムの訪問の理由はつくしへの告白じゃないってこと・・・・か?

それとも結婚しててもかまわないとか?

ますます二人っきりになんて出来るはずねぇーーーーーッ。

頭がこんがらがってきた。