HAPPY LIFE 2

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-From 1-

音楽CD、絵本、いろいろあるな。

勝手に注文して届けさせた段ボールの中。

生まれるまでに全部使うなんて無理かも知んねェ。

何気なく目についた注意事項。

『胎教で一番大切なのはお母さんの心の充実です。

イライラせずに穏やかな気持ちで過ごしましょう。』

言い争いなんて出来ねーじゃねぇかぁ。

今日の言い争いの影響ねぇだろうなッ。

「道明寺・・・」

珍しくつくしが俺のオフィスに顔を出す。

西田に「おめでとうございます」と言われて「ありがとうございます」とつくしが照れくさそうにほほ笑んだ。

「さっきはごめんね」

つくしから謝るなんて珍しいこともあるものだ。

もしかして心の充実ってやつを実行中?

「道明寺なりに私の事を心配してくれてたのに」

しおらしく謝るつくしの肩に手を置いてそっと抱き寄せた。

「キャッ」

小さく悲鳴を上げてそして口元がほころぶ。

「急に抱きつかないでよ」

ちっと頬を膨らませてそしてクスッと小さく幸せそうにほほ笑んだ。

この表情もたまらない。

こんな事で身体全身にうれしさがこみ上げる。

つくしとの結婚生活で知った幸せのほんの一部分。

「抱きつくぐらいいいだろう。しばらくはそれぐらいしか出来ねえだろうし」

「キスもいいよな?」

軽くつくしの唇に吸いついた。

離した唇が小さく「バカ」と形を変える。

俺にはスキとしか聞こえねぇけど。

「ねぇ・・・妊娠中って浮気が多いんだって」

なに言ってる!?

ニヤついていた顔が真顔になった。

「お前浮気するつもりなのかぁ!」

浮気って・・・

妊娠中に出来るものなのか?

そんな相手いるのかよーーーーッ。

世の中には変な趣味の奴いるって言うし・・・

思わずよぎる妄想の世界。

なに考えてんだーーーーーーーッ。

「なにいってるの!心配してるのは道明寺の方でしょう!」

「ああ・・・俺のほうか・・・」

「えっ俺!」

「するわけねえだろうがーーーッ」

素っ頓狂に大声を上げていた。

「どうかなさいましたか」

ドアがバタンと開いて西田が慌てて飛んできた。

ノックも忘れて西田が飛び込んでくるのは珍しい。

「なんでもねぇ」

「昼間つくし様と言い争ったと聞いていましたもので・・・」

「あまり負担をおかけになりませんように」

自分の失態の正当性を俺への小言に変えてドアを閉める。

全くただじゃ起きない食えない秘書だ。

「そんな事を心配する必要ねえだろう。これまでお前にどんだけ待ったかけられたと思ってるんだ」

「ただちょっと言ってみたかっただけ」

「道明寺の事これっぽッちも疑ってないから」

瞳の中に悪戯ぽい色をにじませている。

それはそれで少しさびしく感じてしまう矛盾した気持ち。

ハンサムで女にもてて金持ちで妻は妊娠中。

心配する要素なら世界最大級じゃねえのか?

妻を最高に愛してる。

この事実さえなければだろうけど。

最強の拘束力。

「やっぱ・・・お前には勝てねェ」

こいつの好きなようにやらせよう。

強気な態度も・・・

言いだしたら聞かない性格も・・・

俺にしか見せないこいつのわがまま。

なんでも許して受け入れてしまうのは惚れた弱み。

俺は見守ってやるだけだ。

押し込めた腕の中、満足そうに悪戯天使はほほ笑んだ。

 

-From 2-

仕事を片づけ屋敷へと車を向かわせる。

いつも俺より帰りが早いつくしが今日も俺の部屋で帰りを待っているだろう。

あいつの部屋もあるはずなのにほとんどの時間を俺の部屋で過ごす。

俺の事を思ってくれる証みたいなものだとくすぐったい笑いが浮かぶ。

今日は検診だと昼から早退したんだっけ。

今頃あいつはなにをしてるのか。

きっとお腹の子供に話しかけながら俺の帰りを待っている?

