第10話 Must be you will love me 4
*-From 1-
「ど・・・みょ・・じ・・っ・・」
狂おしいほどの響きが耳元で囁かれる。
たまんねぇッ・・・。
邪魔な薄手の生地が徐々にはだけて滑らかな肌を指先で楽しむ。
手のひらにすっぽり収まる程よい大きさの胸も、その柔らかい感触も十分に俺を刺激する。
俺に組み敷かれたままわずかに見せる抵抗を押さえるように牧野の下半身に割って入って抑え込む。
慌ててもがいても何の抵抗にもなりはしない。
逆に二人の密着度は増すばかり。
いつまでたっても学習能力のない奴だ。
待ちわびて・・・
焦がれて・・・
こがれた恋しい肌のぬくもり。
熱病に冒されるような感覚が身体を包み込む。
牧野と触れ合うのも数週間ぶり。
ここ最近は同窓会が原因の喧嘩でキスもお預けくらってた。
こいつには辛抱させられっぱなしだ。
久しぶりに耳元で感じる吐息だけで心臓が壊れそうだった。
赤く色づく肌を確かめるように一つ、また一つ・・・
昨日中断された時間を取り戻すつもりですべての素肌にキスを落とす。
「アッ・・・」
漏れ聞こえる牧野の声に煽られる。
「気持ち・・・わる・・・い・・・」
わる・・・?
気持ち悪い?
俺・・・気持ち悪いって言われたのか?
気持ちいいの間違いじゃないのかよ!
いったい何の冗談だぁーーーッ。
それ!禁句だぞ!
組み敷いていた身体を微かに離し牧野の表情をのぞき見る。
眉をひそめて瞳は薄く閉じかかっている。
苦しいような・・・
せつないような・・・
愁いを含んだ様な表情にギュッと心臓をつかまれた。
バカなこと言いやがって・・・
そう思った瞬間に牧野の表情がゆがんだ。
「吐きそう・・・」
火事場の馬鹿力みたいな勢いで胸を思い切り押されてた。
洗面所にかけ込む牧野を呆然と見送る。
夜は一人で寝込んで取り残された。
起きたら起きたで今度は二日酔いかよ。
それもまだ最後までいってねぇッ。
中途半端で取り残された俺のエネルギー。
どうするんだーーーーーッ。
どうにかしててくれ!
「ごめん」と、真っ青な顔で牧野が洗面所からそっと顔を出す。
この状況じゃ・・・
続きは・・・
無理だろうな。
いったいどんだけ飲んだんだ。
これなら寝込みを襲った方がましだった・・・。
もう二度とこいつには飲ませねぇーーーーーッ。
-From 2-
「牧野、大丈夫だったか?」
呑気な顔して西門さんが登場。
昼休みの大学のラウンジ。
この前からの憂欝な気分は引きずったままだ。
「最悪だったけどね」
渋々返事を返す。
「あっ!それより道明寺と写っている写メて西門さんが撮ったんだよね?」
「ああ、劇的なシャッターチャンスだったからな」
ニンマリとなる西門さんに顔が熱くなる。
「まだ持っているの?」
「もち」
焦り気味の私とは対照的にやけに楽しそうに西門さんから言葉を返された。
「削除してよね」
ムッとした顔で言っていた。
「別にいいけど、あきらにも類にも送ってやったぞ」
「うっ・・・」
言葉も出ない。
確かに送ったのが道明寺だけのはずないよなこの人の場合。
今さら削除してもらっても意味ないじゃん!
もっと早く気がつけばよかった。
酔っ払ってて無理だっただろうけど・・・
きっと道明寺に送った瞬間に一斉送信されていたことだろう。
同窓会の最悪の思いでがまた一つ追加されてしまった。
道明寺の同窓会行くな!から始まって・・・
同窓会の店に道明寺が来てると知って・・・
焦って水と間違えてお酒を飲んで・・・
酔っ払って・・・
道明寺に迫ったらしい記憶にない実態。
ホテルで道明寺に迫られて吐き気に勝てず洗面所を占領した。
その結果・・・
道明寺の機嫌を損ね、すねられた。
もし・・・
道明寺が機嫌よく私を同窓会に送り出してくれていれば・・・
もし・・・
道明寺が同窓会のお店に来ていなければ・・・
私は酔っ払う醜態なんか見せることもなく、道明寺に迫られることもなかったはずだ。
そう考えるのは責任転嫁だろうか?
いや!そんなことはない!
悪の根源はやっぱり道明寺だ!
今日会っても無視を決め込む!
悪いのは私じゃなくて道明寺なのだからッ!
