木漏れ日の下で 29
*-From 1 -
まぶしい光が閉じた瞼の上からも感じる。
わずかにさえずる鳥の声。
もう朝か・・・。
頭は起きているのに・・・
身体が・・・
細胞が・・・まだ夢の中から抜け出せずにいる。
けだるい感覚の中にこのままず~と身を置いときたい願望。
明るさをさえぎる様に布団を頭からかぶった。
「こら!起きろ!」
安眠を妨げる様にシーツごと布団を奪われる。
「もう朝だよ」
膝を抱えて丸まった俺の上に四つん這いのつくし。
逆光で表情は見えないが御機嫌だと高音気味の声が教えてくれる。
夫を組み敷いてる妻の図。
・・・なら・・・
うれしけどな。
昨日の余韻全然残ってねぇ。
まぶしく注ぎ込む太陽の光をさえぎる様に目を細める。
「分かってるよッ」
ぼそっと言って肩肘ついて身体をわずかに起こす。
その動きに合わせる様につくしが俺の膝の上に尻をのせた。
膝の上に感じる弾力。
まあ、悪くはない。
「もっと、優しい起こし方できねぇの?」
「優しく起こしたらやばいじゃん」
顔だけ俺の鼻先にくっ付く様な距離。
「なにが?」
鼻先でクスッと小さく笑うつくし。
「このままベットで過ごしたいとかわがまま言ってベットに引きづり込まれたらいやだもん」
悪戯っぽく笑った顔は俺の目の前1センチ。
「引きずり込まれてたいんじゃねえのか?」
俺の身体を挟むようにベットの上に置かれた腕。
その一つを握って引き寄せた。
「キャーッ」
俺の倒れ込むつくしを抱きしめてそのまま反転。
妻を組み敷く夫の図の出来上がり。
やっぱこれが正解だよな。
「ダメだからね」
慌てた様に俺の下から這い出ようとするつくしをそのまんま背中から抱きしめた。
「10数えるまでに逃げられなければホールドアウト!だからな」
「ホールドアウトって・・・。」
「そんなの無理に決まってるじゃん」
必死な顔が俺を睨む。
そして泣きそうな顔になった。
「お姉さんが待ってるんだから」
「姉貴?」
「朝食一緒に摂ろうって」
「だからお願い」
潤んだ様に見つめる瞳。
哀願されたらいつもの強引さも威力をなくす。
「アッ!」
「くそっ!」
つくしを閉じ込めていた腕を放してベットに大の字になって天井をめがけて叫んだ。
昨日までで姉貴のやつ満足したんじゃねえのか?
今日はつくしを貸せって言っても貸せるわけがない。
俺の休みも後2日。
「今、自由にしてやる代わりに姉貴に付き合うのも朝食だけだからな」
「それが住んだら一切邪魔ものなしで二人で過ごす」
「命令だ」
ベットから起き上がって反論は聞かない態度を見せる。
「もうちょっと優しく言えないかな?」
・・・・・?
優しくってこの状態で言えるはずねぇだろう!
「一緒にいたいって言ってくれるだけでうれしいんだけど・・・」
目の前で照れてわずかに染まる頬。
先に行ってるからとそそくさと逃げる様に部屋を出て行った。
おい!
まて!
もうちょっと!
抱きしめたくなった気分を植え付けてそのままか?
つくしを自由にするの早まった。
姉貴のやつわざと邪魔してんじゃねぇよな?
姉貴のバカ野郎ーーーーー。
一度面と向かって言ってみてぇーーーッ
*-From 2 -
なんのことはなかった。
朝食も明るい感じで3人で向き合う。
これも昨晩つくしと仲よく出来た結果の付録見てぇーなもんか。
すかさず「仲直りできた見たいね」と姉貴がほほ笑む。
俺達のケンカの状況聞いて理解してるのはあの場では姉貴くらいのものだ。
後西田か・・・。
その姉貴が「つくしちゃんが怒るの当たり前だからね」と俺を責める。
今さらむしかえすなッーの。
発端は姉貴だろうがぁ。
強く攻めたい気持ちを押し殺してほとんど弱気でつぶやいた。
「責任は姉貴にあるんだろう、妹なんて紹介するから」
「まさか本当の妹と思う人がいるとは思わなかった」とあけっらかんと悪びれねぇ姉貴。
「あんたが結婚してるのは公なのにね」
何でだろうなんて口ずさむように軽めにつぶやく。
昨日の場合俺じゃなくつくしをエスコートしてたのが姉貴だからだろうがぁ!
