木漏れ日の下で 18
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「本気じゃないよね?」
俺が映る瞳が潤んで見つめる。
すげ~いじめたくなる衝動。
「俺と一日一緒って久しぶりだぞ」
唇を耳たぶに押し当てて息を吹きかける様に声を出す。
耳まで赤くなるのはお湯で暖ったまっただけじゃないはずだ。
「仕事を休む気にさせたのはお前の所為だ」
「所為って・・・何にもしてないけど」
「何にもしてないってことはねぇはずだけど?」
口ごもって火を吹き出しそうな顔になった。
思った通りの反応を示す素直なやつ。
楽しくてしょうがねぇ。
「無理だからね」
「あっ?」
「もう・・・無理・・・」
そう言ってまた口ごもる。
「壊れねえように無茶させる」
「だから無理だって」
今度はプッーと膨らむ頬。
こいつのクルクル変わる表情がたまんなく可愛い。
「キャー」
湯船から抱き上げた拍子に首に巻きつくつくしの両腕。
柔らかな膨らみの弾力がおれの胸に押し当てられる。
わざと腕の力を少しゆるめてそれに驚くつくしが慌てた様に俺に回した腕の力を強めた。
「自分から抱きつくな」
「わざとやってるでしょう?」
非難気味な色がわずかに瞳に映る。
「お前を俺が落とすわけねえだろう」
「意地悪だね」
つくしの口元にくすぐったそうな笑みが浮かぶ。
「プルッ~」
無慈悲に響く電話の音。
「鳴ってるよ?」
出なくてもわかる電話の相手。
「どうせ西田だ」
「出ないわけにはいかないでしょ?」
しょうがなくつくしを下ろす。
バスローブを乱暴に羽織って受話器をとった。
いつもどうしてこんなに都合よく登場するんだ西田のやつ。
邪魔すんじゃねぇよ。
気分を落ち着けるために一呼吸おいて声を出す。
「なんだ」
「おはようございます。お疲れではないですか?」
昨日早めに帰宅した俺にそのセリフ。
「疲れてねぇよ」
言うしかねえよな。
「安心しました」
なにが安心だ。
皮肉を言われてるようにしか聞こえねぇ高揚感のない声。
「疲れてらっしゃるんなら出勤を遅らせら方がいいかと思っていたのですが・・・」
「さすが代表です」
「えっ?アッ?おっ?」
休むって言えねーじゃねかぁぁぁぁぁ!
西田のやつ最初から俺の心読んでやがった。
誘導尋問に引っかけられたようなもんだ。
すご腕の刑事にも負けねーぞ。
「今日も残業なしだよな?」
仕方なく条件を妥協する。
「もう少しでNYでの仕事も片付く予定ですが?」
つくしがいれば慌てて日本に帰る必要もねぇんだよ。
「あまりこちらでの滞在を長引かせると帰ってからが大変なことになると思います」
「それを調整するのが秘書の役目だろうが」
「私にも限界はあります」
目の前に書類を積み上げて頭を深々と下げる西田が見える。
結局仕事しなけりゃならない状況。
受け入れるしかねぇみたい。
諦めの境地で受話器を置いた。
「大丈夫?珍しく落ち込んでない?」
珍しくは余計だろう。
俺が落ち込む原因はほとんどお前がらみなんだけど。
「しょうがねぇから仕事行ってくる」
ホッとしたように溜息つきやがった。
てめえも残念そうな顔見せろつーの。
またこの前のケンカになりかけた状況を思い出すぞ!
「がんばってね」
俺の手を握りしめる暖かい手のひら。
目の前で優しくほほ笑むお前がいたんじゃ無視するのは無理みたいだ。
「俺が帰るまでおとなしく待ってろよ」
「えっ?」
えっ?てなんだ?
「うん、分かった」
「でもさびしい」って、俺に抱きくつとかできねぇのか?
「NYに来てまだどこも行ってないし、折角だから観光とかしたいじゃん」
お前ひとりじゃ危なかしくてどこにもやれねぇーーー!
「この家から一歩も出るな!」
「いいなッ!」
呆れたように口を開けたまんま固まってつくしの瞳の奥に火花が見えた。
そんなの無視すっけど。
さっきまでの甘い余韻も砂漠に飛んで行ったみたいに見当たらねぇ。
殺伐とした雰囲気に変わってる。
何かしでかされそうなつくしの雰囲気。
失敗した!という思いが胸の中に浮かんできた。
仕事出来っかな俺・・・
やっぱりここは西田さん。
いい仕事してます。
そして観察日記が書きたくなる♪
拍手コメンと返礼
b-moka様
どこもかしこも西田さんがいなければ仕事が順調に回りません!