「牧野・・・顔・・・怖いんけど・・・」
鼻の先に西門さんの顔が迫ってきて慌てて視線をそらした。
「すげ~不細工になっている」
それが親友の彼女に対する感想かッ。
あなた達に比べられればどうせたいした顔じゃないですよ。
「生まれつきだからッ」
ブスっとした顔ですねてしまった。
お構いなしに失礼な笑い声が周りを包み込む。
「やけに楽しそうじゃねぇか」
不機嫌の塊みたいな道明寺がドカッと私と西門さんの間に割って入る。
「な・・・なにか用?」
きつい口調を必死で作る。
「あッ!」
「お前ら、喧嘩してんの?」
「別に、してねッ」
「司、それじゃあ、お前の不機嫌の原因はなに?」
「総二郎、お前には関係ねぇ」
「ふ~ん」
「司・・・やさしくだぞ」
なにを感じたのか知らないが西門さんは意味深な表情を残して去っていく。
後に残された私には気まずい感じの思いだけが心の中に渦巻き始めていた。
-From 3-
「写真・・・」
「あっ?」
「この前・・・携帯で見せてくれたの・・・」
思い出したくもない私が道明寺を襲ってるようにしか見えない写真。
「花沢類にも美作さんにも送ったんだって・・・」
「総二郎も暇だな」
「暇って・・・私はすごく恥ずかしいんですけど」
「気にしなくてもいいと思うけどな」
「俺らの関係はあいつらも知ってる訳だし・・・」
「それに・・・自分でやったんだからしょうがねえだろう」
それを言われれば立つ瀬がない。
自分が全く覚えてない事で危機に立たせられるのは何とも後味が悪いものだと初めて知った。
「覚えてないし・・・」
「お前、それで全部片付けようと思ってるんじゃないだろうな?」
身を乗り出す感じで道明寺の顔が近づく。
「いや・・・そうは思ってないけど・・・」
「酔っ払って迷惑をかけたのは謝る」
「謝るけど・・・酔っ払ったのは道明寺のせいだからね」
「なんで俺のせいになるんだ?」
思いっきり不機嫌に顔をしかめられた。
「西門さんから道明寺がいること聞いて焦って水と間違えてお酒を一気飲みしたんだもん」
「お前が俺に内緒にしてるからだろう」
「それは、同窓会に行くの反対したからでしょう!」
また振り出しに話が戻っていた。
この喧嘩、今まで何回同じ言い合いをしたことだろうか。
もういい!
諦めた!
決着見えないし、つかれるだけだ。
体力消耗、ストレスが重積するのが関の山だと気がついた。
フーとため息ついてテーブルに顔をうつぶせた。
「おいどうした?」
心配そうな声が耳元で聞こえる。
「もう・・・いい・・・」
道明寺が私に見せる嫉妬心は今に始まった事ではないわけで、それはF3が私に対する反応にしても同じだ。
嫉妬するのが愛情の裏返しと思ってる節があるからなおさら始末が悪い。
独占欲が強いのも一つの個性と甘んじて受けよう。
そうじゃないとこの先付き合って行けないような気がしてきた。
「仲直りしよう・・・」
頭を上げた先で道明寺の心配しそうな色を漂わせた瞳とぶつかった。
「なんだそれ?」
拍子抜けしたような道明寺の顔に私の口元がほころぶ。
「道明寺だから・・・」
「あっ?」
「どうしようもないわがまま言われるのも道明寺らしいって諦めた」
わがままなことも・・・
強引なとこも・・・
子供みたいにだだをこねだすところも・・・
その裏に私に対する愛情があると分かるから受け入れられる。
「だから・・・仲直り・・・」
言い終わる前に柔らかい唇の感触が私の唇を覆う。
「もっ!」
離した口元は「仲直りだろう」と、小さく形を変えて音を発する。
「このくらいで今さら顔を真っ赤にするな」
そう言っている道明寺の顔も私に負けないくらい真っ赤になっていた。
「でもなぁ・・・」
「あんまり束縛されると嫌いに・・・なるかも・・・」
寄せあった鼻の先、冗談交じりで言ってみた。
「へっ~ お前俺を嫌いになれるんだ」
「別にかまわないぜ」
「えっ!?」
鼓動がコトンと音を立てる。
思いもよらなかった道明寺の反応。
てめ~本気か!とか・・・
冗談じゃねッ!て・・・
ムッとする反応を予想していた。
焦り気味になって鼓動の動きが早さを増す。
「また俺を好きにさせる自信あるから」
隠しきれなかった動揺を包み込むように道明寺の腕に抱き寄せられていた。
この題名『君は僕を好きになる』に、どう絡めるか考えながらお話をかんがえていました。
ようやくいい感じにまとまったかなとホッと一息
当初
Maybe you will love me と題名を付けてしましたが、道明寺ならたぶん好きになると言うよりは絶対好きになる
だよなと思いなおしMust be you will love me に変更してみました。
「?」と思わせてすみません(^_^;)