僕らはそれを我慢する 4
2・3のお話は影の薄いあきら君。
そろそろ甘いことやってくれないと新婚だってことを忘れちゃいそうです。
さてここの新婚さんどんな夢を見せてくれるのか♪
「迎えに来てくれるって思わなかった」
司達と別れてゆっくりとネオンの輝く街を二人で歩く。
照れくさそうに微笑んだ葵が俺の腕にすがる様に脇と腕の間に自分の腕を滑り込ませる。
上腕に寄り添う頬がアルコールのせいかわずかに上気してほんのりと赤みを帯びてる。
上目使いで俺を見上げて甘える仕草でギュッと腕に寄りかかった葵の身体。
その温もりを体中に感じてる。
「司も牧野に関しては過保護だからなあ」
過保護というより独占欲の塊だ。
俺も司のことは笑えないって葵と知りあって痛感してる。
「わぁ~」
通り過ぎようとした公園の噴水がライトに照らされて色とりどりの光のシャワーを演出してる。
それに感嘆する声を上げる葵は子供の様に無邪気だ。
俺より年上ってつい忘れてしまう。
「おい、危ないぞ」
「大丈夫」
初夏の気温に誘われるようにパンプスを脱いで素足を噴水の水につけてはしゃぎ声を葵があげた。
「気持ちいいよ」
結婚式を挙げた南の島の海辺とカン違いしてないだろうな?
結婚式を挙げた朝、朝日の光を浴びながら二人で手をつないで歩いたプライベートビーチ。
「恋人つなぎで散歩したい」
指先を絡めてきたのは葵が先。
白い砂浜に打ち寄せる波。
透きとおった青い海。
自然の美しさより輝いて見えた葵が俺に向けた微笑み。
俺たち以外には人影はなく輝く砂浜に葵と2人きり。
視界に映るものは、どこまでも広がる青い空と海だけ。
そのあいまいなブルーの境界を眺めながら結婚したんだって現実が目の前にある。
「なに思いだし笑いしてるの?」
「結婚したんだって感無量なのわからない?」
目を見開いてまじまじと俺を見つめる澄んだ瞳。
「思いだし笑いをする人ってスケベだって知ってた?」
悪戯な表情が目の前に浮かぶ。
「俺がスケベなのは葵限定だから問題ないだろう」
「そんなこと言わないでよね」
耳まで真っ赤になったのは朝までの痴態を思い浮かべたって証拠みたいなものだ。
抱きしめようと回した腕からするりと笑って逃げ出す葵。
駆け出す葵を追って走る。
昔見た映画のワンシーンを自分で再現するって醜態を演じて楽しんでしまってる。
波打ち際を走ってはねた飛沫がスラックスも葵のワンピースの裾も、濡らすのもおかまないなし。
追いつきかけた俺に葵が海水をすくって振り向いた。
「ワーやめろ」
「いいじゃん、水も滴るいい男」
こんなにはしゃぐ葵を見たのは初めてだって思えた。
俺もすぐに屈んで海水を救い上げる。
「仕返しだ」
「キャッー」
逃げる間もなく葵の髪から水滴がしたたり落ちる。
「もうこんなにかけなくても・・・」
葵の前髪に光が当たってキラキラ輝いてやけに眩しい。
綺麗だって言いかけた声を葵のふくれっ面が笑いに変えた。
数度かけあった水遊びは互いの身体も下着までもびしょ濡れで、バカげた状態に心から笑い合ったのを覚えてる。
その再現をここでするつもりじゃないよな?
「おっ!キャッ!」
「だから言ったろう!」
目の前で揺らぐ葵の身体を駆け寄って抱きしめる。
コツンと胸元に落ちてきた顔。
葵の乱れた息遣いがシャツを通して胸元に伝わる。
「びっくりした」
「ここでずぶ濡れは勘弁な」
葵の心臓が少し速まったのを感じながら漏れた声は必要以上に優しく響く。
「今日は嬉しくて」
「なにが?」
「あきらが、迎えに来てくれたから」
見上げて俺を映し出す瞳は熱く潤んだままじっと見つめてる。
どちらからともなく重ねた唇。
長く甘いキス。
「大好き」
離れた唇はそうつぶやいて愛おしさを増長させる。
答える代わりに葵を強く抱きしめた。
こんな二人のじゃれあいをつくしちゃんが見たら大人だって思ったことを撤回するのかな?
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
b-moka 様
台風は明日見たいです。
秋の台風って珍しいはずなんですけどね。
本州も直撃しそうですよね。
被害がないことを願ってます。
驚くけど意外と喜んで見てるかもしれませんねつくしちゃん(笑)
一番に報告するのが類♪
なんだか類の反応は薄い気もしますが(^_^;)