St. Valentine's Day おまけの話
*どんよりとした雪雲に向かって飛び立つヘリ。
俺の心の中もそれに負けないくらいにどんよりと曇ってる。
あと少し・・・
もう一歩・・・
いつも直前で何かが起きる。
何度やっても学習できねぇ。
今度は自然に邪魔されねぇところを準備するか?
このまま場所を変えて挑む!
って、どうだ?
牧野ついてきてくれるかな。
今一つ強引になれずに見つめる牧野の横顔。
「なに?」
無邪気に笑った顔で俺を見返す。
こいつだけ落ち込んでねーッのがやけに虚しく思える。
ヘリの下に見える景色。
見慣れた街並み。
俺んチじゃないか。
へリポートにゆっくりと俺達を乗せたヘリが降下する。
ヘリから降りた先には西田。
「ご無事でほっとしました」
無表情で言われても分かんねーよ。
「それじゃ、私帰るから」
ニコッと笑顔をつくって西田にちょこんと頭を下げる牧野。
「おい、寄っていかないのか?」
焦り気味に声が高くなる。
「チョコ渡せたし、用事ないでしょう?」
用事って・・・
俺の方は重大な用事残ってるぞ。
「おい」
掴み損ねた腕は簡単に数歩遠ざかって消えた。
「残念でしたね」
全部西田に仕組まれたんじゃねえかと思える落ち着きはらった声。
「今度は邪魔すんなよ」
不機嫌なまま吠える。
蹴りあげた石がガツンとヘリの車体にあたって金属音を響かせた。
次の日の大学構内。
自然と俺の周りに集まる涼しげな顔。
「どうだった、バレンタイン」
「チョコもらえたか?」
「それよりもっといいもんもらえたんじゃねぇ?」
俺を真中に総二郎とあきらがサンドイッチ状に身体を寄せる。
うれしくもねぇつーの。
「うるせぇよ」
嫌がる様に身体を離した。
「そんな顔はしてないね」
後ろからひょこんと現れた類が一番触れてほしくないところの傷をえぐる。
「もらったのチョコだけだ」
「へぇ~」
心配するそぶりは見せずにニンマリ気味に顔を見合わせる総二郎とあきら。
誕生日・・・
バレンタイン・・・
次はいつだ?
二人で指折って数えんじゃねぇーーーーーッ
「別にいつでもいいんじゃない。牧野がその気になれば」
思わずマジにじっーと類を見つめた。
そうだよな・・・
別に今日でも・・・
記念日にこだわる必要はない!
復活気味に気力がわき上がる。
「無理なんじゃねぇ?牧野がその気になるの」
「確かにそのほうが難しい様な気がする」
真顔で言い合う総二郎とあきら。
それ・・・
笑い事じゃねぇ・・・
本気でありえる。
「こんなところにいた」
明るく声をかけてきた牧野。
少し焦る。
「おっ・・・ど・どうした?」
きょとんとなった顔で牧野が俺を見つめてる。
「なに?何かあった?」
「何もなかったから今、こんな顔してんだよ司は」
「お前らなにも言うなッ!」
総二郎に掴みかかる様に口をふさぐ。
「男同士の話だから」
あきらの声に「ふ~ん」と気のない返事の牧野。
「あっ、これ、一日遅れで悪いんだけど」
類、あきら、総二郎とチョコを渡す牧野。
「道明寺怒んないでよ」
「道明寺のとは違うから」
小さく耳元で照れくさそうにつぶやく俺にしか聞き取れない内緒の声。
こそばゆい。
「司・・・俺達同等?」
ちげーよ。
お前らのは義理だろ!義理!
バレンタインは終わってるしなッ。
「牧野、こいつらほっといていくぞ」
牧野の腕を必要以上に握りしめる。
「もしかして作戦実行か?」
つぶやく総二郎はやけにうれしそうだ。
「逃げられんなよ」
「逃げるッてなに?」
あきらの声に焦った様に反応する牧野。
「気にすんな」
牧野を引っ張る様に数歩歩く。
「牧野、頑張って」
「頑張る・・って・・・なに頑張るの花沢類!」
「司に聞いてみな」
3つの声が合わさる様に響く。
「な・・なに?」
つぶやく牧野をじーっと見つめる。
「あいつらにチョコやったんだから俺にはそれ以上のもんくれるよな?」
大きくまんまるに見開いたままの瞳。
そして・・・
茹でダコの様にその顔が真っ赤に染まった。
この後は・・・・
うまく行ったら『7+αなおまけのストーリー』の内容に行くわけでして(^_^;)
ここはこの辺で打ち止めということで~
「7+αなおまけのストーリー」のおまけも創作中ですのでそれ御許しを~