第1話 100万回のキスをしよう!23

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-From 1-

どうにも熱くてたまらない道明寺の腕の中。

今さら私の事を自分のものだと主張する必要がどこにあるのだろう。

どう転んでも今日は二人の披露宴だ。

二人は夫婦で離れようもない。

私は道明寺のもので道明寺は私のもの?

全く照れるしかないじゃないか。

「本当にもう相変わらずバカね」

「お姉さんは恥ずかしい」

「つくしちゃんおめでとう。こんなしょうもない奴けどよろしくね」

道明寺のお姉さんがにっこりとほほ笑んで歩み寄る。

道明寺の腕が焦った様に慌てて私を自由にした。

「おめでとうって俺にはなくてバカ呼ばわりか」

愚痴る様に言いながらも口元をほころばせている道明寺。

やはり椿お姉さまは特別らしい。

「それで充分でしょう」

「こんなにいい男達がそろってたのにあんたを選んで結婚してくれたんだから感謝しなきゃあ」

F3を見回して道明寺をバカ呼ばわり。

道明寺の姉さんじゃなきゃ出来ない芸当だと感心する。

F3のみんなも姉弟のやりとりに慣れているようで口元を緩ませる。

ずっと私たちを見守って応援してくれたお姉さん。

道明寺になにを言っても心の中は私たちの結婚を一番に喜んでくれているに違いない。

「たまにはほめてくれても言いんじゃねぇの?」

唇を尖らせてすねる様な仕草を見せる道明寺に思わずほほ笑んでいた。

どうみても姉に甘える弟の図。

この人の前で道明寺が頭が上がらないのもうなづける。

「そうね・・・」

しばらく考える素振りを見せるお姉さん。

「つくしちゃんを結婚相手に選んだことをほめてあげよう」

「やっぱり、つくしかよッ」

周りからドッと笑い声が上がる。

「結婚式には出席できなくてごめんね」

そう言いながらお姉さんが私を抱きしめた。

「本当におめでとう」

「ありがとうございます」

お姉さんから伝わるやさしさに思わず涙がこぼれそうになった。

「司が泣かせるようなことしたらすぐに言うのよ」

「私はつくしちゃんの味方だから」

最初に会ったときからお姉さんはやさしくて・・・

心強くて・・・

暖かくて・・・

親身になってくれた。

道明寺とはえらい違いだ。

このお姉さんの胸の中で泣きながら道明寺の事が好きだと告白したことを思い出す。

私も一途だよなぁ・・・

若気のいたりじゃないことを祈ろう。

「俺がつくしを泣かせるわけないだろう」

姉さんから私を取り返す様に道明寺の両腕が伸びてきた。

もう誰にも獲られてたまるかみたいな感じで私の背中を道明寺の腕が包み込む。

「警戒心むき出しだな」

美作さんがクスッと笑って西門さんに同意を求めてる。

「誰も獲らねぇよ」

それに同調する様な西門さん。

「命が危ない」

ぼそっと言った花沢類の言葉に反応するように周りから明るい笑い声が聞こえだす。

私たちの事をすべて知って応援してくれた最高の友。

あったくて、まるで拍手されているような笑い声。

私たちを祝福するように上がっていた。

 

-From 2-

お祝いの打ち上げ花火が夜空を染める。

それを合図にゆっくりと豪華客船は港を目指す。

甲板から眺める色とりどりの花火に目を奪われた。

「花火よりおもしろいもんあるぞ」

あきらに誘われてつくしと二人で入りこんだ一室。

暗闇の部屋から「パン!」「パン!」と上がるクラッカーの音に迎えられた。

親しいものだけの2次会だと総二郎の声。

明かりのついた部屋には俺の家族につくしの家族。

総二郎、あきら、類のいつものメンバー。

滋に桜子、優紀に団子屋の女将さん。

西田にタマ。

ついでにつくしの弁護士仲間に松岡公平までいるって用意周到だ。

F4プロデュースのこれが披露宴だってあきらが自信満々に宣言した。

マイクを持ったあきらがアナウンサーなみのノリを見せる。

まずは二人の馴れ初めからって、正面の1段高い小舞台。

目の前に立つのは総二郎とあきら。

「自分で稼いだ事もないガキがーッ」

ファイティングポーズ作った総二郎の拳があきらの左頬に突き刺さる。

倒れ込んだあきらが「本気で殴るな!」と愚痴ッて笑いを誘う。

あきらが俺で総二郎が牧野?

