木漏れ日の下で 19
*-From 1 -
道明寺をにこやかに見送った。
それはホンの建前。
「俺が帰って来るまでおとなしくしてろ」
私を指さして強調する怖い顔。
「仕事頑張ってね」
返事をせずに背中を押して身体を前に押す。
無理な態勢で首を回して分かってるだろうなみたいに再度のねんをおされる。
「首いてぇ」ぶつぶつ言いながら道明寺は車に乗り込んだ。
NYまで来て、この屋敷と道明寺のオフィスだけしか過ごしてないなんて勿体ない。
日本に帰ってどこにも行かなかったなんて言ったら「何してた~」って、ひやかされるに決まってる。
別に誰にも言うつもりないけど。
一人で行くにはちとさびしい。
道明寺に会うために来た高校3年の冬。
あの時は強がって一人で観光したけど、今はちょっぴりさびしい気持ちが浮かぶ。
本当なら道明寺に案内してもらいたい。
ハワイの時みたいに「そんな一般人が行くと行ったことがねぇ」って顔しかめるのか。
二人で歩くNYの街並み想像したら照れくさい笑いが浮かんだ。
道明寺も本気で1日中この家に私を閉じ込めておけるとは思ってないだろう。
きっとSP数人張り付かせて、一人での自由なんて出来ないはずだ。
そう思ったのに女性の使用人以外は見当たらない。
頑丈なダークスーツの男達はどこだ?
探して不安になる自分に笑いがこみ上げた。
この状態に道明寺の言葉に反した行動して大丈夫かと思う自分に苦笑する。
もしかしてこれが道明寺の考えた手段?
単純明快な道明寺にしては珍しい。
西田さんなら分かるんだけど。
ブルッ~
ポケットの中で繰り返す振動。
慌ててポケットから携帯を取り出してボタンを押す。
「つくしちゃん、おはよう」
懐かしい優しい声。
「お姉さん?」
道明寺のお姉さんっていつも結構突然なんだよね。
それも私が困ってるときに助けてくれる。
今の私も困ってる?
「NYに来てるんだって?」
「えぇ、まぁ。でもどうしてお姉さんが知ってるんですか?」
昨日の今日で誰にも連絡を取る余裕はなかった。
私がNYに来てること知ってるのって西田さんに道明寺にタマ先輩。
そんなにいないはずだ。
「司から連絡がったのよ。あの無鉄砲が何かしでかす前につきあってやってくれって」
無鉄砲って道明寺の方じゃないのか?
自覚ねぇなと凄む道明寺が浮かんで消えた。
「自分が相手してやれないから頼むって」
「司に頼まれたのって初めてかも」
無性に機嫌のいい声が携帯の向こう側から響く。
私のこと考えてくれたのかとホロっと泣きそうになった。
『姉貴に頼んだからSPの必要はねぇ』
そう言うことかと、だだっ広い屋敷内の人数の少なさに納得する。
NYでの道明寺が私に見せる対応。
スマートすぎないか?
思った以上に感激ってしまってる。
「迎えに行くから待っててね」
「えっ?あっ?ハイ」
思わぬお姉さんの申し出にうれしいはずなのにどぎまぎしてしまってた。
迎えに来た椿お姉さま。
連れまわされてるのは私の方。
ブランド店いくつ回った?
