第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 10
*-From 1-
後5分・・・
後3分・・・
もうちょっと・・・
どのくらい抱きしめられていたのか・・・
分からなくなっていた。
ノックする音で我に返った。
「・・・もう・・・いいでしょう?」
「邪魔な奴らだ」
不満そうに唇を尖らせながらも機嫌よく頬は緩んでる。
「顔ッーーー」
「あっ!別にいいだろう。俺がふてくされてる方があいつら心配するぞ」
ニンマリした顔にもうなにも言えなくなった。
今さらしょうがないという思いも頭の片隅に植え付けられてしまってる。
ドアのノブを回して部屋の中に道明寺がみんなを招き入れる。
「これからなにしようか?」
「牧野はなにかやりたいことある?」
花沢類が私の鼻先に顔を近づけた。
「ウォー!類!牧野に近づくなぁッ」
誰にもやんねぇみたいな雰囲気に道明寺の腕をきつく巻きつけられる。
「相変わらずだな」
「だなっ」
相変わらずなのは西門さんと美作さんのおふたりさんだと思うのだけど・・・
「海にでも出るか?」
「ここの近くのヨットハーバーに俺んちのボートがあるぞ」
「お前らに任せる。俺はこいつがいればどうでもいいから」
私の肩から手を離そうとしないまま美作さんに視線だけを道明寺が移した。
さらりとしたまま何気なくスルリと動く道明寺の指先。
あんまり触わらないでぇーーーッ!
ーーーと・・・叫びたくなるのを必死でこらえてる。
私の傍から離れてくれそうもない道明寺の横顔を恨めしく見つめてみる。
にっこりとほほ笑んで見つめ返されてなにも言えなくなって顔が熱くなってきた。
ホテルにいるよりボートの方が危なくなさそう。
無難な気がしてくる。
いや・・・
ボートって・・・狭そうな感じだし・・・
場合によっては道明寺との密着度が上がる可能性が・・・ある!
みんながいるし・・・
いくらなんでもでも変なことにはならないだろうと自分に言い聞かせた。
ボートと言っても手漕ぎボートでないのは当たり前。
いったいいくらするのだか。
値段を聞いたら卒倒しそうだから止めてみた。
ボートの中は革張りの10人掛けくらいのソファーが置かれてる。
急に手配したからたいしたこと出来ないぞと言っていた割には、乗務員から料理人まで抜けがない。
私たちの手をわずらわすことは全くないほど完ぺきだ。
こんなところは美作さんらしい。
抜ける様な青空に地平線には入道雲。
軽快な早さでボートは沖を目指す。
照り返す日差しが肌を焼く。
中で出される料理は有名レストランに引けを取らない豪華さだ。
シャンパンを片手に道明寺が私の横にいる。
デッキで並んで波間を飽きることなく眺めてた。
「なあ、釣りやらない?」
「競争して、1番大物吊り上げた奴の言うこと聞くってどう?」
美作さんがニンマリと言い放つ。
「絶対ヤダーーーッ」
花火で失敗したことが頭に浮かぶ。
線香花火の落下順位で美作、西門ペアに私と優紀に花沢類の対抗戦のはずだった。
最後まで花火が落ちなかったのは花沢類。
喜んだのもつかの間「俺の言うことを聞いて」と花沢類に裏切られた。
それから私たちはバイトを途中で止めさせられて今こんなことになっている。
人が聞いたらうらやまれるのは間違いないが・・・
なにかが違う・・・
そう思ってしまっている。
「競争なんてしないからぁぁぁぁぁ」
一人で声を張り上げていた。
-From 2-
なに大声を張り上げている?
耳をつんざくような牧野の大声に思わず耳を塞ぐ。
「そんなに嫌なのかよ?」
「面白そうだぞ?」
「負けたらヤダもん」
「俺がいるのに負ける訳ないだろうッ」
「道明寺は釣りをやったことあるの?」
「そんなもんやるわけねえだろう」
はぁ・・・と大きくため息をつかれてた。
なんなんだその馬鹿にした様な呆れたような視線。
魚なんて海にはあまるほどいるだろうがーーーッ
「タイでもマグロでもクジラでも任せとけ!」
言った先から総二郎とあきらが馬鹿笑いしやがった。
「いくらなんでもクジラはねえぞ」
「それにここにある釣竿じゃうまくいってタイだろう」
「司にはイワシも釣れねぇぞ~」
「魚には道明寺の力は通じねェ」
二人で膝を叩いて喜んでいる。
「上等じゃねえか、俺が勝ったらなんでも言う事を聞かすぞッ」
「司の場合は勝たなくてもわがまま放題だろうがぁ」
「俺達が勝ったら・・・」
総二郎とあきらの思惑ありげな表情が俺を煽る。
「何でも言いなりにやってやる」
今にも噛みつきそうな剣幕で吠えていた。
「道明寺ッ!なに言ってんのよ」
「釣りなんてしたことないんでしょう!」
「ああ、大丈夫だろう。初めてで大勝ちすることあるだろう?なんとかっていったよな?ビキニ・・・ラック?」
「それ言うならビギナーズラックでしょう!」
「この賭けには私は関係ないからね」
泣いてるのか怒ってるのかどちらか一つにまとめたらいい様な顔で牧野が俺を睨みつけている。
俺が勝ったら・・・
こいつら追い出して牧野と二人で残りの休日を過ごす。
いい想いが出来るじゃないか!?
