第2話 抱きしめあえる夜だから 21

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-From 1-

窓から差し込む太陽の光。

朝早くから起き出して部屋のベランダから海を眺めている。

気持よさそうな横顔を一人ベットの中から眺めてた。

どうせなら俺の腕の中でそんな顔させてぇ。

ハワイの朝も日本なら今は真夜中、時差ぼけもつくしにはないらしい。

ベットの中でもつくしの頭の中は今日の観光のラインアップ。

子供みたいにはしゃいでた。

静かになったと思ったら勝手に一人で先に寝息を立てている。

俺ら新婚旅行だぞ!

1日目から枕を抱いて寝る羽目になるなんて浮気するぞ!

出来ないくせに一応叫ぶ。

起きやしない。

フテ寝して朝を迎えた。

「観光ツアー申し込んで楽しまなきゃ」

「どれにするんだ?」

軽めの朝食をとってホテルのロビーのツアー案内所の前。

周りにはカップルばかり。

肩を抱いたり、腕組んで、「ジュンちゃん」「アイちゃん」て、あほらしい。

俺らだったら「つかちゃん」「つくちゃん」

呼べねぇよ。

べたべたぶりはどこも一緒で見てらんねぇ。

でもここでなら俺が抱きついても問題なさそうな雰囲気だ。

「なあ俺らも・・・」

「なに?」

関知せずの顔でつくしが俺を見上げる。

その手にはツアーの説明書がしっかり握られていて、それを見る振りして腰に左手を回す。

こいつ気がついてねぇ。

心の中でガッツポーズを作る。

これくらいでなに喜んでるんだ俺。

「1日ハワイ島観光ツアー・・・あっ!がっつりB級グルメ堪能だって」

つくしが目にとめたのは食べ物って・・・

そこまでがっつく必要ねぇだろう。

ワイピオ渓谷、アカカ・フォールズ、キラウエア火山。

カメハメハ大王銅像見せられるよりはましかと申しこむ。

ゆったりとしたリムジンバスに乗り込んで観光地巡り。

通路を挟んで隣の席にも若いカップル。

「こんにちわ」と愛想よく挨拶される。

見知らぬやつに挨拶されて素直に返せる性格は持ち合わせていない。

横からつくしが代わりに「こんにちわ」と言葉を返す。

「この人、愛想悪くってごめんなさい」

余計だよ。

さっき「ジュンちゃん、アイちゃん」と呼び合っていた馬鹿カップルだと気がついた。

「彼氏どっかで見たことある~」

突然思い出したようにしゃべりだす女。

サングラスぐらいじゃばればれか?

横でつくしがギクッとなった。

そんな態度とったらばれるだろうがぁぁぁぁ。

「無視しろ」と小さくつぶやく。

「ほら、道明寺!」

「本物!キャー!」

「金持ちがこんなツアーに参加するわけないだろう」

「すいません、こいつうるさくて」

初めて聞いた男の声。

釈然としない展開。

ばれても困るがばれなくても気に食わなかった。

「坂本です」

男の方に名乗られて「牧野です」横からつくしが口を出す。

俺はここでは牧野司か?

「ばれなくてよかったねぇ」

つくしがにっこりほほ笑んだ。

いいわけねだろうッ。

俺は道明寺だ!

 

-From 2-

失敗した・・・。

道明寺と呼びそうになって司と呼びなおす。

この呼び名にはまだ慣れない。

「真っ赤だぞ」

にんまりとする道明寺は意地悪だ。

なるべくは呼びかけないで済むようにしよう。

「ねぇ」とか「おい」とかでごまかす手もある。

なるべく離れないようにと道明寺のシャツの裾を握って歩いた。

「ほら」

ぶっきらぼうに手を差し出す道明寺。

その手をじっと見つめる私にしびれを切らしたように道明寺の腕が動いて指が絡まった。

手をつないで歩くなんて久しぶりだ。

照れくささよりうれしさの方が少し勝る。

目に入る風景に「きれい」と感嘆の声を上げながらも二人一緒に眺めて同じ時間を過ごすことがうれしくて仕方ない。

ツアーじゃなく二人だけの方が楽しいかもなんて思えてきた。

横では「ジュンちゃん」「あいちゃん」と呼び合う坂本カップル。

付き合って1年目の記念旅行だとか聞いてもいないのにしゃべりだす。

徐々に道明寺の不機嫌度が上昇してる。

「だから嫌なんだ」

ぼそっとはき捨てるように道明寺が言った。

これ以上この二人のそばにいたら絶対道明寺は切れる。

「ねぇ、あっちの方に行こう」

道明寺を引っ張って坂本カップルから離れる。

「何が、ジュンちゃん、あいちゃんだ」

気に食わないのはそこ?

まさかつかちゃん、つくちゃんなんて呼び合いたいなんて思ってないよね?

「つっちー」なんて突然愛想がよくなった同級生に呼ばれたことを思い出す。

「つかっち、つっち」「つかたん、つくたん」「つかポン、つくポン」

考え出したら笑いが止まらなくなった。

どう考えても道明寺の柄じゃない。

「何笑ってんだ!」

「あの二人みたいに呼び合いたいのかなと思って考えたらおかしくて」

正直に言ってまた笑う。

「そんなこと考えてもねぇよ」

ふてくされたように視線を道明寺がそらす。

本気で呼び合いたいと思っていなくても少しは考えてしまった顔をしている。

それがわかるからまた笑顔になる。

「つかっち、つっち」「つかたん、つくたん」「つかポン、つくポン」

どれがいい?聞いたら軽く首を絞められた。

「ギャー」

わざと大げさに声を上げて道明寺の腕からのがれる。

他のカップルから見たら私たちの方が見てられないと思われるかも。

二人馬鹿みたいにはしゃいで、普段の道明寺の生活にはない軽さを楽しんで過ごしたい。

そんな気持ちで道明寺と声を上げて笑っていた。

続きは 抱きしめあえる夜だから22 で

ピンクのかば様のコメントにありました「つかたん、つくたん」笑いが~

他に何かないかとつくしに考えさせました。

一人で笑って結局今回の場面をUP。

旅行中に書きあげていました。

何考えて遊んでるんだか・・・

ニヤついてる私に「気持ち悪る~」と娘が一言。

それが数回ありました。

二人に当てられっぱなしはここだけじゃないと思うのですが(^_^;)

この二人自覚なしというところでしょうか。

拍手コメント返礼

しずか様

牧野司って道明寺は自分からは言わなそうですけどね。

一度使ってみたかったんです。

ピンクのかば様

つかたんつくたん「つくたんがいねーー」叫ばせたいですね。

笑ってしまいました。

F3がいればどんな反応?

想像するだけで楽しめます。