花に嵐のたとえもあるが・・・おまけのはなし3

 *

パタパタパタ。

牧野をソファー上に座らせ手に取った雑誌で仰ぐ。

濡れた身体も拭いて浴衣を着せた。

一応下着も・・・

どちらかと言えば脱がせる方が得意だが、着せるのも結構ドキドキもんだ。

目の前に広がる白いほっそりとした下肢。

かしづいたままの格好で眺めてた。

ここで牧野が気がついたら足のけり一発で済む保証は絶対にない。

見ていたいのが本音だが我慢できそうもないから目をそらす。

「牧野・・・水」

気がついた牧野の口元にペットボトルの飲み口を持っていく。

ゴクンと牧野の喉が上下した。

「・・・ごめん・・・」

うつろな感じで牧野が目を開けた。

「大丈夫か?」

「・・・なんとか」

ハァーと大きなため息が長めに漏れる。

「ウッ・・・」

小さく発した言葉を合図に牧野の顔がみるみる真っ赤に染まっていった。

「み・・・見た?」

「あぁ。見ねえと運べないし着替えもさせられねェから・・・」

言っている俺も顔が真っ赤になってきた。

「照れるな、減るもんじゃねぇし」

「消去・・・」

「あっ?」

「けして・・・」

「なに?」

「今見た事!やった事!記憶を消してっ!」

真顔の牧野に迫られた。

なぜか喜ぶ俺の感情。

真顔で真剣な瞳に見つめられ・・・

愛の告白でなくても十分にギュっとくる。

それでなくてもさっきまで俺は充分にその気だったのだから。

「まきの・・・」

これからって瞬間に「ぷるるっ」と部屋の電話のベルの音。

反応良く牧野が受話器をとる。

お前・・・

元気じゃねぇかぁぁぁぁぁ。

「ハイ、分かりました」

「夕食の準備出来たって」

うれしそうに牧野がクルッと振り向いてほほ笑んだ。

「朝食べてから食べてないもんねッ」

色気より食い気が勝ってる俺の彼女。

「和食かな?」

「よさそうなところだから食事も期待できるよね」

頭の中から俺のことはとっくに追い出され湯気を立てた料理が並びだしてるに違いない。

こいつの幸せそうに食べる姿も好きだからしょうがねぇ。

クスッと笑いがこみあげる。

「腹ごしらえするかぁ」

牧野の手をとりギュっとつかんで部屋を出た。