木漏れ日の下で 9

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-From 1 -

「もう帰る」

「まだいいじゃん」

ソファーから立ちあがった私の腕を西門さんが掴んだ。

ここにいても落ち着かない。

悪いのは道明寺なんだからと心の中で呪文の様に繰り返していた。

この3人プラスαーの1人。

悪ふざけ過ぎだぁぁぁぁぁぁ。

どう言い訳すんのよ。

「道明寺があんな写真送ってきたから!」

それで済むか?

「花沢類に西門さんと美作さんと公平だよ。皆知ってる人だから問題ない」

こんなもん?

どう考えてもヒクヒクと青筋立ててる道明寺しか浮かばない。

「やっぱり帰る」

「もう30分付き合え」

美作さんには珍しい強引さで引きとめられてしまった。

「まだ全然飲んでないし、食べてないじゃん」

仕方なく花沢類から差し出されたグラスを受け取った。

口のなかに広がるアルコールの味。

あんまり飲めるわけじゃないのに無理して透明な液体を一気に喉の奥へ流し込んだ。

今日は酔った方が眠れそうだと、もう一度ソファーに座り込んだ。

「へぇ、じゃぁ君は検事志望か」

「告訴されない様にしないとな」

マジで言ってないか?美作さん。

笑えないよ~。

いつのまにか公平と美作さんに西門さんは気があってる。

花沢類だけは一言も発せず公平がそこにいない様な態度を崩さない。

私の相手は花沢類に自然となってしまってた。

結局道明寺の愚痴しかしゃべってなくて、それをただ黙って聞いてくれてる花沢類。

大学時代から進歩ないと思ってないだろうか?

それでも花沢類が側にいてニコッと笑ってくれるだけで落ち着く心。

私の心の安定剤ってところは結婚しても変わりがないよな。

これが道明寺の気に障ることなんだろうけど・・・

浮気じゃないからな!

誰に言ってるのか・・・。

「そろそろ帰るか」

美作さんの声を合図にガタガタと皆が席を立つ。

「大丈夫か?顔が真っ赤だけど」

体中を血液が急速に駆け巡ってるようだがまだ何とか自分で歩ける状態。

大丈夫だと公平の差し出した手を振り切った。

そろって店を出た歩道。

頬に当たる冷たい風も気持ち良く感じてた。

見上げた夜空は月夜で明るくて・・・

歩きやすい様にあたりを照らし出している。

私はバカだ。

気を紛らわすつもりで公平を誘ったはずなのに・・・

あいつ以外のだれかと一緒にいても思い出すのは道明寺のことばかりで・・・

怒っていたはずなのに・・・

仕返しするつもりだったのに・・・

道明寺の不機嫌な顔を恐れてる。

私・・・淋しいみたいだ。

早く会いたいね、道明寺。

会うだけじゃだめで、抱きしめてほしくって・・・

身体の奥まで道明寺を感じたいと思う愛しい気持ちが止めようもなくあふれてる。

「あれ・・・?」

何となく正面を向いた視線が固まった。

見覚えのあるシルエット。

会いたい気持ちが幻でも見せてるのかと、両手でゴシゴシと目を何度もこする。

「ど・・・う・・みょ・・・じ?」

「会いたいと思うあまり幻でも見てる?」

思わずつねる頬。

「テッ」

「何が幻だっ!」

こめかみに怒のマークを張り付けた懐かしいの声。

「ヤダ!ウソ!本物!」

「なんでいるの!?」

「西田がこのままじゃ対処しかねますとぬかして、メールを送った次の日にジェットに乗せられたんだよ」

「会えてうれしくねぇのか?」

「俺がいないほうが楽しそうじゃねぇか、ずいぶん羽伸ばしてるみたいだし」

うっ・・・

誰のせいだっ!

私を無視して返事もくれないくて、変な写真付きのメールを送ってきたのは自分だろうがッ!

「楽しかったわけないでしょう!」

「メールの返事もくれなくて、私を無視して、変なメール送ってくるしっ」

「道明寺のバカッ」

「怒ってるのは私なんだからねぇッ」

完全に切れて道明寺の胸を叩きながら投げつける非難の言葉は止まらない。

「司をバカ呼ばわりできるの牧野だけだよな」

すっかり私の後ろにいた4人のことを忘れていた。

公平は論外として、もしかして・・・

この3人は道明寺が帰ってくること知っていた?

グル?

私を30分引きとめた美作さんの強引さもこれで説明がつく。

振り返った先で「俺達は遠慮するわ」と西門さんがニンマリと笑った。

知っていてあんな写真を撮るなんて最悪な悪戯だよーーーーーー。

「お前らもやり過ぎなんだよ」

道明寺の腕は私の身体を逃さないように背中からグッと腰に回してる。

「つくしの相手しとけとはいったけどべたべたし過ぎだ」

「なんか役得ないとな」

からかうような美作さんの口調。

これ以上道明寺を煽んないでよッと上がる心の叫び声。

「べたべたされてないッ」

「あれがベタベタじゃなければなんだ」

「むしょうに腹立たしいんだけど俺」

あとは二人でやってくれと背を向けて立ち去る無責任な男共。

唇を噛んで見送った。

「お仕置きが必要だよな」

「お仕置き必要なのはあんたの方でしょう」

「へぇ~どんなお仕置きしてくれるんだ?」

鼻先に近づいてきた顔が不敵にほほ笑んだ。

この展開ど~でしょ?

予測した方いるかな?

さすがは西田さんと褒めてやってください。

どんなお仕置きが待っている?

拍手コメント返礼

b-moka

西田さんやはりタダものじゃない?

お仕置きは~できるのかな(^_^;)

こう様

西田差さんの先手必勝はどちらに軍配が♪

しずか様

あんまりがつがつするとダメですよとタマの声も聞こえてきそうですが(^_^;)

お仕置きの展開はいかがでしたでしょうか?

しな様

西田さん番外編考えながら今回のお話は書きました。

やはり番外編は外せません!