木漏れ日の下で 14
*-From 1 -
洗練されたスマートさで椅子を引いた道明寺が私を座らせる。
向いあって座るテーブル。
グラスに注がれるウォーター。
軽いランチには不釣り合いなレストラン。
社員食堂とはえらい違いだよなと頭に浮かぶ。
「高校の頃、道明寺に会うためにNYに来たことあったでしょ?」
「昔な」
蒸し返すなと唇が小さく動く。
「あの時・・・花沢類が椅子引いて私を今日の道明寺みたいにエスコートしてくれたの思いだしちゃった」
あのころはエスコートされることに慣れてなくって、ぎこちなく微妙に反応するテンポが遅れた。
今は少しはましになった様な気はする。
「俺と二人でいて、どうして類のこと思い出すんだ」
不機嫌に道明寺の顔がゆがむ。
「何となく、思い出したんだもん」
記憶が浮かんでも口にしないほうが良かったと今頃気がつく私も間が抜けている。
道明寺の機嫌をわざわざ損ねる話題を自ら提供してしまった。
今さら悔やんでもしょうがない。
後は道明寺の出方次第というところか。
「俺といるときに他の男の事を考えるな」
「分かった、今から道明寺のこと以外考えないし、見つめない」
視線を外さずに食い入る様に見つめる。
「分かれば・・・いい」
ぶっきらぼうに言った口元がわずかに緩んで照れくさそうな表情に変わった。
運ばれてくる料理は文句をつけようがないくらいおいしくてお腹を満たしていく。
「相変わらず、、うまそうに食うよな」
手元でナイフとフォークを動かしながらも優しいまなざしが私を見つめてる。
「だって本当においしいよ」
「お前にまずいもんってねぇだろう」
バカにしたような笑いを道明寺が浮かべた。
折角の甘い雰囲気に水を差す。
西門さんや美作さんならそんな失敗はないだろうけどね。
ここで花沢類だけでなく残りの二人も思い浮かべたなんて分かったらやばい!
今朝の出かけに花束を準備してくれた道明寺はどこに行ったのか・・・。
ぶっきらぼうで飾らない道明寺の方が道明寺らしくて私は好きみたいだ。
すべての気持ちを誤魔化す様に頬を膨らます。
「失礼ねぇ。何でもかんでも食べる様な言い方しないでよね」
好き嫌いはないけどとブスッとつぶやいた。
食べれないもの・・・
食べたくないもの・・・
何かあるか?
フォークとナイフを握りしめたまま考え込んだ。
「道明寺が作る料理なんて食べれない気がする!」
台所に立つ道明寺なんて想像できないもんね。
「俺は今まで1度も料理なんてしたことねぇぞ」
「だが、俺様に出来ないことはない!すげーうまいの作ってやるよ」
へ?
料理したこともないのにそれは無理だろう。
この自信は道明寺の生まれながらの気質みたいなものだから仕方がない。
作るって・・・いつ?
ポケ~と口を開けたまま道明寺を眺めてた。
「夕食作ってやるよ」
「夕食!作るの!本気!」
「任せろ」
任せたくない・・・。
今のうちにここでいっぱいに料理を押し込んだ方がいいという気になってきた。
西田さんに道明寺を早く帰さない様に頼んでみようか・・・。
マジで考えてしまってた。
-From 2 -
昼食を終えて道明寺と別れた。
車に乗り込む前に西田さんを捕まえる。
「道明寺は帰るの遅くなりますか?」
「残業せずにお帰えしします」
早く帰してほしいですよねと勘違い気味の二アンスを含む西田さんの口元。
道明寺が料理を作ると言うまでは早く帰って欲しいと思っていた。
今は微妙に不安が募る。
「西田さん、道明寺って今まで料理したことあります?」
「坊ちゃんがですか?」
きっと今まで道明寺のことでは質問されたこともない内容だろう。
思案気味の西田さんの表情がそれを物語る。
「包丁で切るよりも手で引き裂いた方が上手にお出来になると思いますが・・・」
それって、裏を返せば包丁を持ったことがないってことにはならないか?
西田さんの言葉に納得できる自分が怖い。
「それがなにか?」
「ランチの時いろいろ話してたらなぜか道明寺が料理を作ってくれることになって・・・」
クスッと少し西田さんが口角を上げたぞ?
受けてる?
笑ってる?
道明寺が料理すると言うだけで西田さんの笑いがとれてる。
「どうせなら一緒に料理されることをお勧めしますよ」
車のドアを閉めて西田さんがすぐに背を向けた。
肩が微妙に上下に揺れている。
笑いを必死で押し殺してる西田さんの背中に見送られてビルを後にした。
数時間後・・・。
明るいうちに帰ってきた道明寺。
「西田に料理のこと喋ったんだな」
「料理するなら早く帰った方がいいって進められてなッ」
ハミングして機嫌のいい声。
部屋に入るなり、スーツを脱いでラフな格好に着替えて腕まくりまでし始めている。
その一連の動作をボッーと見いてしまってた。
こうなれば覚悟を決めるしかない!
私が作るのを手伝わせる!で・・・納得するかな?
「なに作るの?」
「チャーハン」
「チャーハンは作ったことあるの?」
「いや、食ったこともねぇ」
食べたことなくて味わかるのか?
「西田がチャーハンは男の料理だって教えてくれた」
作り方も習ったのだろうか?
チャーハンを作る西田さんも想像できないんだけど。
「お前が手伝ってくれるんだろう?」
「えっ?」
「俺と一緒に料理したいって言ってたと西田が教えてくれた」
「あっ・・そうだね。そうだよ!お手伝いしたいなぁって思ってたんだ」
必要以上に声が大きくなった。
「行くぞ」
道明寺に手を引っ張られて調理場へ移動する。
調理場には誰もいなくて二人っきりだ。
「料理長には西田が連絡入れて材料だけ揃えてくれてるはずだ」
道明寺がバカでかい冷蔵庫に顔を突っ込む様にして材料を物色してる。
チャーハンの材料なんて残りものでも十分においしいものが作れると思うんだけど・・・
材料の準備って料理長に準備させるほどのことか?
「なぁ、材料はどれがいる?」
「なんだ、何も分かってないじゃん」
ケラケラ笑いながら道明寺の脇の下から私も頭を冷蔵庫にひょこっと入れ込んだ。
豪華なチャーハンできそうだよ。
道明寺が手に取ったロブスターを見つめて、そのまま茹でて食べたほうがおいしいそうだと本気で思ってしまった。
周りがみんな被害を受けそうな予感(^_^;)
どんな顛末になりますことか。
NYで司に料理させてみよう♪と考える私ってアホかもしれません
もっといいことさせろよッ!
叫んでいるのは司かな?
拍手コメント返礼
b-moka様
司の料理の腕前はどうなんでしょう(笑)
私も作るより片づけの方が苦手だなぁ(^_^;)
しずか様
韓国版・・・
覚えてないです料理場面。
もう一度見直してみよう(^_^;)
司のことだから味見しないで「おいしいぞ♪」って言いそうな感じがするんです。
そして顔をしかめるつくしチャン
こんな感じどうでしょう?