If 11
昨日に引き続き今日も『If』をお届け♪
何時もとは一味もふた味もちがう坊ちゃん。
さてリベンジはうまくいくのか!
・・・と、その前につくしサイドのお話です。
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*大学の講義が終って英徳大学の構内を門に向って歩く。
大学の玄関先まで高級車が並ぶ光景は大学じゃ少ない。
親に買ってもらった高そうな車を運転する学生に変わっただけの話。
今も私の横を赤いスポーツカーが走り抜けた。
大学を出たところで私の行く手を阻むように歩道に寄せて止まった黒塗りのダックスフンド。
車の中に乗ってる人を見なくてもうすうす分る。
道明寺を無視して三日目。
あれから口も利いてない。
止まった車の後ろから降りてきた数名のダークスーツ。
逃げ場がないように取り囲まれた。
動けるのは車の中しかないという様に目の前で洞窟の様にパカッと口を開いた後部席のドア。
広々とした後部席にはバラの花束が無造作に置いてある。
バラの香りに包まれた空間にグッと左右から伸びてきた腕に有無も言わせない強引さで押し込まれた。
大体私の姿も見えなくなるガタイの大きさに取り囲まれると道明寺に反抗できる私も対応を変えざるおえなくなる。
こわっ~
そう思った瞬間に顔なじみのSPの相葉さんが「お願いします」って泣き落としで来るから逆らえなくなる。
道明寺が乗ってると思った後部席には誰の姿もなくぽつりと真ん中に借りてきた猫みたいに大人しく座った。
どこに連れて行かれるのか・・・。
連れて行かれるところは道明寺が待ってるはずだし、あいつの顔を見たら小言の一つ二つは言って帰ってやる!
横にそのままに置いてあるバラの花束は両手一杯の大きさで、いったい何本あるのかわからないくらいの豪華さ。
これって私にかな?
手に取ってバラの花に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
・・・らしくない。
「ほらッ」
って、目の前でずぼっと差し出されるよりうれしいのはなぜだろう。
直接渡されたら「いらない」って私は可愛げない態度を取るって思う。
ヤッパリ道明寺らしくない。
クスッって頬が緩むのが自分でもわかる。
まだ完全に仲直りするつもりはないから!
腹に力を入れるのと一緒に頬もグッと引き締めた。
私を乗せた車が止まったのは道明寺本社ビル前。
数人の部下らしき人を従えた堂々とした道明寺が入り口から姿を表した。
近寄りがたい雰囲気と華やかなオーラー。
道行く人まで立ち止まってその姿を眺めてる。
花沢類や西門さん、美作さんの前で恥ずかしげもなく私たちの事を暴露したやつと同じ人物に見えない。
でもね・・・。
きっと・・・。
今私の目に映る道明寺には気後れするって思える。
立派過ぎるっていうか・・・。
大人に見えるっていうか・・・。
我儘で、傲慢で、感情むき出しで・・・
それが一番道明寺らしくって・・・。
そんな道明寺が私を安心させてるって彼は知ってるだろうか。
暗い空間にドアが開いて差し込む陽の光。
ヒンヤリとした風が後部席に空気を運ぶ。
「その花束、返すなよ」
後部席を覗き込んで少し不機嫌そうにつぶやいた口元。
そして私の横に当たり前の様に道明寺が腰を下ろした。
道明寺に連れて行かれたのは最近評判のフランス料理店。
一度道明寺の部屋で眺めていた雑誌を見て行ってみたいって思ったお店の一つ。
お店に入った道明寺を見た店員が一瞬驚いたような表情を見せた。
「予約した道明寺だ」
その声は威圧的で冷たくひびく。
遠慮がちに覗いた店員が穏やかな表情を見せたのは流石は一流店のプライドか。
通された席は壁の近くでいつもの特上な席とは少し違った雰囲気。
「すいません」
道明寺の席に慌て飛んで来た黒服の責任者らしき年配の人が冷や汗をかきっ放しで頭を下げる。
「すぐ、別のお席を用意します」
「今日はプライベートだから気を遣わなくていい」
掌を相手に見せて制する仕草を見せながら穏やかに発する声。
それでも確かな圧力を感じる。
「今日、なんかあったの?」
「別に」
何時ものふてぶてしさが目の前で私に壁を作る。
「一緒に食事するつもりはないから」
「もう料理を頼んでるぞ」
食べずに帰るともったいねえぞ的な嫌みな視線。
運ばれてきた料理は確かにおいしくて、視覚も味覚も嗅覚も十二分に楽しませてくれる。
満足そうに私が食べるのを眺める道明寺の思うつぼの自分に腹がったって仕方ない。
その勢いのままにフォークをステーキ肉に突き刺した。
高い高級肉って、柔らかくて、突き刺したファークに抵抗がないのも腹が立つ。
そして口に入れた途端に溶けてなくなる。
こんな時は歯ごたえがあるものの方が心を落着けられる気がした。
「いい加減に機嫌直せ」
余裕ありげに浮かべる笑み。
「拉致して連れてきてよく言えるよね」
道明寺の余裕が私を頑なにさせているのが分る。
「人聞きの悪い事言うなよな」
「道明寺が周りのこと気にするとは思わなかった」
鼻先で笑う様に周りに移す視線。
誰も私たちを気に留める人がいないことが私の気も大きくさせている。
「俺のものをどうしようが俺の勝手だろ」
「何時道明寺のものになったのよ。ならないからね」
左右にフォークとナイフを持ったままの拳をドンとテーブルに打ち下ろした。
そして道明寺はニッとまた笑う。
笑うなッ!
