第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 6
*-From 1-
「どんなことを言っていた?」
唇をムッと結んで目を大きく見開いたまま俺を見つめる。
瞳の中に戸惑いの色を見つける。
いじめたい衝動。
しかたねぇ。
困った顔も・・・
笑った顔も・・・
怒った顔も・・・
その瞳がじっと俺を見つめる瞬間。
瞳の奥に俺しか映っていないことが無性に俺を喜ばす。
俺意外を見つめるな。
こいつの意識を俺だけに集中させたくて強硬になる。
「教えろよ」
逃げないように詰め寄った。
「それはしょうがねえだろう」
「牧野を襲わせた張本人より助けた類の方が好感度UPするのは」
「自業自得ってやつだ。悪口言われても仕方ねぇぞ」
あきらから野次を飛ばされて「チッ」と、舌打ち。
「お前らには聞いてねぇ。邪魔するな」
「昔の事でしょう!今さら怒らないでよ」
あきらから助け船を出されて牧野が息を吹き返す。
そして頬を膨らます。
豚まんみてぇーな、ツラ。
俺にそんな顔見せる女はお前だけ。
周りの女は俺の機嫌をとる様に作った顔しか見せねェし、そんな顔にはピクリとも興味が湧きはしない。
見るだけで時間のロスだ。
こいつならどんな表情も俺はイチコロで参ってしまう。
かわいくてかぶりつきてぇーーーッ。
思った時点で負けている。
それでも必死に我慢して負けたくないのは俺のプライド。
牧野から先にごめんと言わせたい。
「今とか昔の問題じゃねぇ!俺の悪口を言ったのが問題なんだ」
こうなったらただの言いがかり。
そうわかっているのに止まらない。
「しょうがないでしょう!あの頃はあんたの事!大っきらいだったんだからッ!」
「言うに事欠いて俺様を大っきらいだと!俺はお前の彼氏だろうがッ」
「嫌いだったんだからしょうがないでしょう!」
エスカレート気味に言葉が荒くなる。
ますます俺から引ける訳ない。
「はいはい。夫婦喧嘩は後でお願いします」
にらみ合う俺達二人の間を総二郎が割って入る。
「私達まだ結婚してないし!」
「いずれするんだろうっがッ」
総二郎をそっちのけで牧野の言葉に反応する俺。
「無視された~」
泣き真似してあきらに助けを求めんじゃねえよ。
お前に同情なんてだれもしねぇし。
「相手しねェで帰るぞ」
呆れたようなあきらの声。
牧野がギョッとなって「私も~」って、歩き出すあいつらに手を差し伸べる。
「まだ終わってねえぞ」
その手をつかんで俺の胸に強引に引き寄せた。
そのまま歩いて行くあいつらの背中を見送る。
「な・・・なによ!」
強気な目で牧野が俺を見上げて睨んでいる。
「今は?」
「はぁ?」
「今は俺の事は嫌いじゃねえよな?」
「えっ・・・?」
強気な瞳が潤んでやさしくなった。
「キライ・・・じゃない・・・」
「じゃなきゃなんだ?」
いい加減俺も意地悪だ。
照れて困った表情の牧野が愛しくてもっと困らせたやりたくなる。
「言わないと自由にしてやんねェ」
牧野を抱いた腕に力を込めた。
「・・・好きだから・・・」
牧野が耳まで真っ赤になった。
「あっ?聞こえねぇ!」
「好き」
観念したように牧野が背伸びして耳元で囁いた。
離すなんて出来やしない。
体中が鼓動を打って悲鳴を上げそうだ。
「自由になんてしてやらねぇ」
隙間なく牧野をギュっと抱きしめる。
「うそつき」
照れたように笑ってじっと見つめるこいつの表情を誰にも見せたくなくって、頭ごとしっかりと懐の奥にギュっと包み込む。
抱き合う天上の夜空に「パーン」と大きな花を咲かせて花火が散っていく。
音に惹かれるように見上げた花火。
「綺麗だね」
牧野が小さくつぶやいた。
そして・・・
誰にも見せたくなくって・・・
獲られない様に・・・
また・・・
懐の奥へ牧野を抱きしめる。
-From 2-
「もうそろそろ終わりだね」
最後の仕掛け花火のナイヤガラを見ながらつぶやいた。
道明寺はずっと私の手を握ったまま離してくれない。
いつの間にかみんないなくなって私達二人っきりだ。
周りの見物客もぞろぞろと家路に向かい出している。
「気を利かせたんだろう」と道明寺は鼻歌でも歌いだしそうに機嫌がいい。
私達も人の流れに沿う様にそのまま手をつないで歩き出した。
かき氷を一つ買って二人で食べる。
スプーンですくって道明寺の口の中へ運んだイチゴミルク。
それをうれしそうに食べる道明寺があどけなく笑う。
まるで子供のように。
「食べながら歩くって初めてだ」
「これだから坊ちゃんは・・・祭りの楽しみじゃん」
私もつられる様に自然と顔がほころんだ。
「今度は俺が食べさせてやる」
私の手からかき氷をとって口を開けって催促する。
素直に開いた口元の少し上、鼻の頭にスプーンをつけられた。
「わざとでしょうッ!」
「スマン、手が滑った」
鼻の頭に赤いかき氷、ペロッと道明寺の舌がそれをすくい取る。
ニンマリ笑って「うまい」って・・・
やっぱりわざとだ。
結んだ唇にスプーンですくったかき氷が接近する。
「ウップー」
避ける間もなくて唇に氷をくっつけてしまってた。
思わずつぶったまぶたを開いてみれば、そこには道明寺の顔が真ん前で唇が触れ合ってる感触。
思惑通りに事を運ばれてしまってる。
「こちちの方がうまい」
最初から狙ってた?