「これが司が牧野惚れた瞬間です」

周りからは笑いしか起きてねぇーぞ。

「分かる~」って最初に声上げたのが姉貴って・・・

どんな感覚してるんだ。

次々に暴露される俺達の歴史。

初デートのエレベーターに閉じ込められての一泊。

あくる日道端で別れ際にキスしようとしてつくしに逃げられた。

桜子にはめられて骨まで折ってつくしを守った。

治らないふりしてつくしに世話させたことが途中でばれて殴られた。

ばばぁの妨害。

俺の抵抗なんてたかが知れていた。

雪山の遭難にプロポーズ。

「俺様と結婚しろ」

「私があんたを幸せにしてやるよ」

お前らでやるなぁぁぁぁぁ。

思い出が変異してしまいそうだ。

「もう!ヤダーッ」

つくしは真っ赤を通り越して卒倒寸残だ。

良くここまで調べたもんだ。

情報源は余裕で難しいことじゃなかっただろうけど。

俺達・・・

バカがつくほど周りに喋ってたんだと今さらながら気がついた。

「俺からは歌のプレゼント」

ピアノの前に座って弾き語りの類。

初めてこいつの歌声聞いた。

ポップな聞きなれた曲をジャズにアレンジした恋の歌。

歌手になれるぞ。

ほれぼれした顔で聞きいってうっとりって・・・

そんな顔を見せるんじゃねぇーッ

思わずつくしの耳をふさぐ。

つくしに邪魔するなとばかりに手で払われた。

湧き上がる拍手。

しょうがねえぇから一緒に拍手する。

結婚してまで類を意識するなんて情けねぇ。

「次は大河原滋さんから一言」

あきらの進行で舞台に進みでてマイクをしおらしく滋が受け取る。

「私・・・司の元婚約者でーす。つくしとも親友でした」

内容の割には明るすぎる声色。

知らない奴が聞いたら固まるぞ。

余計すぎる修羅場を想像しかねない。

案の定弁護士仲間は息も飲むのも忘れてる。

「司の想い、つくしの想い感じて私は身を引きました」

「今では良い思い出です。この事で私も大人になれました」

手を振りながら俺らに笑顔を向けて「おめでとう!」って・・・

ありえねぇ祝辞からの展開に思わず苦笑い。

当事者しか分からないであろう心情。

こいつには本当に迷惑をかけた。

傷つけたしまった後悔。

あの時の俺は馬鹿で頼りなくってうまく立ち回ることなんて出来なくて・・・

ただ・・・ただ・・・

つくしを傷つけることだけが恐かった。

俺達の想いを含んで自分から去って行ってくれた滋。

どれだけ苦しめたのか・・・

今なら想いやれる気がする。

それでも俺が選んだのはつくしだろうけど。

一人一人の思い出の出来事。

会社でのバカげたやりとり・・・

社員食堂の出来事まで会社外で喋るんじゃねぇーッ

さすがにおふくろがため息ついて西田が恐縮するようにハンカチで額の汗を拭いている。

笑い声の絶えない空間。

祝福の声に包まれて幸せ噛みしめる。

これからずっと二人一緒に歩いて行こう。

この幸せを思い出しながら・・・

1秒、1分を永遠に・・・

二人見つめ合って・・・

助け合いないがら・・・

永遠につくしと俺、二人で生きていこう。

つくしを見つめてもう一度そう心に誓かった。

 

-From 3-

いったいどこまで出てくるのだろう・・・

この暴露的お話。

これが二人のファーストキスでしたって・・・

体勢を崩して倒れる西門さんの上に覆いかぶさる美作さん。

角度によってはもっともらしくキスしてるように見えてしまう。

もしかして・・・

二人はそんな関係?