「脚が攣らなきゃなってたろうがぁ」
苦情をまだまだ言うつもり開いた唇が動けなくなった。
攣らなきゃって・・・
確かにあの時は道明寺と一つになってもいいって思ってて・・・
脚が攣らなきゃ今の私たちの関係も違っていたものになってるとは思う。
だけどねッ!
それをまた、ここで引き出すってどういう神経!
デリカシーなさすぎ。
さっきのバラで殴ってやりたい気分だ。
「なぁ、人気のある店って予約を入れるのも大変なんだな」
私の怒りに気が付いたように話題を変える。
つーか、道明寺が相手の感情に合わせて態度を変えるって芸当はないか。
現に私の不機嫌さには大した興味も見せてないような笑顔を作って私を見つめてる。
「道明寺には関係ないと思うけど」
「今回は道明寺の名前をだしてねぇよ」
スッと私から視線をずらて顔を横に向けた頬がわずかに赤くなったのが見えた。
「えっ・・・」
それってどういうこと?
「普通に予約を入れてみた」
普通って・・・
テレビの予約でもボタンでプチッと軽く操作するような口ぶり。
自分で予約を入れるのは一般的だけど・・・
道明寺が一言、道明寺だって名前を出せばどこだって一つ返事で予約が取れるって思う。
「普通って・・・、道明寺の普通が桁外れって知ってる?」
下から舐めるように覗きこんだ顔はふて腐れた表情に変わった。
「道明寺だったら顔パスで予約のお客さんを追い出して席に座りそうなんだもん。それが普通って事じゃないからね」
「うそじゃねェよ。覚えてないくらい電話をかけたんだからな」
道明寺が・・・自分で予約を入れたって事?
何度も電話を入れて予約を入れるって道明寺にはあり得ない。
「・・・うそっ。道明寺が?」
「キャンセルを待って予約するって普通あり得ねェンだからな」
あり得たんだ・・・。
真っ赤になった顔を隠す様に道明寺がワインを一気に口の中に流し込む。
あの道明寺が・・・
西田さんじゃなく自分でお店の予約を入れたの?
予約が取れなくてイラッとしてる道明寺。
クソッって、携帯を握りしめてる道明寺がうかんでくる。
それとも機嫌の悪さを周りの人たちにまき散らしてないよね。
いまだに顔をそむけて私と目を合わせない道明寺は、子供が拗ねたようで、なんとなく私を安心させる。
あ・・・
だから道明寺が私を連れて現れたのを見て初めて予約したのがあの 道明寺 司 だって気が付いてお店の人が慌てたんだ。
壁際の席も、店長らしき人が慌てて飛んで来たのも、その意味がやっと理解できた。
「道明寺の力で無理やり予約を入れ込まないでよね」
何時も私がブスッて言ってたことを気にかけていたんだと思ったら胸の奥がキュンとなった。
この人にとったらどれだけの我慢だったのだろう。
バカみたいに感動してる。
うれしくてちょっぴりと目が潤んでくるのが分る。
こんなことで泣いてるなんて道明寺にばれたくないのに。
「お前・・・泣いてるのか?」
こんなときに限って目ざといんだから。
「だって、道明寺が慣れないことしてくれるから・・・グズッ」
我慢出来なくなって一筋の涙が頬を伝う。
「こんなの大したことじゃないだろう」
道明寺の瞳が細く笑って、道明寺の親指が私の目元から零れかけた涙をすくってくれた。
「あの道明寺だよ」
「予約が取れないってなったら店ごと買収しちゃいそうだし、キレたら店を破壊するとかさ」
クシャクシャになりそうな感情を誤魔化す様につぶやく声。
「お前のためなら俺は何でも出来る」
苦笑気味の顔が真顔になって私を熱く見つめる瞳。
こんな率直な道明寺の声に弱い。
今までの私の態度が子供じみて恥ずかしく思えてしまってる。
「ごめん・・・ありがとう」
道明寺が嬉しそうに頬を崩した。
道明寺に掴まれた掌。
包み込んでいく熱は温かくて身体の奥からの熱を呼び込んでくる。
どうしようもなく道明寺のことが好きで恋しくて大事だって思える。
ずっと・・・・
一緒にいたいって、心から思った。
楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
captain様
「お前のためなら」
自分に自信がないといえませんよね。
それが本当に何でもやってくれそうな相手ならズドンと言っちゃいそうです。
一生縁がないだろうな・・・(^_^;)
yoppy 様
えーーーーーッ
今回はyoppy 様まで応援隊ですか?
ドS倶楽部の影が今回は薄い・・・。
ナマころがしは封印?
司君良かったね。← まだ分らねェぞ。ここの管理人 By 司
しずく様
今回の司君はけなげですよね。
頑張ってるし。
応援したくなる気持ちありますよね。
それでも私は心を鬼に!! ← するな! 叫んるのは司?つくし?読者?