最初からつくしを俺のもとに返してくれてさえいればそんな勘違いは起きなかったはずだ。
それにつくしはどこかでおやじが作った子供みたいな二アンスがみえていた。
お袋がいたらきっと苦笑いしていたことだろう。
俺がしっかりつくしをエスコートしてたら「妻です」って紹介できるぞ!
今さら妻の言葉でニヤつく俺ってどうなんだ?
アホらしい。
「つくしちゃん楽しかったわ」
「今日は司に返すわね」
朝食を終えてすんなり姉貴が引きさがってホッとする俺。
「トントン」とドアをノックする音が部屋に響く。
「つくし様にお客様です」
使用人の言葉に3人がきょとんと顔を見合わせた。
つくしにこのロスで知り合いがいるわけないのだから。
「誰だ?」
「ヘンダーソン様の御子息がお見えです」
「ヘンダーソンって、誰?」
使用人の言葉に怪訝な顔をつくしが俺に向ける。
ヘンダーソン・・・
ヘンダーソンって昨日俺が仕事していた相手だ。
と言うことは・・・
あのガキだ!
「つくしチャン、ジム君よ」
「ジム!」
姉貴の声に怪訝な顔が?マークに変わって困惑気味に歪む。
「お前・・・何か約束したのか?」
「えっ!」
「してないよッ!」
大きくブルブルと左右に首を振る。
その動作が「あーーーーーッ」と言う声とともに止まった。
「・・・・したかも・・・知れない・・・」
最後は聞き取れねぇくらいの消え入りそうな声。
「あっ!何を約束した!」
俺の声に姉貴までも両手で耳を押さえこんでる。
「それがね・・・何を約束したかわかんないんだよね」
「分かんないままにYESって答えたことになってたみたいで・・・」
「何質問されたかわかんなくてYESって答えたのか!?」
ほとんどつくしの首を締めあげる一歩手前まで詰め寄った。
「付き合ってとか、デートの誘いだったらどうすんだよ」
それはないってのんきに手を左右に軽く振る。
こいつはアホだ。
警戒心がないにもほどがある。
ナンパされてても気がつかないうぶな奴。
普通パーティのようなオープンな場所で男女で過ごして約束するって仕事じゃねぇぞ。
相手はつくしのこと年下だと思ってる。
確立的には90%いってるんじゃねぇか?
つくしの無邪気な顔を見てたら怒る気にもなれねぇ。
風船から空気が抜けていくように怒りが失われていく虚脱感。
無視しろ!
屋敷に入れるな!
つくしに会わせねぇ----ーッ!
言いたい気持ちを仕事のつながりを持たなきゃならない相手だと押し殺す。
面会なんて入れなきゃよかった。
今までならつくしと仕事を天秤にかけたら絶対こいつに傾いてたんだけどな。
恨めしい気持ちでつくしを見る。
「いないとか言って追い返すか」
「ダメに決まってるでしょう。折角来てくれたんだから」
とにかくジムに会わなきゃって顔にまんま張り付けてある。
これでまた二人の時間が削られたと溜息が漏れた。
ジム君の登場まであと一息。
長かったなぁ
本当に司の予想通りか!?
なんにしても司の不機嫌の様相は覆らないと思います。
拍手コメント返礼
b-moka様
実は・・・
私も甘アマよりジム君の方が気になってっるんです(笑)
マリエ様
どんな展開になるのかジム君の存在。
大人の対応じゃ面白くないですよね。← 断定してます!