クスッと満足そうに笑みを浮かべる道明寺になにも言えなくて、血液が体中を駆け巡る。
「子供みたいなことやんなんで!」
「大人がやることならいいのか?」
覗き込むように顔を近づける道明寺。
「早く二人っきりになりてェ」
腰にまわされ道明寺の腕の温もり、力強さ。肌に伝わる感覚は敏感さを増している。
バクバクだ。
心臓の鼓動が早まってどうしようもなくなってきた。
道明寺が言おうとしてることは明白で・・・
分かりきっていて・・・
拒む理由もなくって・・・
そしてまた鼓動が速さを増す。
雲の上を歩くような感覚で半分道明寺に身体を預けるように歩いてた。
気がつけばホテルの部屋の前。
ゆっくりとドアの開いた部屋の中。
・・
・・・・
・・・・・・・・?
やけに明るい。
「ヨッ!待ってたぞ!」
テーブルの上にはお酒に食べ物。
その周りのソファーに西門さん美作さん、花沢類に優紀まで全員勢ぞろい。
みんなで和んでいる。
「てめぇら、出て行けぇーーーーッ」
青筋たたて道明寺が叫んでいた。
-From 3-
「わーあーーーッ」
声にならない声上げていた。
焦っていることは隠しようがなく、さっきまでの熱い火照りとは違う熱さが私を襲う。
「二人の時間作ってやったろう」
「「なぁ」」
西門さんと美作さんが顔を見合わせてニンマリ。
「二人仲好くおててつないで帰ったってことはすんなりうまくいったってことだろうがぁ」
美作さんの声に慌ててつないでた手を振りほどく。
「何放してんだ!」
さっきの切れた調子そのままに道明寺に睨まれた。
「でっ・・・なにをしてた?」
西門さんが道明寺にまとわりつくように首に腕をまわしてる。
なにをしてたって・・・
なにもするかッーーーーー。
あっ・・・
キスはされたんだ・・・
でも・・・
あれキスなのかぁ?
単に唇についた氷を食べられただけ!
そんな言い訳通じないよなこの人たちには・・・
変なことは喋るなと祈るような気持ちで道明寺を見つめる。
なにもしゃべるな・・・
喋るな・・・
喋るなーーーッ。
届くはずのないテレパシー。
真面目に念じてみる。
眉を寄せてしかめっ面で道明寺を睨んでしまってる。
さっきの甘い雰囲気は花火とともに灰と散ってしまってた。
「こんな短時間でなにができる。俺は早漏じゃねえぞ」
「なにもしてねえから出て行けと言ってんだ」
キスより恥ずかしい事を言いだしていた。
「ブハハハハハーーーー」
予想以上の道明寺の反応に美作さんが膝を叩いて笑ってる。
「司・・・良く間違えずに早漏って言えたな」
受けたのはそこ?
「意味は知ってるよな?」
「いや~、それは牧野に聞いた方がいいんじゃねぇ?」
今にも笑い転げる様な雰囲気だ。
道明寺の不機嫌も織り込み済みで遊びに入っている。
道明寺と私の二人の遊びどころを着実に突いてくるからなお始末が悪い。
優紀はさすがに会話に入って来ることなどできるはずもなく小さくなって固まっている。
「それくらいにしといたら」
花沢類がいい加減にしろよと呆れた視線を送っているのだけが救いに感じてた。
「お前もここにいるんだから共犯だろう」
「俺はみんなが羽目外さないようにいるだけ」
「俺はいつでも牧野の味方だしね」
美作さんに眠たそうな雰囲気で言葉を返す。
「おい!類!なんでお前が牧野の味方だ!」
気にくわねって花沢類に道明寺がつかみかかる。
切れるのは花沢類じゃないでしょう!
事をややこしくするなぁーーーーッ。
「いい加減にしてーーーーッ」
思わず上げた声を閉じ込めるように口を押さえる。
今さら無しに出来るはずはなく・・・
部屋中に響き渡る叫び声。
シーンとなって10個の瞳がギョッと私に集中して固まった。
続きは 花に嵐のたとえもあるが・・・7 で
やっぱり・・・
簡単には・・・
いけそうもなくて・・・
こんなオチ・・・
いりませんよね(^_^;)
拍手コメント
マリエ様
こんなオチもOKと言われてそのままの流れで書いてしまいました♪
この後はしっかり甘アマで~
イケるかな(^_^;)