第13話 愛してると言わせたい 24

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-From 1 -

「・・・で、あいつ牧野のなんなの?」

自分でも驚くほどの不快感。

握りしめた牧野の腕を離せないまま歩いてる。

「なんなのって、友達だよ。何も覚えてないんだけどね」

「さっき喧嘩しそうになったところを助けられたんだ」

覗き込んだ牧野は悪びれる様子もなく、なんでもないよと言いたげにほほ笑んでる。

「いい人みたい」

牧野に悪い奴なんて思われるやついるのか?

出会った頃の司くらいのものだろう。

司と牧野、二人を見ていても以前の様な胸の痛みを覚えることはない。

淡く優しく胸の奥でただきらめく思い。

きっと心の奥から飛び出すことはないと思ってた。

牧野と親しそうにしているヤツ。

二人で名前を呼び合って楽しそうに頬を染めて笑っていた。

牧野のそばに俺たち以外の異性がいるのは許せないみたいだ。

友情にもライバル心が存在するのだろうか?

「花沢類は身体の一部だから」

今でも牧野は俺のことをそう表現する。

牧野の側に近い存在でいられる。

それが俺を平常心でいさせてくれたのだと気がついた。

牧野の存在は俺には特別みたいだ。

たとえ司のものだと分かっていても・・・・。

俺がこんな不快な思いになるのなら司のことだ「大学行くな」くらい言い出しそうだよな。

「つくし、待って」

さっきの男が俺達を追いかけてきてた。

「なんの用だ?」

牧野を背中に隠して鋭い視線を向ける。

「俺が、つくしを案内してたんだけど」

こいつ・・わざと強調するようにつくしって言ってないか?

「だから」

これ以上には表現できないくらいの冷淡な声。

俺の横で牧野が凍りついたように微動だにしないでいる。

事の成り行きが理解できずに不安げな表情をうかべた。

「俺が面倒みるよ花沢さん」

一歩も引かない気構えを見せるヤナやつ。

俺のこと知っていても不思議ではないが、F4に立ち向かう者がこの英徳にいるとは知らなかったよ。

面倒をみせれるわけなどあるはずない。

牧野の面倒がみたいならこの世で一番凶暴なやつの許しがいる。

まともに牧野の相手なんてできなくなると思うけど。

「・・・あの、3人で一緒にってダメなのかな?」

遠慮がちにつぶやく牧野。

牧野・・・

俺達どう見てもお前を取り合って火花を散らしてる状況だと思うぞ。

俺もこいつもたぶん相手が気にくわない。

松岡という奴、お前のこと好きだ。

何となくわかる俺と同じ匂いのするやつ。

愛しい色合いの視線を時々牧野に向けている。

そして・・・

それを一瞬で隠す。

それはきっと牧野が司に惚れこんでいると知っているから。

牧野は気がついてないよな。

その鈍感さはときには罪だ。

俺と牧野の関係を見せつけたい衝動が湧いてきて打ち消しようがない想い。

「牧野、覚えてる?」

「なに?」

「俺が牧野のこと好きかもって言ったこと?」

「記憶はないけど・・・この前・・・聞いたよね」

反芻して聞き返す牧野。

まだ・・・

思い出しちゃいないか。

その数秒後、牧野の視線が泳いで見る間に耳まで真っ赤に色を染めた。

 

-From 2 -

花沢類が私のこと好きで・・・

花沢類を好きだったのは以前の私のはずで・・・

熱い瞳で極上の頬笑み。

それでもポッとなる熱さ。

慣れてない。

以前といっても病院のベットで花沢類を見たときは確かにうれしくてはなやいだ気持ちになったのは否定できない。

肩にかかる若干の重み。

何気なく見あげた視線の先には私を見つめる花沢類の視線。

肩を抱かれてる。

「くっ付き過ぎだと思うけど」

普通でしょとつぶやく口元がクスッと笑う。

道明寺の時のように強制的に振り払えない雰囲気が花沢類にはある。

身体が固まってうまく手足を動かせないのは緊張しているせいだ。

あこがれの人に戸惑ってうまく自分を現すことができないそんな緊張感。

真っすぐに見つめるもう一つの視線。

瞬きもせず見つめられていた。

この二人・・・何か変。

花沢類の場合は他人を無視することは珍しいことではない。

今日の場合は無視というより対抗してる感じでケンカ気味の挑発まで感じる。

公平は他人に不快感を与えるタイプではないと思うのだけど・・・。

公平の方も抵抗感を露わにしている。

私と親しいと強調しているような花沢類の態度。

必要ないと思うのだけれど。

「ねぇ・・・本当に3人じゃ」

「ダメだ」

言い終わらないうちに二人ハモって否定された。

「牧野が大学で男と二人でいた」

「え?」

「司が知ったらどうするだろうね」

耳元に小さな声が届く。

穏やかに優しく響く声は対照的な響き。

脅迫だよ。

花沢類ってこんなに性格悪かったか?

「俺が案内する」

公平に宣言する花沢類。

肩に置かれた手のひらが催促するようにポンとたたく。

「あっ・・・今日は花沢類に案内してもらうから、公平ありがとう」

私から視線を外して公平が大きく一息つく。

「明日は来るだろう?」

「なに?」

「欠席できない講義があるよ」

「分かった」

講義は受けなきゃ授業料が勿体ない。

講義についていけなくても絶対に出席する。

こんなときに力説するものじゃないだろうけど。

「講義じゃ、そいつも邪魔できないだろう、じゃあ」

にっこりほほ笑んで背中を向けて公平は颯爽と去っていく。

頭の上からハーッと漏れるため息に混じって「引きわけかぁ」と声が漏れて聞こえた。

続きは愛してると言わせたい25

拍手コメント御礼

sako様

一番乗りありがとうございます。

早~ッ

働けっ ← 書いてUPしてる私にも自分で突っ込み。

      布団干してこよう♪

こう様

「こいつ気に食わない」

きっと海に対する態度と同じような態度をとるんじゃないかと想像しています。

大学での公平の存在は司には内緒ですよ。

b-moka

3人一緒絶対無理ですよね。

司の登場、公平抜きならありそうですが(^_^;)

poohetsuko様

なかなかどうしての展開の花沢類VS公平。

道明寺が知ったらただじゃ済みませんよね。

まだ記憶も思いだしてないのにねぇ~