ドッカン !! 17

カチャリ

ドアノブをまわして聞こえた音にまでドクンと心臓に響く。

一斉に注がれる視線。

ごくりとつばを飲み込んだ音まで体中に響く。

「お騒がせしました」

腰をへし折るようにして頭を下げた。

「そう畏まらなくても大丈夫だから」

ポンと私の肩を叩いた公平はにっこりと笑う。

「正直、何も隠すことないって思ったけど、あなたの気持もわかったから」

萩野さんの笑顔にも助けられた。

「あんな素敵な人だったら、私なら喜んで自慢するけどな」

それは道明寺の本性を知らないからだと・・・。

「プッ」

後ろで公平がこらえきれない様に失笑を漏らす。

えっ?

どうしてそこで公平が笑うのよッ。

何事もなかったようにみんな自分の席に戻って落ち着きを取り戻した部屋。

さっきまで道明寺がいたことが幻だったように平静な時間を取り戻してる。

司法修習生ってやっぱりみんな冷静だわ。

興味本位の噂に非難気味の視線。

大学の様な騒ぎにはならなかったことに感謝。

この調子じゃうまく司法修習も終わることが出来そうだと安堵のため息が漏れた。

「楽しそうですね」

横から聞こえた無感情の声。

俺が機嫌が良くて一番恩恵を受けるのは西田!お前だ!

「苦労した甲斐がありました」

俺の心の中の声が聞こえたように西田がつぶやいた。

だからそこでちょっとの微笑みでも浮かべてみせろ。

いや・・・

そっちの方が気分が悪くなるか・・・。

「素直じゃないのに素直」

触れた唇の柔らかな感触と甘い味。

唇の間から差し入れた舌を拒むように動いたあいつの舌。

吸い上げるたびに抵抗を無くして深くなるキス。

素直に反応しすぎだろ。

ククッと震える喉。

俺を楽しませてくれるよな。

これ以上は我慢できなくなるって所で止めたのは俺。

物欲しそうな・・・

名残惜しそうに俺を見つめる瞳。

その表情ほかの奴に見せるなよ。

言いかけた声は「司って、呼んだら続きをしてやるよ」の強気な俺を作り出す。

抱きあったらきっと強気のままじゃいられなくなるって分ってる。

そしてまた小さく失笑する声が漏れた。

「何か言いましたか?」

「何でもねェよ」

西田が眉を眉間に寄せるのが見えて思わず息を飲み込んだ。

「なにもないってわりにはニヤついてますけど」

俺を凝視する西田。

こいつの読めない表情は十分に俺を動揺させる。

俺は西田の指摘を確かめるように片手で頬に触れて、思い切り顔をしかめた。

めんどくさくて・・・。

素直じゃなくて・・・。

気が強くて・・・。

それでも離れている時間を恋しく想わせるただ一人の愛しいやつ。

あいつを想うだけ自然と俺は微笑を浮かべてしまってる。

会えればなおさらだ。

「へんな所に気をまわすな。仕事の戻るぞ」

ぶっきらぼうな声色もわずかに震えていつもより高めの声。

「言われなくても、この訪問のロスの時間は2倍で返してもらいます」

内ポケットから取り出して眺めた手帳を西田が俺の前に開いて差し出す。

それはまるで警察だと犯人に警察手帳を示す様な威圧感。

14時から22時までびっしり小さく書かれた文字。

文字の大きさも文字数も1寸の狂いもなくぴたりと並ぶ。

ここでも西田の几帳面さを見せられた気がした。

「このスケジュールは3日連続ですから」

「3日・・・」

「帰ってもおひとりなのですから暇でしょう」

クルッと俺に背中を見せてスタスタと前を西田が歩く。

言い返す言葉も見つからず目で追っていた西田の動きがピタリと止まった。

「つくし様はこの研修の後、実務研修にはいります」

もう一度俺に向き直った西田が思い出したようにつぶやく。

「それがどうした」

結局は離れ離れって事には変わりない。

「道明寺フォールディングス 顧問弁護士事務所に籍を置いてもらうのが安心だと手を打ちました」

うちの顧問弁護士って・・・

本社に事務所を構えている。

てことは・・・

あいつの実務研修期間は本社に毎日いるってことだよな。

西田すげ~。

仕事・・・

残業でも、徹夜でも、お前の予定以上にやってやる。

俺って何時からこんなに単純になった?

「代表・・・頬を引き締めていただきたい」

もう一度眉が眉間に寄った表情で西田が俺を見た。

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拍手コメント返礼

おかゆ

今回の実務研修はどうなるんでしょうね。

100万回とは違う何かを考えないと・・・

自分で自分の首を絞めてる気がします。(^_^;)

司じゃなかったんです。つくしちゃんの本社勤務。

今回は最初から最後まで西田さんを絡めたお話を考えています。

えっ?司じゃなく?(笑)