If 10

このお話はつかつく大学時代のお話。

最近自分に言い聞かせないといくつもの話が混じってくる気がします。

早く話の数を減らそう・・・

そう思いつつこれが減らないんですよね。(^_^;)

どうしてだろう・・・。

*

「いい加減に機嫌直せ」

膨れた顔は俺の皿の上の肉にまで伸びてガシッと突き刺した一口サイズのステーキを口の中に放り込んだ。

「拉致して連れてきてよく言えるよね」

文句を言うわりには食欲旺盛。

「人聞きの悪い事言うなよな」

「道明寺が周りのこと気にするとは思わなかった」

皮肉めいた視線はそのままくるりと周りのテーブルを眺める。

俺が誘ってもお前が無視するからだろうがぁぁぁぁぁ。

「俺のものをどうしようが俺の勝手だろ」

「何時道明寺のものになったのよ。ならないからね」

ドンと音をたてたテーブル。

その手にしっかりと握りしめられてるフォークとナイフ。

まだ食う気満々だろう。

「脚が攣らなきゃなってたろうがぁ」

アッと形を変えたままの閉じるのを忘れた唇。

そしてみるみる牧野の白い肌がピンクに変わる。

予約半年待ちのフランス料理店。

しげしげと俺たちを眺める失礼な客は今のとこいない。

その結果いつもより牧野は周りの反応を気にせずに躊躇することなくいつもより毒舌。

行ってみたいて雑誌を眺めながらぽつりとつぶやいた牧野の一言を覚えていた俺。

ここで「いつでも連れてってやるぞ」って、いってもこいつが素直に喜ばないのは分ってる。

「道明寺の力で無理やり予約を入れ込まないでよね」

牧野の反論も容易に想像できる。

いい顔しねぇんだよな。

俺なりに牧野を喜ばそうと思っていた。

道明寺のネームバリューを利用せずチマチマと電話を入れてやっととれた席。

西田にまかせれば一回で済むことを、予約を入れるためにどのくらいの無駄な時間を割いたのは分ってねェよな。

この俺が牧野の機嫌取りに必死になってる。

「なぁ、人気のある店って予約を入れるのも大変なんだな」

「道明寺には関係ないと思うけど」

「今回は道明寺の名前をだしてねぇよ」

「えっ・・・」

考え込むように牧野が眉間に寄せる眉。

「普通に予約を入れてみた」

「普通って・・・、道明寺の普通が桁外れって知ってる?」

そこで牧野に不安げな表情をさせる俺って・・・

牧野!

お前は俺をなんだと思ってる!

「道明寺だったら顔パスで予約のお客さんを追い出して席に座りそうなんだもん。それが普通って事じゃないからね」

「うそじゃねェよ。覚えてないくらい電話をかけたんだからな」

偶然にキャンセルが出て今日の席が取れた。

この達成感は仕事がうまくいった達成感とも引けを取らない。

それは、牧野の喜ぶ顔が見れるって思ったから。

なのにこいつはいまだにふくれ面のままでの俺の眼の前にいる。

「・・・うそっ。道明寺が?」

「キャンセルを待って予約するって普通あり得ねェンだからな」

牧野の見せる反応がどんどんめんどくさくなってきてる。

ワインのグラスに手を伸ばして滅入りそうな気分を吐き出す様に息をついて赤い液体を喉元に流し込んだ。

沈黙は俺だけじゃなく牧野まで俯いて黙り込んでる。

フォークを動かす仕草も止まってた。

「ヒクッ」

えっ・・・

覗きこんだ牧野の瞳がわずかに潤んでる。

「お前・・・泣いてるのか?」

「だって、道明寺が慣れないことしてくれるから・・・グズッ」

今度は鼻をすする音まで聞こえてきた。

「こんなの大したことじゃないだろう」

牧野の目元に一指し指を伸ばしてすくい上げる涙。

心の奥がズクンと熱くなる。

「あの道明寺だよ」

あのってどんなんだよ。

「予約が取れないってなったら店ごと買収しちゃいそうだし、キレたら店を破壊するとかさ」

お前の想像する俺はどこまで強引で野蛮なんだ。

「お前のためなら俺は何でも出来る」

半べその牧野はやっと笑顔を見せた。

照れくさそうに見せる笑顔。

ほんのりと心の奥が温かくなる。

暗闇の中にほのかに輝くランプの穏やかな明かりみたいに俺の心を照らす。

こいつの笑顔をいつまでも見たいって思う。

牧野より俺の方が安上がりじゃねェか。

「ごめん・・・ありがとう」

今の俺は牧野に負けないくらいの上機嫌な表情を浮かべてる自信がある。

牧野の手のひらにのせた俺の手のひらにギュッと力を込めた。

今日はこのままうまくいくんじゃねェか?

ダメだっ!

邪心は捨てろ!

つぎに邪魔が入るとしたらなんだろう・・・。

ふとそんなことが頭の中をよぎった。

今日は脚はつらせねぇから。

楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。

 ブログランキング・にほんブログ村へ

拍手コメント返礼

igaiga様

周りが見たら司様どうしたんですか!ですよね。

西田さんが一番驚きそうなんですけど(笑)

今回のうまくいかなかったその要因は・・・

ハードルが上がっています。

足が攣る以上のインパクトってどこかに転がってませんか?(笑)

ままっち様

リベンジなるのでしょうか?

微妙~~~~。

すいません。

PW送ろうと思ったのですが、メールアドレスの記載がないので送れませんでした。

再度のご連絡をお待ちしてます。