「つくしちゃんこれ似合いそう」
楽しそうにいくつもの服を私の体に当てて試着を促す。
「もっと派手なの着てもいいのに」
「今のも地味だし、もっと露出させてもいいんじゃない」
「そのほうが司も喜ぶかもよ」
いや・・・
露出できないそれなりのわけが・・・
言えるわけない。
「どうせ司の支払いだから気にしなくていいのに」
今さらそんな心配はしてませんよ~。
強引に服を押しつけられて試着室に押し込められた。
胸ギリギリのラインで肩までマル見えの服。
こんなの今は着れるわけないつーの。
道明寺が私に付けた今朝までの痕が丸見えだ。
試着した全身が鏡に映る。
首筋に鎖骨、胸元まで花弁を散らした様に残る赤い痕。
このまま試着室から出るなんてとても出来そうもない。
最悪だ。
どうすんのよーーーーーーーッ。
道明寺を恨みたくなった。
-From 2 -
絶対あいつおとなしくしてるタマじゃねぇよな。
一人で歩いてトラブルに巻き込まれたらどうする。
いい大人が迷子ってこともある。
あいつの場合は中学生に間違われて保護されてしまったりしてなッ。
分かっていながら「おとなしくしてろ」しか言えない俺じゃ芸がなさすぎる。
あいつの子守、誰に頼もーかな。
この場合一人しかいねぇけど。
やっぱ姉貴だよな。
「どうしてつくしちゃんが来てるって教えてくれないの!」
最初の一言は小言だろうと苦笑しながら携帯の短縮を押す。
「あら、珍しいわね司からかけてくるなんて。雪降ってるんじゃない?」
最初からじわじわと責めてくる。
「私に電話するのも会うのも時間が勿体ない。早く日本に帰るってぼやいてたのは誰だっけ?」
「そんなこと言ったか俺?」
言った様な気もすっけど、姉貴と連絡とったのってNYに来た初日だったはずだ。
あれから今日まで声も聞いてなかった。
「もう忘れてる。この前食事に誘ったらそういって断ったのよあんたは!」
俺をいじめて楽しんでる姉貴の悪い癖。
でも最後は俺の頼みは絶対きいてくれるんだよな。
「別に慌てて日本に帰る必要なくなったから」
「もしかして!つくしちゃん来てるの?」
速攻でそう返事される俺ってどうなんだ?
つくし中心で俺が動いてるように思われてねぇか?
「なんで分かんだよ」
愚痴る様に携帯を睨む。
「当たり前でしょう。大体あんたが私に電話するときってつくしちやん絡みじゃない」
「高校の時から変わってないの!」
俺が成長してねぇみたいな言い方すんの姉貴だけだぞ!
『急がば回れ』『ヘミングエーイ』だったか?
つくしをデートに誘うのに悩んでた俺に教えられたのって。
俺に誘われた時のつくしの顔・・・
信じられねぇって、ぼけーと呆けた顔してたんだよな。
今はそんなこと思い出してニヤついてる場合じゃなかった。
「俺さ、今日仕事だから姉貴がつくしの相手してくれると助かるんだけど」
ギュっと頬に力をいれ緩みそうになる声にも力を入れる。
「つくしちゃんがNYにいるんならあんたに頼まれなくてもつくしちゃんを誘うわよ」
「エンパイア・ステート・ビル、ロックフェラーセンター、タイムズスクエア、自由の女神」
「よく知ってるねNYの観光スポット」
「つくしのやつ行きてッーて言いだすかも」
「それはそれで楽しいじゃん」
ホヘッ!?
楽しいって・・・
感覚わかんねぇ~。
「つくしちゃんとはいっぱい話したいことあるしね」
「もしかしたら司のとこにはつくしちゃん帰せなくなるかも~」
最後まで俺をいじめんじゃねーよ、バカ姉貴。
バカなんて俺が思ったと知ったら姉貴の鉄拳飛んできそうで後が怖い。
「夜には帰せよ」
ぶすっとそれだけつぶやいた。
「『俺んだからなッ』なんて思ってるでしょう?」
対照的なハリのある艶やかな声。
「悪いか」
「あんたの物は私のものだからねッ」
ククッと楽しそうに笑ってきられた携帯。
相変わらず容赦ねぇ。
執務室で書類にペンを走らせる。
「今日はつくし様は?」
それを確認して予定を立てますみたいな視線を西田が向ける。
「姉貴に頼んだ」
「それでは安心ですね」
確実に西田のやつホッと胸をなでおろしてる感じがありありで癇に障る。
「仕事に没頭をお願いたします」
深部方頭を下げて隣室へと戻って行った。
今頃姉貴と楽しんでるといいんだけど。
ちゃんと帰してもらえっかな。
Fその後のお話では椿お姉さまの登場はお初の様な(^_^;)
こんな登場で椿お姉さまには怒られそうだわ
拍手コメント返礼
けい様
日曜日の朝は戦争ですよ♪
子供がねてる間にかき上げられるかどうかギリギリの状態で(^_^;)
今日は何とか子供が起きるより先に書き上がりました♪
椿お姉さまが出てくると華やかになりそうです。
b-moka様
この後は~
その前に試着室♪
どうするんでしょうつくしちゃん♪