まじまじと見つめる私の目の前ガバッと突然起き上がった美作さん。

「してねぇから変な勘違いするなよ」

その下でわざと西門さんが唇をぬぐう仕草。

どこからともなく笑いが起きる。

嘘みたいな、突然事故にあったようなキスだった。

静香さんのパーティーでの出来事。

偶然!

突発的!

漫画的!

笑い話にもできずに泣いていた。

あの時はまだ完全に私の心は花沢類に向いていた状態。

好きな人の目の前で唇を奪われるなんてありえない展開。

私のファーストキスの淡い期待は露と消えた最悪の出来事。

道明寺に言わせれば唇を奪ったのは私らしいが・・・。

今思えばいい思い出にかわったか?

道明寺にとってもこれがファーストキスって、本当だろうか?

西門さんと美作さんがいうのなら間違いはないかもね。

でも・・・

私たちの本当のキスは道明寺がNYに飛び立つ飛行場でのキスだったよね。

涙の味がした。

あの数か月後本気で泣かされるとは思わなかったけど・・・。

「これで司は完全に牧野のものになりました」

それは言いすぎだと思うぞ美作さん。

あの後って・・・

私が自分に惚れてると勘違い気味の道明寺の行動。

人を誘拐気味に屋敷に連れさって1億かけたって豪華なドレス眠ってる間に着せられた。

通学路を待ち伏せしたり・・・

いきなりデートに誘ったり・・・

ストーカーで訴えられても仕方がない破天荒な行動。

良く耐えたものだ。

私の横で照れもせずまんざらでもない表情を道明寺は浮かべてる。

照れもせず、笑って聞いてられる道明寺の神経のずぶとさ。

称賛出来る筈がない。

身体全身がむずがゆくて、真っ赤になっていく。

「二人で初めて迎えた朝は司が大学3年の夏」

なんでそんなこと知ってんのよーーッ!

「牧野の体の変化に気がついた司に質問されて、俺達もさすがに照れーーーー」

「もうそれ以上ヤダーーー!」

「ガタン!」

叫んで座っていた椅子を転がして立ち上がってた。

「バハハハハ」

タマ先輩はバカ受けで大笑い。

手を叩いて喜んでいる。

いったいどこまで全部F3には筒抜けなのだろう。

知られてないことの方が少ない気がした。

「今さら照れるなって」

「そっちの方が恥ずかしいぞ」

こんな暴露話を平気で笑っている道明寺の方が私は恥ずかしい。

「結婚式の後、幸せな結婚生活が送れる筈でしたが、すぐに別居生活に司の浮気騒動」

「この二人にはなにかと目が離せません」

「われらみんなで暖かく見守っていきましょう」

祝辞の様な祝辞でない様なお祝いメッセージ。

さすがにこれには道明寺も苦笑い気味だ。

「お前らに見守ってもらう必要はねぇよ」

言った先から道明寺の頬が緩んでいる。

「俺達は最高に幸せだ」

道明寺の腕がしっかりと私の腰をつかんで抱き寄せる。

「だから邪魔するな」

いい終わらぬうちに道明寺の唇がそっと私の唇と重なった。

照れて腰を引こうとする私を道明寺の腕が強く抱いてまた引き寄せられる。

歓声と拍手の中、みんなに催促される様にもう一度二人キスを交わしていた。

続きは100万回のキスをしよう24

*「牧野の体の変化に気がついた司に質問されて、俺達もさすがに照れーーーー」

のお話は短編 『内緒の話をさせてくれ』でご確認くださいませ~。

今回もずく様のコメントにお応えして椿お姉さまに登場していただきました。

披露宴・・・

友人代表!馴れ初めビデオ!

ち**様のリクエストにお応えして書いてみました。

いや~今回のリクエスト難しかった。

なんせ披露宴編は終わらせるつもりで考えてましたからねぇ(^_^;)

お話はまだ考えてませんでしたが急きょお話の思考を練り直しました。

構成に数時間、私としては最大記録かな(爆

こんなもんでお許しを~