大学の中心で卒業できないを叫ぶ 8
*「お前等に関わってると、ろくなことがない」
「それはこっちの台詞だろ」
道明寺の我儘も笑って流して受け入れる。
末っ子を包み込むような寛容さ。
「久しぶりに、司に会えて牧野もうれしいでしょ」
私の横に並んで立って、じゃれあう道明寺と西門さんと美作さんを目を細めて花沢類と二人で眺めてた。
「おい!類!牧野に手を出すなよ」
花沢類に指先を付きつけて道明寺が数メートル先で叫ぶ。
「ちょっと!」
横暴な言葉を投げながらも道明寺がいない時にはしっかりと私のボディーガードを花沢類に頼んでるのは知ってるんだから。
自分が私の傍に帰ってきた途端にこれって、花沢類に悪いって思わないのだろうか。
「相変わらずだね」
「我儘なだけだから」
そう言って微笑む花沢類に私も笑顔で答える。
平和で穏やかな時間。
「帰るぞ」
大股で近付いてきた我儘な奴が目の前で優しい眼差しに変わった。
最初から素直に俺の言うとおりにしておけばよかったんだ。
牧野を見つけた図書館の前。
そこから素直にうなずいて俺の後ろをついて来る牧野なんて想像できねェか・・・。
勉強じゃなければバイト大体この二つが口癖みたいに憎たらしく口元から飛び出してくる。
「バイトをする必要なんてないだろう」
英徳の学生でバイトをしてるやつってこいつくらいのもんだ。
「道明寺にお金をもらう理由はないから」
「お前は俺の婚約者だ」
こんな言い合いを続けても牧野の頑固さは変わるわけはなく、いい加減俺もあきらめた。
無理強いすれば「結婚しない」という爆弾のスイッチを牧野は握ってる。
牧野が大学を卒業するまで待つという条件を飲まなければ良かった。
その前に俺が大学を卒業するまではあのおふくろが俺達の結婚を許すはずがない。
「この四年間でつくしさんには道明寺の嫁の務めをしっかり身に付けてもらいます」
おかげでますます牧野と二人の時間は減少中。
たまにできるこの時間がどれだけ大事かって分かってるのだろうか。
一分、一秒でも一緒にいたいって普通は牧野!お前が思うものだろうッ!!
「幸せ~」
頬が落ちそうな表情を浮かべてホォークに突き刺した肉を牧野が口に運んで呟いた。
俺と2人で向かい合って食事がしたいって女性は多々。
俺が一緒に食事をしたいやつは目の前でステーキをうっとりと見つめる。
見つめる相手は俺だろうがぁぁぁ。
食事が喉を通らないとか、味も分らないくらいにドキドキするとか言ってみろ。
「やっぱり、肉が違うんだね」
全然俺を見てねェし。
肉にまで嫉妬するとは思わなかった。
グンとフォークを突き刺した肉は口の中で力を入れなくてもすぐに溶けて喉の中に流れる。
「なぁ、お前は俺より食事に夢中なわけ?」
「えっ?」
意外そうに俺を見つめる表情が俯き加減に動いて頬を染める。
「久しぶりだし・・・」
牧野の視線の先にはステーキ。
「いい加減食べ物から意識が離れねェのかよ」
「違う!」
「道明寺と会ったの久しぶりだし、なんとなく間がもたないって言うか、緊張するって言うか・・・」
「二人でいられるのはやっぱりうれしいし・・・」
俺からは見えない牧野の表情が無性に気になる。
ガタッと音を立てて後ろに引く椅子。
そのまま牧野の傍に数歩歩く。
牧野の顎に手を添えてもたげる顔。
表情がライトに照らされて凹凸がわずかな影を作る。
ゆっくりと持ち上がった睫毛の奥から潤んだ漆黒の瞳に俺が写り込んでいく。
身体の奥から湧き上がる感情。
その瞬間にさっきまで抑え込んでいた欲情を吐き出したくなる。
「どれだけ、俺に我慢させる気だ」
開きかけた牧野の唇を親指の平でゆっくりとなぞる。
ふっくらな弾力が指先を刺激する。
その唇がどれだけ甘く俺に応えるか、熱い吐息を漏らすか、俺だけが知ってる。
きっと牧野も今は俺と同じ気持ちだと信じたい。
心音が早く波打つたびに熱が体中に広がりを見せる。
何度抱きあっても抱き足りねェって思いながら迎える朝。
ここからすぐに牧野を抱き上げてベットに倒れ込めばそれでいい。
牧野の顔を覗き込むように腰を折って眼を閉じる。
触れた牧野の口内から甘いワインのアルコールの香りが鼻をくすぐる。
牧野を椅子から立ち上がらせるように牧野の身体に回した腕に力を込める。
「道・・・明・・寺ッ」
わずかにずらした唇から漏れる声。
息の合間から俺を呼ぶ声に煽られる。
声をすくい上げるようにもう一度唇を重ねあった。
貞操の危機を脱した坊ちゃんにご褒美!
休みの間のパターンはこの後、時間がワープ♪することが多いんですよね。(^_^;)
拍手コメント返礼
なおピン様
風邪は大丈夫ですか?
お大事にどうぞ。
つくしちゃんが素直にべったりと司にできることって、あるのでしょうか?
その分司が直球ですけどね(笑)
またメールします♪