最高の褒美がぶら下がっている。
俺が負けたらどうする気だろう・・・。
「お前らが勝ったらどうする?」
「「勝てからのお楽しみッ!」」
二人で声をハモッてニンマリと笑っている。
ったく・・・
嫌味な奴らだ。
絶対牧野と俺を引き裂く算段かんがえてるんじゃないかと勘繰ってしまってる。
それでも後に引けないのは俺の性分。強気なプライド。
俺が負けるわけねぇーーーーーッ!
「俺も仲間に入れてよね」
関係なさそうな態度でいた類が名乗りを上げる。
こいつが一番なに考えてるか分かんねェ。
じっと見つめた視線の先で類がにっこり笑み浮かべてた。
-From 3-
「そんな餌じゃ大物はつれないぜ」
並んで竿を下ろすボートの上。
さっきから俺を素通りしてあきらと総二郎に魚が食いついている。
釣れたのは食べた事もない様な小魚。
鼻で笑ってやったらこれが餌になるんだと当たり前の様な顔してぬかしやがった。
「ど・・・どう・・・みょうじ・・・大丈夫?」
「っるせ」
「魚が逃げちまう」
心配そうに俺の竿を覗き込む牧野にも八つ当たり。
「おっ!食いついた!」
俺の横で総二郎がリールを巻きだす。
じっと睨みつけるように眺める竿の先から俺の浮きはピクリとも動いていない。
暗示とか・・・
思い込みとか・・・
俺の威厳とか・・・
全く通じない単調な時間。
「ねぇ一度リールを巻き上げたら?」
牧野の声に促される様に釣り糸を上げる。
・・・・
餌だけ取られてなくなっていた。
「クソッ」
総二郎の手には吊り上げたばかりの鯵が握られている。
「これで司には勝てるかもなぁ~」
「大きい獲物は必要なし~」
音程つけてやけに楽しそうな総二郎とあきら。
これ見よがしに糸の先で鯵が暴れてる。
おもしろくねェーーーーッ。
「だからやめればよかったのに・・・」
俺を慰める気なんてさらさらなさそうな牧野。
その表情は諦めぎみ。
その雰囲気に俺の闘争心に火がつくがピクリともしない竿の先。
グッと握りしめた竿を折りそうになっていた。
「牧野もやってみれば?」
「うん」
オッ!?
そんなのあり?
牧野が俺の傍から離れて類の側によっていく。
端から端に俺達は離れ離れにされていた。
牧野の背中から腕をまわして類が竿を握らせて手ほどき始めてる。
牧野の手の甲の上に類が自分の手を添えやがった。
「こら!類!牧野に触んな!」
竿を放り投げ牧野の元に駆け寄る。
速攻で近づきたいのにボートが揺れて足がもつれそうになっていた。
「こうやらないと教えられないよ」
「司には教えるの無理でしょう?自分が一匹も釣れてないんじゃね」
そう言いなら触りまくってんじゃねぇかーーーッ。
牧野も牧野だ。
類のお触りに何の反応も示していねぇ。
類!お前!やけに楽しそうだぞ!
牧野を見ながらほほ笑むなーーーーッ。
総二郎とあきらを蹴散らして必死で牧野と類の間に割って入る。
「キャー」
叫んだ牧野と一緒に甲板の上に倒れ込んでいた。
「もう、危ないじゃない」
牧野のふくれっ面が俺の胸の上。
「あ!釣れてる!?」
偶然釣れた魚が俺の顔の上でピチャピチャ跳ねていた。
生ぐせーーー。
結局俺以外は全員釣り上げているってどうなったんだぁぁぁぁぁ。
もう二度と釣りはやんねぇーぞーーーー。
「司・・・約束は覚えているよなッ」
牧野に総二郎が手を貸して起き上がらせる。
俺の目の前に出されたあきらの助けを不機嫌に振り払う。
「男にニ言はねぇ!」
どうにでもしやがれっという気分のまま叫ぶように言い放っていた。
続きは 花に嵐のたとえもあるが・11 で
なにかおもしろい事を起こしたいんですけどね(^_^;)
なかなか浮かばない・・・
拍手コメント
nanako様
こんにちわ。
帰省は大変ですね。
私は迎える側なので空港への送り迎え、子供たちの遊びの計画などで疲れますね。
いやー良くやる変換間違いやってますね。
ありがとうございます。
『宮kun』はDVDの方で見ていたのですが娘が面白くないと一言で2巻で終わってしまいました。
宮での金持ち4人組は花男を連想しますね。
宮に出てる女優さんユン・ウネ が 主演していたコーヒープリンス1号店が娘は大好きだったのでイメージが違ったみたいです。
今年の夏は「美男(イケメン)ですね」に娘ははまっておりました。
私はその合間にブログを更新。
あと1週間あまり・・・
娘が夢中になれるビデオが見つかればいいのですが(^_^;)
そう言えば昨日から花男のDVDを引っ張り出してみていました。
うまくいけば1からFまで見てくれればそれでもつかもしれません。