それともなにか食ってるか・・・

「食べてないと吐きそうだ」って朝方はレモンをかじってた。

その前はあんパンだったよな。

あいつの嗜好の変化半端じゃないと袋いっぱいのレモンを抱え込む。

これ・・・

無駄にすんなよ。

気がつけばあいつの事にお腹の中の子供の事へ想いが行ってしまってる。

仕事以外に考える事って他にはないらしい。

俺の中の重要事項・・・

なにを置いても妊娠中の新妻のことだとは西田には言えない。

感づいてるかも知んねェけど。

急かされる様に足早に自分の部屋へと向かう。

急かせているのはつくしに会いたいと思う俺自身。

いったいどこまで行けば落ち着く事が出来るのか。

いつも仕事の書類とか、分厚い本とにらみ合ってる長細いテーブル。

珍しくつくしがいなかった。

「どこ行った?」

トイレに風呂に・・・

微かに光が漏れる中央のドアの隙間。

自分の部屋か・・・・

珍しいこともあるものだ。

鼻歌まで聞こえてくる。

「何してんだ?」

俺が帰ってきて背中越しに覗いているのも気がついていない。

「あっ!びっくりした」

脅かさないでとクスッと笑った。

机の上に広げられてる中身が無地のBOOK。

表紙にアヒル?犬?赤ん坊のイラスト付き。

「赤ちゃんの成長記録作ろうと思って・・」

今いろいろ売ってるんだよってやけに楽しそうだ。

まだ生まれてねえのになにすんだ?

まずは1ページ目って、子供が出来たって知らされた青い海の写る島の写真をぺたっと貼った。

それ・・・

俺達の成長記録か?

「ヤダーッ」

どこまで成長するつもりだってケラケラつくしが笑いだす。

「ここで妊娠の事を告げたってことは子供の存在を初めて道明寺が知ったってことでしょう?」

「最初の記念する日になるんじゃない」

いまいち分かんねェ。

それならいつどこで赤ん坊を仕込んだか・・・

それが最初じゃねえのか?

確か・・・

3か月前のあの夜あたり・・・?

言いかけたら頭をぽくっと殴られた。

次にこの前初めて見せられた何にも写ってない様なエコー写真を糊で張りつけている。

その横に日付を入れて、なにやら書き込みだした。

未確認物体とでも書き足すのか?

言ったらじろっと見て「赤ちゃんが怒るよ」って・・・

ーーーーー頬膨らませてるのはお前じゃないかぁーーー。

もう見せないからって片手でBOOKを覆ってペンを走らせる。

「俺の悪口なんて書くなよッ」

どうかなってつくしの目が笑ってる。

「見せろ」

「見せない」

「引っ張ったら破れちゃう~」

「だから隠すなッ」

緊張感のない言い合い。

どちらとも緩んだままの表情で、他人から見たらバカげたじゃれあい。

たわいない時間を楽しんでしまってた。

「二人の写真も撮って貼ろうね」

つくしがこぼれそうな顔でほほ笑んだ。

一枚一枚写真と言葉をつなぎ合わせた愛しい想い。

いっぱいになるまで二人で書き込んでいこう。

生まれてくるその日まで・・・

そしてその後も・・・

今日の検診はどうだったのだろう。

病院の院長に速攻で電話を入れて、しっかり女医に主治医を変えさせた2度目の検診。

勝手にするなとつくしをすねさせた。

「心臓が動いてた」

照れくさそうにつくしが笑ってエコーの写真を二人で見つめる。

まだ人にはなってねーぞ・・・

やっぱりなにがなんだかわからない。

言ったら殴られそうだから口をつぐんだ。

続きは HAPPY LIFE 3 で

私としてはゆっくりのペースですが、こちらのお話もぼちぼちと進めていきたいと思います。

楽しんで頂いているでしょうか?

違う時期を書くと言うのもなかなか難しいもので(^_^;)

二人の関係、愛情の違いを考えて書いているのですが、ごっちゃになりがちで~

時間の流れを現すのって大変だ~

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拍手コメントお礼

ともとも様

楽しんでもらえてうれしいです。

楽しくなるようなつかつくの会話たくさん書きたいお話です。

子供が生まれるまでのお話ですがお付き合いをよろしくお願いします。