第14話 DOUBT!!  4

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-From 1 -

「花沢類!どうだった?」

切羽詰まった牧野の表情。

真っすぐに俺を見つめる瞳の奥が不安に揺れている。

あいつのことになるとそんな表情見せるんだ。

司のことがうらやましく思える瞬間は今でもある。

「牧野の命狙われてるんだって」

正直に打ち明けることなんてできない。

かといって「司が脅迫されてる」とも言えない現実。

どう言ったって司に会いに行くと俺の家を飛び出していきそうだ。

牧野をどう丸めこむ?

「司を信じていれば大丈夫だよ」

司に会う前とたいして変わらない俺の対応。

困惑気味に牧野の表情がゆがんだ。

牧野にそんな表情をさせたかったんじゃないんだ。

「私に会えない理由って、なに?」

強気な視線の牧野を納得させられそうな言葉を探す。

司、ごめん。

何をどう繕っても牧野を止めることは俺には出来ないかもしれない。

「会いたくないとか?」

「司は牧野に会えなくて限界に来てると思うけど」

横暴な態度をとってはいても牧野に会いたい気持ちを司が押し込めてるのが手に取るように分かった。

あいつに我慢なんて一番似合わない。

それを司に強いるのは牧野への愛情の深さのだと思う。

「じゃあ・・・なぜ?」

「行ってみれば男のプライドってやつかな」

俺が守る!

本当ならそう言って屋敷の奥深く牧野を閉じ込めたかったはずだ。

以前の司ならそうしてたはずだ。

牧野の嫌がることは無理強いしたくない。

その思いであいつは耐えているのだと俺は思う。

牧野をここまで不安がらせるのもどうかと思うけどね。

これがあいつの出した結論だとしたら俺は全面的に協力を惜しまないよ。

「司は人一倍プライド高い奴だから」

少し牧野の表情から緊張が解けている。

「あいつが牧野に会いに来るまで待ってやったら」

「それも愛だと俺は思う」

優しく肩に右手を添える。

「大丈夫だと思う?」

俺を見あげる大きな瞳が不安に揺れている。

大丈夫の意味は司?牧野?それとも両方なのだろうか。

一番無難な答えを頭ではじいてる。

「落ち着いたら司は牧野との婚約を発表する気でいるみたいだよ」

不安に揺らいだ表情が少しほんのりとした色合いに変わる。

「そっちの方心配した方がいいんじゃない」

「まだ早いよ」

照れくさそうな表情を牧野が作った。

 

-From 2 -

「そろそろ、お時間です」

「出たくない」

不機嫌は態度に出たまま言い放つ。

不可能は承知のわがまま。

不毛な時間を孤独のうちに過ごすのは快適な環境には程遠く無駄なことだ。

かたぐるしい会議。

会議の結論は決まっている。

俺がOKを出せばそれで事足りる建前だけの時間だ。

そしてここ数日例外なく最後に付け加えられるのは脅迫されてる経緯。

重役たちは牧野がその対象になっているとは知らない。

いくつも上げられる脅迫者の予想。

考えるだけ考えてもらちが明かない状況だ。

「警備を増やした方が・・・」

「会社のセキリティーは世界1だと言ってたのはお前だったよな」

いつもより凄味の利いた声。

一発で黙り込む担当者。

「代表・・」

分かったと言うように片手を振って西田のそのさきの言葉をさえぎる。

「会議で必要意外の話題をこれ以上出させるな。意味がねぇ」

不機嫌のまんま立ち上がって会議室を後にした。

プルッ~。

胸元のポケットの奥で鳴り出す携帯音。

携帯画面に浮かびあがるあきらの文字。

携帯を握りしめた手のひらの熱が上がる。

「もしもし」

必要以上に冷静さを装う声。

「司か?」

その呼びかけももどかしい。

「いいから用件だけ言え」

完全にあきらをせかしてる。

そんなに焦るなとでも言いたげにクスッと携帯の向こうで聞こえる一息。

「今日の夜、予定開けとけるか?」

「今日の予定?

・・・開けさせる」

数秒の空白は西田に送るシグナル。

コクリと頷く西田を目で確認して答えた。

「迎えに行くから」

せかしたのは俺だけどあまりにもはしょりすぎじゃねぇの?

主語が抜けていきなり動詞にたどりつく様な勢い。

話の流れが見えねぇよ。

結論急ぎすぎてねぇか?

「何か解ったのか?」

「それは夜話す。じゃ後で・・・」

「おい!あきら!」

一方的に携帯をキリやがった。

あいつのことだ何かつかんでるとは思うけど落ち着かない思い。

もともと俺は短気なんだぞ!

反応しなくなった携帯を思わずソファーの上に投げつける。

上質なクッションにはじまれてポンと上がる携帯。

物を壊さないように投げるなんて以前ならねえよな。

携帯が操作できるのを確認してポケットをにしまい込む。

馬鹿見てぇな行動。

「西田、今日の夜の予定は全部キャンセルだからな」

俺の行動をさっきから横でおとなしく見ていた西田が解りきった顔を俺に向ける。

携帯が鳴ったとたんに予測したように西田の頭の中は動いてるのだろう。

「では」

何事もなかったように頭を下げて部屋から立ち去る西田をじっと見送った。

続きはDOUBT!!5

今後の展開は?

いよいよ動くのか?

まだ引っ張ろうかな~どうしよう(^_^;)