木漏れ日の下で 33
*新しく誰かの来訪を告げるベル。
「来たっ」
最初に声を発したのはジム。
つーことは来たのはジョンか。
何もここに勢ぞろいしなくてもいいんじゃないか?
外で増えてもややこしさは一緒かとため息が出る。
つくしのそばに集まる男3人。
もう一人集えば日本での類、総二郎、あきらと俺、そしてつくしの構図が出来上がるぞ。
現れたジョンの横にはストレートの金色の髪をなびかせる同じ顔。
そういえばジョンは双子だった。
初めて会ったときは双子の姉貴を相手にしてると思ったらジョンの女装でまんまと騙された。
思い出したくもないつくしが大学卒業前の出来事。
男と知らない俺はつくしに昼間の昼間の観光案内を押しつけた。
あれが事の始まりだった。
後悔しても始まらねぇ過去。
あの時と違うのは今は俺達二人が結婚したということだ。
いまさらつくしを取られるはずがないのに落ち着けないってどれだけ焦ってるんだか。
「つくし、会いたかったわ」
流暢な日本語でつくしに抱きついたのはジョンと同じ顔の女性。
ジョンがつくしに抱きつく様な錯覚。
嫉妬心は心の隅でくすぶってしまってる。
「久しぶりだな」
気にとめてない様な表情をつくってジョンと素知らぬ顔で握手を交わした。
「らしくないね、本当は相当機嫌悪いだろう」
ニコッと女ならコロッといきそうな頬笑み。
癪にさわる。
ジョンのやつわざとジムをけしかけてんじゃねえか?
「姉貴とは初めてだよな」
「どうしてもつくしに会いたいって言うから連れてきた」
ジョンの見つめる視線の先でキャピキャピ気味の会話が耳に届く。
「ジョンにあなたのこと聞いてるから初めて会った気がしないわ」
俺の大事なものを何と言っているのか?
ジョンの姉貴が好意的につくしを受け止めてるつーことはジョンにもつくしの印象はいいはずだ。
「ジョンの言っていた通りほっとけない感じがする」
頬をスリスリ状態で抱きしめられて戸惑ってるつくし。
ほっとけないって感覚は俺にもわかる。
そこに手助けしていいのは俺だけだという前提がある。
でも・・・
つくしの周りっているんだよなぁ。
手出ししたがる奴。
類を筆頭の俺の親友たち。
姉貴にタマに西田、滋に桜子、優紀にここで外国人まで増えてる。
つくしを連れ歩く場所で増殖中。
気が付けは男そっちのけで女3人で話がまとまっている。
とはいってもつくしの意見なんてお構いなしの姉貴が二人。
俺のかなわないタイプ増えたか?
「司、あんたたちは荷物持ちね」
振り返った俺の姉貴がニコッとほほ笑んだ。
アーーーッ!
俺につくし返すって約束忘れてるじゃねーぇッ!
それともわざとか?
つくしを取り返したくても反論も反抗も出来ない。
姉貴に逆らえないのはDNAに刷り込まれてしまってるらしい。
「昼間だけだからな」
夜には返せよと言いたい言葉は胸に押し込む。
女3人と男3人
あり得ない組み合わせで屋敷を後にした。