St. Valentine's Day 1(司 20years)

お待たせしました。

司の 二十歳の誕生日お話から継続するバレンタインのお話です。

1日遅れになりましたがお許しくださいませ♪

 *

「なぁ」

「なに?」

不機嫌そうな返事をして俺を見ない視線。

この前からすっかりこの調子だ。

「いい加減機嫌直せよ」

誕生日の前日まで戻りたい!

本気でそう思い始めている。

「ギャッ!なに!」

こうなれば実力行使。

うだうだしてるなんて俺には似合わない。

背中から両手で牧野の身体を抱きしめる。

腕の中でもがくようにうごめく牧野。

「もうすぐバレンタインだぞ。今年もチョコくれないつもりか?」

耳元でつぶやく俺の声に観念したように牧野の抵抗する動きが止まった。

「去年はチョコもらえないばかりか、お前、俺をふったよな?」

「お前とのバレンタインのいい思い出・・・

まだないんだけど?」

俺の腕を返事の代わりとでも言う様にギュッと牧野の指先がつかむ。

「今年はチョコ・・・

あげる」

指先の色が白く変わる代わりにうつむく牧野の頬は桃色に染まってる。

楽しみにしてる。

言葉の代わりにもう一度牧野の身体を抱きしめた。

 

 *

「どこ行くつもり?」

車の助手席に牧野を乗せてハンドルを握る。

「折角だから誰にも邪魔されねぇところ」

「邪魔って・・・」

「あーーーッ!まさか、誕生日の続きなんて思ってるんじゃないでしょうねッ!」

バックミラーに映る牧野はわずかに躊躇気味。

「心の準備・・・出来てないんだから」

小さく聞こえる牧野のつぶやき。

「アッ?聞こえねぇ?」

わざと無視した。

「ここ覚えているか?」

小高い丘に車を止めて目の前に広がる雪景色。

風もなく広がる青空。

1年前の遭難しそうになった自然の脅威は全く影をひそめてる。

みんなで過ごすはずだったホテルは今はスキー客でにぎわいを見せる。

「まあ・・・死にそうになったからね」

遠くに見える雪山を見ながら吐く息は白く染まる。

牧野の口元が小さくほほ笑んだ。

「ここに泊まるつもり?」

ホテルの玄関で車を止める。

「いや、もっと思い出深いところ」

牧野を引っ張ってスーノーモービルに二人で乗り込む。

「どこ行くの?」

「また遭難するつもりなんてないからねッ」

「心配するなッ」

「しっかり背中握ってないと雪の中に落っこちるぞ」

ギャーとかワーとか一人で騒がしい声を上げる牧野にも愛しさが込み上げる。

この先に一晩二人で過ごした山小屋があるはずだ。

あの時と違うのは一晩暖かく過ごせるようにセッティングしてある事だろうか。

山小屋のドアを開けてゆっくりと足を進める。

「わぁ~」

感嘆の声を上げて牧野の足が止まる。

目の前に広がるテーブルに置かれた料理にワイン。

暖炉には赤々と薪が燃える。

「ここまでは誰も朝まで来ないようにしてある」

「ゆっくり過ごせるぞ」

「えっ?」

振り向いた牧野が固まった。

「今日・・・バレンタインだよね?」

「まあな」

「チョコを渡したいだけなんだけど?」

「ただもらうだけじゃ、つまらないだろう?」

「つまるとかつまらないの問題じゃないと・・・思うけど・・・」

俺が1歩、足を進めるたびに牧野が1歩後ろに後退する。

ガタンと壁に阻まれて後退する場所がなくなった。

壁際まで追い込んだ牧野を両腕でとらえる。

「逃げ場、なくなったな?」

「ヤ・・・・ダッ」

言葉をすべて飲み込むように唇を重ねた。

 

栗リン 様ち**様の雪の山小屋に関するお話をという事でこんなお話にしてみました。

この後は・・・

行きつくとこまで持って行けるのか司君!

それともオチがあるのか!

どちらがお好みでしょうか?